漫画家・コラムニストとして活躍するカレー沢薫氏が、家庭生活をはじめとする身のまわりのさまざまなテーマについて語ります。

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今回のテーマは「おやつ」である。

思えばこの10年間、ペペロソチーノと甘いパン、そしておやつで生きてきたと言っても過言ではない。

マリーアントワネットにすら「パンかお菓子どっちかにしなさいよ」とブチ切れられるような、アメリカン巨漢児童の悪い夢みたいな食生活をしてきた。

その結果かどうかはわからないが、去年約2年ぶりに受けた健康診断にひっかかり、前日絶食、2リットルの下剤、そしてケツにカメラをぶち込まれるという「好きなものばっかり食っているとこういう地獄に落ちる」と子どもを脅す紙芝居のような目にあった。

結果は「多分痔ではないか」という痔とも断定されない中途半端なものであったが、大事には至ってなかった。

しかしそれ以外でも所見には、「肉を食え」「野菜を食え」そして何より「食事をもっと食え」と書かれていた。

一体私はどれほどのガリガリガリクソンなのか、と想像したかもしれないが、全くそんなことはない。

むしろ、体重は増加傾向だ。

つまり、見た目は軽肥満、中身は栄養失調という現代の病理のような存在になってしまっている

おそらくイマドキの餓鬼は私みたいな体型をしているに違いない。腹だけ出て後は痩せているなんてもう古い、平安の発想だ。

ともかく、健康だけが取り柄と思っていたが、全くそんなことなかったぜ、という結果であった。

さすがにこれでは良くないと思いはしたが、バランスの取れた食生活というのは私でなくても難しい。

よって現在は白い粉をやっている。

他全部で勝てないから、罪の重さでエリカ様に勝とうとしているわけではない。

最近割と話題になっている、「完全食」という白い粉を取り入れることにしたのだ、これで1日の栄養素がとれるらしい。

よって現在は、昼間、白い粉をやって、夜、ペペロソと甘いパン、おやつで生きているという感じだ。

字面だけだと前より悪化した感じがするが、栄養的には改善されたはずである。

ちなみに「完全食」はパスタ状のものも存在する。

ならば、それでペペロソを作れば解決ではないか、と思うかもしれないが、これは1食で200円ぐらいするのだ。

ちなみに私がいつも食っているパスタは1キロで200円だ。

口に入れて良いものなのか心配になるレベルの安さである、むしろ口に入れちゃダメな輪ゴムとかの方が高価なのではないか。

だが、この世には「体に悪いものは美味い」という宇宙の法則がある、逆に言えば「体に良いものは不味い」のだ。

よって、この完全食パスタも、1キロ200円のパスタより不味いに決まっている。

ペペロソが不味いなんて絶望でしかない。体が健康になっても、心が死ぬ。

健康ばかりに頓着して「食」という、唯一と言って良いほどの楽しみがなくなったら本末転倒である。

よって私は未だに、ペペロソも甘いパンもおやつも我慢していない。

ではおやつは何を食っているかというと、芋菓子が多い。

けんぴではなく、ポテトの方だ。

昔からポテトチップスが好きで「スイーツ(笑)」という言葉が流行った時も「ピザポテト(油)」と名乗っていたぐらいだ。

しかし、実を言うと、ピザポテトはそんなに食べたことがなく、ポテトチップスは専ら「うすしお派」である。

新製品を試すことも多いが、「冷やし中華味」など見えている地雷しかない時はいつもうすしおを選ぶ。

だが最近、芋片業界には「無味」の風が吹いている。

塩味すらつけず「素のままのじゃがいもの良さを味わえ」と、148円ぐらいの菓子が堂々と言っているのだ。

それも1つではなくコンビニに行けば、2,3袋のポテトチップスが「味なんかに惑わされず、ありのままの俺を見ろよ」と言ってくる。

つまり今のポテト界はしゃらくせえのだ。 だが、もともとシンプルな「うすしお」が好きなので、この無味チップスも嫌いではない。見つけたら結構買っている。

それに、コンビニで売られるような菓子のブームはすぐに去ってしまう。

特にこの無味ブームなんて、たぬきに化かされているようなものなので、すぐに「味がついてる方が良いに決まってんだろ、いいかげんにしろ」となって、消える気がする。

だが少子高齢化である、菓子のメインターゲットもすでに子どもではなく、中年以上なのかもしれない。

そうなれば、濃い味より薄味の方が歓迎されるので、この無味チップスの定番化もワンチャンある。

このように、新しいポテトチップスの時流を体験するのも私の数少ない楽しみの1つである。

この楽しみを長く続けていくため、白い粉を常用するなど、他の点で健康には留意していきたい。

筆者プロフィール: カレー沢薫

漫画家・コラムニスト。1982年生まれ。会社員として働きながら二足のわらじで執筆活動を行う。デビュー作「クレムリン」(2009年)以降、「国家の猫ムラヤマ」、「バイトのコーメイくん」、「アンモラル・カスタマイズZ」(いずれも2012年)、「ニコニコはんしょくアクマ」(2013年)、「負ける技術」(2014年、文庫版2015年)、Web連載漫画「ヤリへん」(2015年)など切れ味鋭い作品を次々と生み出す。「やわらかい。課長起田総司」単行本は全3巻発売中。