漫画家・コラムニストとして活躍するカレー沢薫氏が、家庭生活をはじめとする身のまわりのさまざまなテーマについて語ります。

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今回のテーマは「クレジットカード」だ。

前回の副業に続き金の話が続く、ない物の話はさせないでほしい。

私もクレジットカードは持っている。

しかし、私たち世代の親というのは、クレジットカード=借金と思っている人が多く、その子どもである私も「クレジットカードだけは持つな」「あれは破滅への序章」という呪詛を受けて育っているため、クレカを作るには最初は抵抗があった。

今思えば、何故親はあれほどクレカを憎んでいたのか、クレカに親を殺されたとしか思えない。

つまり、私の祖父母の4人中3人はクレカに殺されているということである。

生き残りである母方のババアもいつクレカに殺されるかわからない、楽天カードマンが窓から入ってくるなど、刺客には十分気をつけなければならない。

このようなクレジットカードアレルギーは前時代的ではあるのだが、親がレジ前で「リボ」と言っているのを見るよりは5億倍マシである。

インターネットをやっていると一度は「リボ払いで地獄を見た実録漫画」を目にするものだ。

見たことがないという人は「他人の不幸嗅覚」が弱いとしか言いようがない。

もっとアンテナを立てていかないと、この情報化社会を生き抜けないゾ、である。

とにかく他人の不幸が好きであればあるほど、仕組みはともかく「リボ払いは怖い」「リボ払いと旧ソ連産の麻薬だけはやるな」というイメージが、刷り込まれる。

そしてそれが一般常識であると思いがちだが、知らない人は本当に知らずに使っているし、それが自分の家族や親という可能性は十分にあるえるのだ。

そう考えると、高齢になるほど親がクレカを持っていないというのはある意味安心なことである。

しかし、リボ払いだけはやるまい、と思っていてもクレカによっては初期設定が「リボ」という恐ろしいものもあるらしい。

そんなのドラクエの初期装備が銅の剣ではなく皆殺しの剣なのと同じである。

リボ払いは儲かるため、カード会社は隙あらばリボにさせたがるし、このようなトラップも仕掛けてくるので、カードの支払い方法は十分確認したほうが良い。

リボの何が怖いか、完全に理解しているわけではないが「月々1万の支払いでOK」と一見便利そうに見えても、ほとんど利子で元金がなかなか減らず、死ぬまでカード会社に1万円仕送りを続ける孝行息子と化す場合もあるらしい。

毎月1万払わなければいけないなら、推しのアイドルの口座に直接振り込んだ方が良いに決まっている。

そんな恐ろしい物は持たないに越したことはない気もしてくるが、当然クレカにも良い点はある。

まず多くのクレカにはポイントが付き、それで買い物が出来たり、還元がされたりするし、カードで支払えば割引になる、という場合もある。 これが、現金払いだと、大体3つ目で有効期限が切れ、ただ財布をパンパンにさせるだけのスタンプカードぐらいしか貯まらない。

特に今は、政府がキャッシュレス化に力を入れているので、クレカや電子マネーを使うことでの恩恵は多い。

現金しか使わない人は、損していると言っても過言ではないかもしれない。

また、カードや電子マネーの方が支払う時にモタモタしないし、財布が小銭などでかさばることもない。

明細も残るので「誰かが勝手に使ったのでは」という疑いもすぐ「確かに俺が使っていた」という確信に変わる。

私ほどのババアになると、ペイアプリを起動させるのにモタつき、間違って乙女ゲーを立ち上げレジ前でイケボがゲームタイトルを読み上げるという事故を起こすし、財布もレシートでパンパンなのだが、几帳面な人ならかなりスマートに暮らせるようになると思う。

だが、アイパッドがどれだけ便利でも、それで人の頭をカチ割ったらそれはただの鈍器である。

カードや電子マネーも使い方を誤れば凶器になりうる。

カードなどで便利になったのは、あくまで支払い作業だけであり、支払う金を生み出す作業は全く楽になっていない。

そこを勘違いしてカードを使いまくったら闇金ウシジマくんが始まってしまう。

よって、カードを使わないのは損というのも正しいが、親世代のカードは地獄への切符という認識もあながち間違いではない。

私のようなだらしないタイプは、そんなウシジマくん出演権など持たずに毎日、500円玉を除く小銭を各3枚ずつジップロックに入れて外出する方が安全だとはわかっている。

しかし、今のご時世全て現金払いというのは不便なので一応クレジットカードは持っている。

しかし、クレカというのは一応審査がある。

カード会社だって、支払い能力がなさそうな奴にカードは発行しないのだ。

一説によると某カード会社は職業欄「殺し屋」と書いても発行されたらしいので、そこらへんはザルなのかもしれないが、殺し屋は年収がありそうだ。

もし殺し屋だけど年収200万を切っている人がいたら転職をおすすめする。

つまり、職業が不安定、もしくは無の上、年収が低かったら、カード発行は若干難易度が高くなるということである。私が持っているカードも会社員時代に作った物だ。

もしこれが失効するようなことがあれば、今後カードが作れるかはわからない。

旧ソ連産の麻薬と、リボは使うな、そして一度作ったカードは死守しろ、である。

筆者プロフィール: カレー沢薫

漫画家・コラムニスト。1982年生まれ。会社員として働きながら二足のわらじで執筆活動を行う。デビュー作「クレムリン」(2009年)以降、「国家の猫ムラヤマ」、「バイトのコーメイくん」、「アンモラル・カスタマイズZ」(いずれも2012年)、「ニコニコはんしょくアクマ」(2013年)、「負ける技術」(2014年、文庫版2015年)、Web連載漫画「ヤリへん」(2015年)など切れ味鋭い作品を次々と生み出す。「やわらかい。課長起田総司」単行本は全3巻発売中。