学生時代、就活のためにTOEICを受けたという人は多いのではないでしょうか。
また、社会人になってからも、キャリアアップや転職、海外赴任などTOEICのスコアが必要とされる機会はいくつもあります。グローバル化が進み、英語を社内公用語にする会社も増えてきました。
今後いつ、英語力を試される機会が訪れるかわかりません。そこで本稿では、現在のTOEICテストの内容や、TOEICが重視されるビジネスシーン、また、それぞれ有利になるスコアなどについてまとめてみました。
TOEICとは?
TOEICとは、「Test of English for International Communication」の略で、「国際コミュニケーションのための英語力測定試験」のことです。
解答はマークシート方式で、リスニングセクション100問(約45分)とリーディングセクション100問(75分)の合計200問を2時間で解きます。
各セクションは495点からなり、合計で990点満点です。テストの結果は合格・不合格ではなく、スコアで表されます。
なお、TOEICに登場する英文は、日常会話やビジネスシーンを題材としたものがメインとなり、ビジネス用語が多く用いられています。
現在社会人として働いている方には、「就活の時にTOEICを頑張って受けたなぁ」という懐かしい思い出があるかもしれません。
2016年から新形式に
実はこのTOEIC、2016年5月に新形式へ変わっており、同年8月にはその名称も「TOEIC TEST」から「TOEIC Listening and Reading Test(TOEIC L&R)」と変更されています。
新形式の各セクションで出題されるパートと問題数は、以下のようになっています。
<リスニングセクション>
Part1.写真描写問題(6問)
Part2.応答問題(25問)
Part3.会話問題(39問)
Part4.説明文問題(30問)
<リーディングセクション>
Part5.短文穴埋め問題(30問)
Part6.長文穴埋め問題(16問)
Part7.長文読解問題(54問)
総問題数200問というのは旧TOEICからそのままですが、それでは新形式のテストは具体的にどのような点が変わったのでしょうか。
一つ目として、「難しくなった」という感想を、新形式を受験した人からよく耳にします。より正確には、「簡単なパートが減り、難しいパートが増えた」ということになります。
リスニングセクションの写真描写問題やリーディングセクションの短文穴埋め問題など、短く比較的簡単に解答できる問題が減った代わりに、リスニングセクションの会話問題やリーディングセクションの長文穴埋め問題や長文読解問題が増えているのです。長い文章の問題が増加したことで、全体的に英文を聞いたり読んだりする量も多くなっています。
二つ目として、TOEIC L&Rには、旧形式にはない形の問題が加わっています。これまで、リスニングの会話はすべて2人の会話を聞き取るものでしたが、新形式では3人の会話を聞き取るものが追加となりました。また、図表と音声の両方の情報をもとに解答する設問や、会話やトーク中から話し手の意図を推測する暗示問題なども出題されます。
リーディングでは、長文穴埋め問題の空欄の数が増え、これまで語句だけだった選択肢に文章も加わるなど難易度が高くなっています。さらに、記事や広告、チャットメッセージを読み、各設問に対して最も適切な答えを選ぶ読解問題では、旧形式が1つの設問に対し1~2つの文書を読むものだったのが、新形式では3つの文書を読むトリプルパッセージ問題が出題されるようになりました。そのほか、ある文章を適切な箇所に挿入する問題も新しく加わっています。
つまり、新形式のTOEIC L&Rでは、難しい問題の数自体が増えたうえ、長い文章や複雑な情報を読み解く力がこれまで以上に問われるようになったのです。そして文章が長くなった分、出題される単語数も増えました。
テストの本質は新形式でも変わらないものの、より実践的な英語力を測る指標となったと言えるでしょう。
TOEICが重視されるビジネスシーンとは
それでは、TOEICはどのようなビジネスシーンで重視され、それぞれ有利となるスコアの目安はどのくらいなのでしょうか。
TOEICを実施する国際ビジネスコミュニケーション協会(ETS)が発表した、「2013年 『上場企業における英語活用実態調査』報告書」を参考に見ていきましょう。
新卒や中途の採用時
多くの企業では、社員の採用にTOEICのスコアが使われています。新卒や中途の入社希望者が「資格・特技」として提出したTOEICのスコアを、69.3%の企業が参考にしているそうです。ちなみに、新入社員に期待するTOEICスコアは平均565点、中途採用社員では平均710点ということでした。とくに中途採用者には、すでに英語力がある人材が求められていることがわかります。
国際部門の業務遂行
グローバルな活躍が望まれる企業の国際部門では、「円滑な業務遂行に必要なTOEICスコア」として期待される平均スコアは750点となっています。なお、「海外での業務遂行に必要な英語コミュニケーション能力として、全社員に求めるTOEICスコア」の平均は、600点ということです。
海外出張者選抜、海外赴任者選抜
海外出張者の選抜にも、28.5%の企業にTOEICが活用されています。この際、期待されるスコアの平均は675点でした。また、海外赴任者の選抜では30.3%の企業にTOEICスコアが使われ、期待されるスコアは695点となりました。
昇進
TOEICは、キャリアアップの足掛かりにもなります。TOEICを異動や昇進・昇格の要件にしている企業は15.8%あります。なお、部長は580点、課長は550点など、昇進・昇格の要件スコアの平均は、役職によって異なっています。
このように、採用や昇進などさまざまな場面でTOEICが用いられています。とくに転職では、外資系企業やグローバル企業、また、企業の国際部門においては求めるTOEICスコアを提示し、参考にすることを明示している場合が多々あります。
ただし、転職ではあくまで経験や実績など英語力以外の評価に重きが置かれるものです。そのため、「TOEICのスコアが高いから必ず希望の転職が叶う」ということはなく、英語が必須の業界では英語力は最低限のスキルと見なされることもあります。しかし、基準を満たすTOEICのスコアがあれば、アドバンテージになることは間違いないでしょう。
現在の英語力をTOEICで知ろう
新しい形式のTOEICは難易度が上がり、一定のスコアをクリアするのは簡単なことではありません。その分、努力して高いスコアが取れれば、さまざまなビジネスシーンで有利になるでしょう。
しばらくTOEICを受けていないという人は、現在の自分の英語力を知るためにも受験してみてはいかがでしょうか。
武藤貴子
ファイナンシャル・プランナー(AFP)、ネット起業コンサルタント
会社員時代、お金の知識の必要性を感じ、AFP(日本FP協会認定)資格を取得。二足のわらじでファイナンシャル・プランナーとしてセミナーやマネーコラムの執筆を展開。独立後はネット起業のコンサルティングを行うとともに、執筆や個人マネー相談を中心に活動中。
イラスト=竹村おひたし