「都心では物価が高いので、生活していくのが大変だ」または「地方は物価が安いので、生活費が都心に比べてあまりかからない」と世間で言われていることは、本当なのでしょうか。

お金の扱い方について、都心部と地方部では、違いがないのでしょうか。

連載コラム「地方の生活コストは本当に安いのか?」では、ファイナンシャル・プランナーの高鷲佐織が、実際に東京と地方、両方の生活を経験して感じたことを交えながら、お金に関する情報などをお伝えいたします。

「いつかは都会を離れて、緑豊かな地方で心地よい暮らしをしてみたい」

そんな思いを胸に抱きつつも、仕事や生活環境の変化、人間関係への不安から、移住への一歩をなかなか踏み出せずにいる方は多いのではないでしょうか。

住まいを一気に変える「移住」は、人生における大きな決断です。資金の準備だけでなく、現地での仕事探しや地域になじめるかどうかなど、懸念事項を挙げればきりがありません。しかし、現在の生活基盤をすべて捨てて引っ越すことだけが、地方と関わる唯一の手段ではありません。

移住に向けた第一歩として、いま注目を集めているのが「関係人口」という考え方です。

「定住」でも「観光」でもない、「関係人口」とは?

「関係人口」とは、その地域に完全移住した「定住人口」でもなく、旅行で一時的に訪れる「観光人口」でもない、地域や地域の人々と継続的かつ多様な形で関わる人々のことを指します。

都会に住み、今の仕事を続けながらも、特定の地域に思いを寄せ、定期的に足を運んだり、オンラインで応援したりする。いわば「その地域のファン」のような存在です。

まずは、都心部に暮らしながら、その地域の人たちと関わりをもってみる。このスタンスをとることで、過度なリスクを負わずに地方暮らしの手応えや、その土地の人々の温かさに触れることができます。

自治体が推し進める、多様な「かかわり方」の提案

全国の自治体も、旗揚げ役となって関係人口を増やそうとさまざまな工夫を凝らした取り組みを展開しています。

例えば、岩手県盛岡市では「盛岡という星で」という魅力的なプロジェクトを推進しています。SNSや特設ウェブサイト、写真を中心としたビジュアルブックなどを通じて、遠くにいても盛岡の「今」を感じられ、関わりを持てるきっかけを日常的に提供しています。

また、岐阜県飛騨市では「飛騨市ファンクラブ」を立ち上げ、市外に住む人々とのつながりを深めています。入会費・年会費無料で気軽に加入でき、会員限定の特典やイベント、ファン同士や地域住民と集い語り合えるコミュニティを形成しています。

こうした自治体の施策を活用すれば、観光客向けではない「ローカルな日常のリアル」に少しずつ触れていくことができます。

民間組織やイベントが後押しする「最初の一歩」

自治体だけでなく、民間組織も都市部と地方をつなぐ架け橋となっています。例えば「一般社団法人日本関係人口協会」は、地方との関わりを後押しする組織の1つです。

同協会などでは、地方創生や地域での働き方に関心がある人々に向けて、さまざまなセミナーや交流イベント、講座を開催しています。

「どんな地域が自分に合うかわからない」「実際に地方に関わっている人の体験談を聞いてみたい」という方は、まずは都心部で開催される対面イベントや、自宅から参加できるオンラインセミナーに足を運んでみるのがおすすめです。同じような関心を持つ仲間と出会えたり、具体的な地域の課題や魅力に触れたりすることで、頭の中だけのイメージが少しずつ立体的なものへと変わっていくはずです。

おわりに

移住は「0か100か」の二者択一ではありません。都心での生活をベースに置きながら、お気に入りの地域をつくり、週末だけ訪れたり、プロジェクトを手伝ったりする。そうした「グラデーションのある関わり」こそが、豊かな人生の選択肢を広げてくれます。

まずは、気になる自治体の取り組みをチェックしてみたり、楽しそうな関係人口イベントに参加してみたりすることから始めてみませんか。その新たな一歩の先に、あなたにとって居心地の良い「新しい居場所」が待っているかもしれません。