幼少期から熱血ドラマオタクというライター、エッセイストの小林久乃が、テレビドラマでキラッと光る"脇役=バイプレイヤー"にフィーチャーしていく連載『バイプレイヤーの泉』。

第102回は女優の山本舞香さんについて。現在『忍者に結婚は難しい』(フジテレビ系列)に出演中の山本さん。この世で名前負けをしていない人物の第一位を進呈したいほど、可愛らしさを持つ人です。そして顔と強気な言動が不一致であることを好感度にすり替えた名士でもあると思います。

「は? ここ舞香ん家(ち)だから」は名言である

  • 山本舞香

まずは最終章を迎えた『忍者に結婚は難しい』のあらすじを。

甲賀の忍者・草刈蛍(菜々緒)が結婚した相手は、伊賀の忍者・悟郎(鈴木伸之)。最も結婚してはいけない相手でありながら、共に生活を送るふたり。当初は隠していたものの、互いが忍者であることも分かってしまった。それでも結婚生活を続けると決めた二人には、次々に難が訪れることに……

人並外れた好プロモーションと、俊敏な動き。菜々緒さんにこんなベストキャスティングがあったとは……と初回から笑ってしまった本作。映画『Mr.&Mrs.スミス』に似ていると言われていたけれど、黒スーツに身を包んだ蛍を観ていたら「こっちのほうが面白いのでは」と思ってしまった。周囲を盛大に巻き込んだ伊賀VS甲賀の戦いは果てしなく続いているが、コメディなので最終回はどうか幸せに終わってほしい。

そんな『忍者に結婚は難しい』で、山本さんは蛍の妹・雀を演じている。インフルエンサーで大学生、そして忍者。書き並べると自由そうなテイではあるが、ご本人のパブリックイメージとはリンク。よーく似合っている。昨年末、『Sister』(読売テレビ・日本テレビ系)の、姉妹で恋愛すったもんだを繰り広げたハードな物語が話題になった。シリアスな役柄とは全く違うけれど、今回の明るい役のほうが似合うと思うのは私だけだろうか。

美しく、切れ味のいい強さは女優イノベイティブ!

私が山本さんのことを「すごい……」と目を見張ったのは、ドラマや映画ではない。あの麗しさだ。存在だけは知っていたけれど、役柄についてはデータがなかった。それが2019年ごろ、確かコロナ禍以前に『しゃべくり007』(日本テレビ系)にゲスト出演していた彼女を見て、興味に一気に火がついた。

まだ実家に住んでいた当時、実兄が恋人を連れて遊びにきたときのエピソード。妹なりにヤキモチを焼いていたのか、挨拶をしなかったそう。兄に怒られた山本さんは

「は? ここ舞香ん家(ち)だから、女のほうが挨拶しろよ」

こんなコメントをしていた。その瞬間、「ここ舞香ん家(ち)だから」というパワーワードが脳内を旋回。今だかつてこんな表現をした女優がいただろうか。いや、絶対にいない。乱暴な口調は時としてイメージダウンにも繋がりかねないところを、山本さんはイメージアップに替えてしまった。この一言の影響なのか『家政夫のミタゾノ』(テレビ朝日系)の元ヤン家政婦に違和感がなく、本仮屋素子役に染まっていた。

その後も舞香情報に目がない私。SNSに流れてきた情報なので真偽は不明……ではあるが「男の人にマウントを取られたくはないので、飲食店で代金を支払われたくない。だから入店した時点で、クレジットカードを店員に渡している」とあった。ご時世、カードを店員に預けるのはいささか気が引けるが、なんとも彼女らしいエピソードだとまた笑ってしまった。そう、彼女を見ていると、つい笑ってしまう。キレイな女優はたくさんいるけれど、キャラクターが(失礼ながら)"ヤンキーっぽい(笑)"という流れを持っているのは彼女だけだろう。だからまた目が離せなくなってしまう。強く、輝く女性は私たちの理想的なシンボルであり、イノベイティブなのだ。