漫画家・コラムニストとして活躍するカレー沢薫氏が、家庭生活をはじめとする身のまわりのさまざまなテーマについて語ります。

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今回のテーマは「ワイドショー」だ。

無職でずっと家にいる、と言えば、ワイドショーを見るか、右鼻毛を左に移植するオペぐらいしかやることがない、と思われているだろう。

悪いが我々も暇ではない。ワイドショーなんかより「虚空」とかいろいろ見つめる物が多いのだ。

それに我々は何を見るかより「現実」を見ないようにすることの方が重要なのだ。

ワイドショーなる俗世で起こった激低ニュースなど見ていたら、自分が今どこにいるのか思い出してしまう。

我々無職が見つめるのは、何も脳に思い起こさせない「壁」や「天井」が好ましい。

それもレベルが上がると、シミが話しかけてきたりするので、やはり「虚空」がベストだろう。

流れてくる情報の低さにおいては、お前の大好きなツイッターの方が酷いだろうと思われるかもしれない。

確かにネットには見出しの時点で「低!」という巨大フォントが刃牙のように出現してしまうニュースがあふれている。

しかし、それは「クリックしない」という選択肢が取れる。

それを自らクリックしておいて「おい、俺の人生のクオリティが下がったぞ、どうしてくれる」と言うのはただの当たり屋である。

しかし、テレビはそうはいかない。

消さない限り、ネットなら絶対クリックしないようなニュースを、ご丁寧に映像つきで自動読み上げしてくれる。

それに、ツイッターはクソも良く流れてくるが、おキャット様という至宝も良く流れてくるのだ。

それに対して、ワイドショーはツイッターに比べ圧倒的におキャット様が少ない。

激安芸能ニュースのあとに、おキャット様が出てきたためしはなく、「それでは、次はもっと低いニュースです」となる方が圧倒的に多いのだ。

何せワイドショーを見ないため、これらは全てワイドショーに対する偏見である。

そんな意識の低いニュースばかりやっているわけではないというのなら、申し訳ない、謝る。

しかし、全ての事象はおキャット様に比べれば「低い」ので、おキャット様を定期的に流していない以上は、ワイドショーはツイッターより低い、と言わざるを得ない。

そんな偏見からワイドショーは見ないのだが、先日病院に行くということがあり、そこのテレビでワイドショーが流れていた。

私が、サウナに住んでいるヌシのババアみたいなチャンネル権を持っていたら、すぐさまチャンネルを変えていただろう。

だが当然ペーペーである私にそんな権利はない。

よって、目を閉じ、耳をふさぎ、奇声を発するというスタイルで、全てをシャットダウンしてしまおうかと思った。

しかし、それだと別の病院を紹介されてしまう。

その時流されていたニュースは、某芸能人が薬物で逮捕されたニュースであった。

その日は田代まさしが再逮捕された翌日だった。

全く幸いではないのだが、田代氏は再犯回数がエグい。

よって、もはや世の中は罵倒や嘲笑、呆れなどを越え「クスリ……こわっ……」というフェーズに入ってきている。

よってニュース内容も、本人のことより、如何に薬物が恐ろしいかを語る真面目な内容になっていた。

しかし、これがエリカ様のニュースだったらもっとスキャンダラスな内容になり、私は両耳をふさいで「アッヴァッヴァ」という声を発して出禁になっていたはずだ。命拾いした。

ともかく、想像以上に真面目な内容だったので、ワイドショーへの偏見を改めなければいけないと思った。

しかし、その日は元オリンピック選手国母選手の大麻所持逮捕のニュースもあった。

彼を語るのに、あのオリンピックの腰パン謝罪会見映像を使うな、というのは無理である。

この世に怖いものなど何もないイキった若者のイキり倒し映像、これは病人に見せるものではないのではないか。

私も発熱で来たわけではないのに、一気に顔周辺の熱が上がった。

しかも、当時10代だと思っていたが、どうやらあの時点で成人していたということも分かってしまった。

さらにその後、最近ネットオークションに絵画の贋作が出ているので、出品者に電凸してみるという、私の心にはキツイやつが出て来たので、耳をふさぎ「ッハー~」という空気音を発して聞こえないようにした。

ワイドショーにも良いニュースはある、しかしどのニュースを見るか自分で選べるという点でやはりネットは最高だという考えを新たにした。

筆者プロフィール: カレー沢薫

漫画家・コラムニスト。1982年生まれ。会社員として働きながら二足のわらじで執筆活動を行う。デビュー作「クレムリン」(2009年)以降、「国家の猫ムラヤマ」、「バイトのコーメイくん」、「アンモラル・カスタマイズZ」(いずれも2012年)、「ニコニコはんしょくアクマ」(2013年)、「負ける技術」(2014年、文庫版2015年)、Web連載漫画「ヤリへん」(2015年)など切れ味鋭い作品を次々と生み出す。「やわらかい。課長起田総司」単行本は全3巻発売中。