「人生100年時代」と言われる現代。20代でも早いうちから資産形成を進めることが求められています。一方で、どのように投資・資産運用の目利き力を磨いていけばいいのか、悩んでいる方は多いのではないでしょうか。

この連載では、20代の頃から仮想通貨や海外不動産などに投資をし、現在はインドネシアのバリ島でデベロッパー事業を、日本では経営戦略・戦術に関するアドバイザーも行っている中島宏明氏が、投資・資産運用にまつわる知識や実体験、ノウハウ、業界で面白い取り組みをしている人をご紹介します。

今回は、独立して活動する資産運用コンサルタント「IFA」として活躍されている、FPデザイン・常務取締役の小山敦彦氏にお話を伺いました。

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    小山敦彦氏/学習院大学卒業後、2006年日興コーディアル証券(現SMBC日興証券)に入社。東京、大阪、福岡にて資産運用コンサルティングに従事。2015年FPデザインに入社。IFA事業の立ち上げを行う。2018年6月同社取締役に就任。2020年6月同社常務取締役就任

IFAの特徴や強みとは

――本日はありがとうございます。小山さんはIFAとしてご活躍されていますが、IFAという言葉に馴染みのない方も多いと思います。まずは、IFAについて教えていただけますでしょうか。

IFAは、「Independent Financial Advisor(インディペンデント・ファイナンシャル・アドバイザー)の略で、直訳すると「独立した財務の相談相手」という意味になります。

日本では、IFAと呼ばれたり、独立系ファイナンシャルアドバイザーと呼ばれたりします。「独立して活動する資産運用コンサルタント」と捉えていただければわかりやすいかもしれません。

アメリカでは、資産形成のアドバイスだけに留まらず、その実行、フォローまでをトータルにサポートする財務のプロフェッショナルとして高い評価を得ている存在です。また、「独立系」とあるように、どの金融機関にも所属しない存在ですから、お客様の利益を優先することができるのも特徴です。

日本では、1999年にLPL日本証券(現 PWM日本証券)がIFAによる資産形成ビジネスを日本に持ち込みました。

――なるほど。銀行や証券会社などの金融機関に属していると、どうしてもその会社の方針に縛られたりノルマに追われたりするわけですが、IFAの場合は顧客のニーズを最優先に提案できるわけですね。ポジショントークをする必要がないのは、IFAの方の精神衛生的にも良いですね。

そのとおりです。会社の方針に縛られ、ノルマに追われると、お客様の利益にならないご提案をしてしまうことがあります。それは、お客様と長期間にわたってお付き合いが続く私たちにとってデメリットであり、リスクです。Win-Winの関係でなくては、伴走者にはなれません。

IFAを活用するメリット

――FPデザインさんの公式サイトには、「一生お付き合いのできる総合金融コンサルティングサービスを展開しております。お客様一人ひとりの真のニーズにお応えし、お客様のビジョン達成を支援していくことをモットーに掲げております」という想いが綴られています。一生お付き合いが続くというのは理想的ですし、ビジョン達成に貢献し続けていくという姿勢も素敵だなと感じました。

ありがとうございます。やはり、「一生お付き合いが続く」という前提に立たないと、本当にお客様の役に立つ存在にはなれないと考えています。伴走者なわけですから、「売って終わり」という不義理なことは絶対にできません。

――投資家がIFAを活用するメリットには、どのようなことがあるのでしょうか。

ビジョン(ライフプラン)を前提にしながら、ニーズに合う提案を聞けることがIFAを活用するメリットのひとつです。中島さんが仰ったように、会社の方針によってポジショントークをしたり、ノルマ達成のために無理な売り込みをしたりする必要がありませんので、常にお客様のニーズを最優先にしています。

もちろん、その会社の方針が資産運用として良い方向に運ぶ場合もありますが、そうでない場合もあります。ボラティリティの高い(値動きの激しい)資産運用もありますので、リスクについても丁寧にご説明しています。

また、IFAには転勤がないため、一生お付き合いができることもIFAを活用するメリットとなります。担当が代わる度に何度もライフプランについてお伝えいただく必要はありませんし、人間関係が深まることで本音を話しやすくなるメリットもあると思います。

さらに、資産運用に関するアドバイスだけでなく、投資のタイミングまで任せられることもIFAを活用するメリットと言えます。

――お付き合いが長くなればなるほど、メリットも大きくなりそうですね。阿吽の呼吸というか、かゆいところに手が届く存在というか。

そのような存在になれれば、私たちも嬉しいですね。

IFAが資産運用をより身近なものにする

――小山さんから見て、日本の金融と海外の金融にはどのような認識のギャップがあると感じますか?

まず感じるのは、選択肢の差です。海外の場合、金融商品の種類も多いですし、相談窓口も多岐に亘ります。日本の場合、証券会社や銀行などの金融機関が主な窓口ですが、海外では証券会社や銀行などの金融機関以外にIFAも窓口の選択肢に含まれます。

また、アメリカの場合、資産の約50%が資産運用に回っており、日本と比べると資産運用が身近です。これには、「中長期で資産運用をサポートする人がいる」と認知されていることが影響していると思います。

――まさに、IFAのような伴走者の存在ですね。

はい、そのとおりです。アメリカでは、IFAが約30年前から普及しており、社会的地位を確立していると言えます。一方、日本は1999年にLPL日本証券(現 PWM日本証券)がIFAというビジネスを持ち込みました。それから20年が経過していますが、普及しているとはまだまだ言えません。

5年ほど前からIFAという存在は日本でも脚光を浴びてきていますが、有名なIFAでも預かり資産は総額300億~500億円ほどです。アメリカでは、平均でもIFA一人で80億円ほどの預かり資産があります。

IFAという職業は、アメリカでは弁護士や医者と並ぶ存在で、国民の資産管理の6割がIFAに任されています。ところが、日本ではまだ数パーセントに満たないのが実情です。

――なるほど。まだまだ日本ではIFAは身近な存在とは言えないのかもしれませんね。IFAという存在が知られることで、資産運用がもっと身近になり、アメリカと同じように資産の50%くらいが運用に回るようになるのかもしれません。

IFAの認知拡大が今後も必要だと考えています。IFAという存在を知っていただき、仕組みを知っていただき、IFAを上手に活用していただきたいですね。それによって、金融や資産運用がもっと身近になると思います。IFAを活用することが選択肢になる世界をつくっていきたいです。

今はまだ、自分で資産運用するか、もしくは金融機関に任せるかの二択だと思いますが、IFAはその中間にいるイメージです。

自分で一から十まで運用するとなると、情報収集やメンタルトレーニング、投資のタイミングなどの負担が増えてしまいます。かと言って、金融機関に任せるとなると、その会社の方針の影響を受けます。利益は出るかもしれませんが、ビジョン・ライフプランに合うかどうかは別の話です。

――「優秀な医者と弁護士と資産管理人がいれば人生は安泰」と言う言葉がありますが、資産管理人とは、まさにIFAのことですね。

どんな人がIFAになっているのか

――IFAには、どのような人が向いているのでしょうか?

誠実であることはもちろん重要なのですが、単純な誠実とは違い、プロとしてお客様の資産に向き合い続けることができる人ですね。

相場なので、上がったり下がったりすることもあります。うまくいかないときこそお客様に連絡して、お客様の利益を第一に考えられる人がIFAに向いています。

IFAは買う、買わないという投資をするタイミングを冷静に見極め、プロとしてお客様と一生共栄していきますので、お客様にとって不利益になると判断した場合は、投資自体ストップすることもあります。

それくらい誠実でないとIFAは務まりません。

――ということは、投資する立場として良いIFAを見極めるには、実績だけでなく人間性も重要になりますね。

そうですね。まさに毎日が真剣勝負です。厳しさもありますが、IFAは夢のある仕事だと感じています。「この会社のこのIFAにお願いしたい」と言ってもらえるようなIFAを増やしていきたいですね。

IFAのスター的な存在になりたい人や、ずっとお客様と接していたい人には、IFAの仕事はピッタリだと思います。

――ところで、小山さんに資産運用をお願いしようと思った場合、必要な運用資金はどれくらいなのでしょうか。勝手に、数千万円はないと無理なのかな…と思っているのですが。

そんなことはございません。なかには10億円を運用していただいているお客様もいらっしゃいますが、1万円の積立からでも運用できますので、ハードルは高くないと思います。

IFAというと、「多額の運用資産が必要」という先入観があることも、IFAが普及しない一因なのかもしれません。そういった誤解も解いていきたいですね。

――それは大きな誤解ですね。1万円の積立からでも運用できるということは、会社員や公務員だけでなく、それこそ主婦・主夫の方でもIFAを活用できるということですね。IFAの裾野を広げていきたいですね。

IFAがプライベートバンカーのような存在に

――小山さんのお話を伺っていると、IFAはプライベートバンカーのような存在という印象を受けます。人生の伴走者となると、資産運用の相談に留まらず、いろいろな相談を受けることになりますよね。

はい、そのとおりです。結婚のご相談や、お子さんやお孫さんの留学のご相談などをいただくこともあります。また、資産運用などの財務に関することだけでなく、税務や保険など相談内容は多岐に亘りますね。お客様との関係性が深まると、自然とそうなっていくと思います。

――そのような関係性ができることは、投資する立場としても嬉しいですね。スイスなどのプライベートバンクでも、担当によってパフォーマンスもコミュニケ―ションも変わってきます。マネージャークラスになると、パフォーマンスも高いですし、コミュニケ―ションも円滑です。それでも、やはり人と人なのでどうしても相性がありますから、小山さんの仰る「この会社のこのIFAにお願いしたい」というのは、よく理解できます。

そのような「選ばれるIFA」を増やしていきたいですし、IFAという存在の認知を拡大していきたいですね。優秀なIFAが増えることでお客様の資産を守ることができ、それによって日本の国力が高まり、次世代にも良い影響があると思います。

――そんな未来をぜひつくっていきましょう。本日はありがとうございました。