テレワークが広がり、都心にあるオフィスの近くに居住する必要性がなくなったと感じている人も増えているようです。

オフィスに毎日出社する必要がないのであれば、生まれ育った街で暮らしたい、何度も旅行に行っているあの街で暮らしたいなど、地方で暮らすことを希望している方もいらっしゃるでしょう。

第103回と第104回のコラムでは、地方銀行が、移住者向けに優遇した住宅ローン商品を販売しているので、その内容をお伝えしました。代表的な住宅ローン商品である「フラット35」においても、移住希望者が利用する場合、借入金利が引き下がるものがあります。

今回は、「フラット35」の地域連携型という住宅ローン商品ついてお伝えいたします。これから地方に移住することを検討されている方の参考になれば幸いです。

  • 地方移住サポートを活用しよう【6】 借入金利の優遇があるフラット35

    地方移住サポートを活用しよう【6】 借入金利の優遇があるフラット35

【そもそもフラット35とはなにか?】

「フラット35」とは、民間の金融機関と住宅金融支援機構が提携する最長35年借入することができる全期間固定金利型(※1)の住宅ローンです。

(※1)「全期間固定金利型」とは、住宅ローンを借りたときから返済が完了するときまで、金利が変わらないことです。この「全期間固定金利型」のメリットとデメリットは下記のとおりです。

メリット:住宅ローンを借り入れた後に市場金利(※2)が上がったとしても、将来にわたり借り入れたときの金利によって返済額が確定します。例えば、住宅ローン借入時の金利が1%であり、市場金利が1%から2%に上昇した場合でも、借入時の金利である1%で計算された返済額でよいので、市場金利より低い金利のまま返済を継続することができます。また、借入時に、返済期間全体の返済額が確定するので、返済計画が立てやすいです。

デメリット:住宅ローンを借り入れた後に市場金利が下がったとしても、返済金額が変わらないことです。例えば、住宅ローン借入時の金利が1%であり、市場金利が1%から0.9%に低下した場合でも、借入時の金利である1%で計算された返済額となるので、市場金利より高い金利で計算された返済額となります。

(※2)民間の金融機関が預金者に貸し出しするときの金利のことです。

また、「フラット35」の収入要件等の利用要件については、第23回のコラム(住宅ローン商品の選択は、金利以外にも目を向けて)にも記載があるので、ご参照ください。

【「フラット35」地域連携型とは?】

「フラット35」には、地域連携型(地域活性化)という商品があり、UIJターン(※3)、コンパクトシティ形成、空き家活用、防災・減災、地域産材使用、景観形成などの地域活性化に積極的な地方公共団体と住宅金融支援機構が連携し、住宅取得に対する地方公共団体による財政的支援と合わせて、「フラット35」の借入金利を一定期間引き下げるものです。 (※3)Uターンとは出身地に戻る形態、Iターンとは出身地以外へ移住する形態、Jターンとは、出身地の近くの地方都市に移住する形態を言います。

具体的な金利引き下げ(2022年5月9日時点)

【1】「フラット35」の借入金利から当初5年間は、年▲0.25%分引き下げます。

【2】「フラット35」地域連携型(地方活性化)+「フラット35」S(※4)(金利Aプラン)との併用の場合、当初5年間は、年▲0.5%分引き下げます。また、6年目から10年目までは、年▲0.25%分引き下げます。

【3】「フラット35」地域連携型(地方活性化)+「フラット35」S(※4)(金利Bプラン)との併用の場合、当初5年間は、年▲0.5%分引き下げます。

(※4)「フラット35」Sとは、「フラット35」を申込みした人が、長期優良住宅など、省エネルギ―性、耐久性などを備えた質の高い住宅を取得する場合に、「フラット35」の借入金利を一定期間引き下げるものです。

つまり、省エネ等の設備が整っている長期優良住宅を取得等した場合、住宅ローンの借入金利の引下げ率が高くなったり、引下げ期間が長くなったりします。

利用要件

地域連携型を利用するためには、地方公共団体から「フラット35」地域連携型利用対象証明書の交付を受けなければなりません。この交付を受けるための要件については、移住を希望する地方公共団体に確認する必要があります。

また、「フラット35」地域連携型は、すべての地方自治体が連携しているわけではありません。下記のWebサイトの「連携する地方公共団体」をご覧いただくと、利用できる地方公共団体がわかります。移住を希望する県名→市区町村名をクリック等で指定すると、利用要件の詳細を知ることができますので、ご活用ください。

※注意点:「フラット35」は、あくまでも借り入れた人が自分の住居として購入する場合に活用できる商品です。第三者に賃貸する目的の物件などの投資用物件の取得資金には利用できませんのでご注意ください。

まとめ

「フラット35」の商品概要(申込要件など)は住宅金融支援機構が全国共通で定めていますが、住宅ローンを提供するのは、金融機関です。借入金利や借入する際の手数料等は、金融機関によって異なります。また、商品名も取り扱う金融機関によって異なるので、金融機関の窓口等で住宅ローン商品について相談する際には、「フラット35」は取り扱っているか、取り扱っている場合の費用はどのようなものがあるか、確認してみましょう。