この記事の内容:JR東日本が導入を目指すウォークスルー改札とはどんなものか
記事の重要ポイント:
  • UWBを使ったウォークスルー改札の導入を目指す
  • UWBの技術は広く使われており、日本だけのものにはならない可能性が高い
  • 2027年春にテストを開始予定

2026年度末でSuicaペンギンが“卒業”することになり、Suicaが新しい世界に踏み出そうとしています。世界的にも「タッチで乗車」「タッチで決済」で先行してきたSuicaが目指す次の世界とはどんなものなのでしょうか。

  • 次世代Suicaのデモンストレーション

    JR東日本の現行新型改札機とUWB内蔵スマホによる次世代Suicaのデモンストレーション

現在のSuicaを超えた体験

2001年に交通系ICカードとしての「Suica」が登場してから一緒に歩んできたSuicaペンギンの卒業が発表され、2026年度末(2027年3月)にお別れとなります。その同じタイミング、2027年春の早い段階(2027年3月頃?)での導入を目指しているのが、「UWBを使ったウォークスルー改札」です。Suicaペンギンからバトンを渡される役目を担ったと言ったらさすがに言いすぎですが、それでもちょうど入れ違いとなる形で世の中に登場することが計画されています。

  • ウォークスルー改札

    歩いていくだけで通過できるのがウォークスルー改札

このUWB(Ultra-Wideband=超広帯域無線)は、JR東日本自身が「ウォークスルー改札の本命」と意気込む技術です。現状、UWBはスマートフォンとAirTagのような紛失防止タグとの組み合わせで使われていますが、交通系だけでなく、決済でも大きく期待が寄せられている技術です。

そんなUWBを使った改札を2027年にも実証し、いち早く改札に導入しようというのがJR東日本です。世界的に見ても、交通系としてのUWB導入は早いタイミングで、Suicaのように世界でも早期の導入事例になりそうです。

UWBは、ギガヘルツ帯の広い帯域幅を使う無線技術です。SuicaのNFCやスマートフォンのBluetoothと同じように様々な用途で使える無線技術ですが、その中でも正確な位置を測ることができるという特徴があります。

技術的な細かい部分には触れませんが、その機能によってそのスマートフォンが改札に近づいているか、どこまでの距離にあるか、どの改札のレーンにいるかまで分かります。つまり、隣のレーンにいるかどうかも分かるため、別の改札が反応してしまうといったことは(恐らく)ないはずです。

  • UWBによるウォークスルー改札の解説パネル

    改札機までの距離を測定し、データ通信開始ポイントに達したらデータ通信を開始して改札を通過。少し手前から通信を開始するため、遅延なく改札を通過できます

こうした特徴を生かして現在はAirTagのような紛失防止タグや、車のキーレスエントリーなどでもUWBが使われ始めており、スマートフォン側ではiPhone/Pixel/Galaxyなどのハイエンド端末を中心に搭載が進んでいます。

例えば、AirTagは日本でUWBの利用が許可されている帯域(7.25~9.0GHz)を含む8GHz帯をサポートしており、すでに日本で使えます。ただし、AirTagの第2世代の「タグを探せる範囲が50%拡張された」という機能は日本で利用できません。公式な文書はないようですが、恐らく日本ではUWB向けの利用が許可されていない6.5GHz帯を使っているからだと思われます。

  • 日本のUWBに割り当てられた周波数

    日本のUWBに割り当てられた周波数

この6.5GHz帯は、最近は無線LANで6GHz帯の利用が進んでいることもあり、UWBとしてはできれば避けたい帯域で、よりハイバンドの8GHz帯を使う方向になっています。

いずれにしても、改札での利用において長距離の電波は不要なので、特に影響はありません。今回のJR東日本のウォークスルー改札では、市販スマートフォンの内部を改造してUWBに対応させ、技術基準適合証明(いわゆる「技適」)も取得してテストしたそうです。

というわけで、UWBは現在すでに実用化されており、今後の拡大が期待されている技術で、FeliCaのように「一部の国でしか使われない」ということにはならないでしょう。

実際、業界団体のFiRa Consortiumでも、ウォークスルー改札を想定した規格化が行われており、JR東日本の独自のソリューションというわけではありません。交通系以外の用途も幅広く、これがさらに普及すればチップの値段も下がり、より安価なスマートフォンにも搭載されるようになるでしょう。海外端末にもUWB自体は搭載されるので、将来的にはインバウンドのユーザーもそのままウォークスルー改札が利用できるようになる可能性もありますし、日本人が海外で同様にウォークスルー改札を利用できるようになるでしょう。

現在の新型改札機にアドオンしてUWB対応が可能な点も見逃せません。さらに次世代の改札になればそのまま内蔵もできるでしょうし、改札の展開も比較的早期に行えそうです。

スケジュールとしては、まず東京の品川圏にある5駅で、2027年春の早い段階にテストが行われる予定。「2027年度」ではなく、「2027年春のなるべく早い段階」という言い方から、恐らく3月頃を想定しているのだと思われます。

今回のデモンストレーションでは、貸し出されたスマホを手に持ったり、ポケットやバッグに入れたりした状態に加え、ベビーカーを押している両手が塞がっている状態でもスムーズに通過できることが体験できました。早足でも問題ありませんでした。

あとは、実際にどれだけの通過量に耐えられるかでしょう。個人的には、クレカ乗車や顔認証に対してはスピードと安定性で上回り、JR東日本が「本命」と呼ぶのもうなずけるところです。

次回は、このUWBがSuicaをどのように変えるのか。決済を含めたSuicaはどうなるのかを考えたいと思います。