昭和史に残る猟奇事件として、今なお語り継がれる「阿部定事件」。愛人を絞め殺し、その局部を切り取って逃走――。あまりにも衝撃的な事件は、なぜ時代を超えて人々を引きつけ続けるのか。“妖婦”と呼ばれた阿部定の知られざる素顔に迫る。

  • 『アナザーストーリーズ 阿部定事件~昭和を生きた妖婦の素顔~』より 写真提供:毎日新聞社

    『アナザーストーリーズ 阿部定事件~昭和を生きた妖婦の素顔~』より 写真提供:毎日新聞社

昭和を震撼させた「阿部定事件」

きょう20日(21:15~)にNHK BSで放送される『アナザーストーリーズ 阿部定事件~昭和を生きた妖婦の素顔~』(初回放送は2023年5月)では、二・二六事件直後の混乱する東京を舞台に起きた「阿部定事件」を、さまざまな視点からひも解いていく。

昭和11(1936)年5月、戒厳令下で緊張感に包まれていた東京で発生した「阿部定事件」。当時30歳の阿部定が、情事の最中に愛人の男性を絞め殺し、局部を切り取って逃走した事件は、世間に大きな衝撃を与えた。

報道規制が敷かれる中でも連日大きく報じられ、その後も小説や映画など数々の作品で描かれ続けてきた。

  • 安藤玉恵

    安藤玉恵

「スターな感じ」人々を引きつけた理由

番組では、事件現場に近い東京・荒川区尾久で育ち、一人芝居で阿部定を演じた俳優・安藤玉恵が登場。幼い頃から祖母を通して阿部定の話を聞いて育ったという安藤は、「スターな感じ」とその印象を語る。

また、男女の愛をテーマに作品を描いてきた作家の村山由佳氏は、阿部定本人の「予審調書」から、女性としての内面や思いを読み解き、この事件が残す定のメッセージに迫る。

  • 村山由佳氏

    村山由佳氏

二・二六事件と“言論統制”の時代背景

作家の前坂俊之氏は、阿部定事件が異常な熱狂を生んだ背景には、同年に発生した「二・二六事件」の存在が大きく関係していると指摘する。

当時は言論の自由が制限される時代でもあり、その閉塞感の中で阿部定事件が大きな関心を集めたという視点から、「昭和」という時代の空気を浮かび上がらせる。

  • 前坂俊之氏

    前坂俊之氏

出所後を知る証言者が語った“素顔”

さらに、幼少期から阿部定と交流があり、出所後には同じ舞台に立った経験を持つ俳優・浅香光代さんの証言も紹介。

様々な視点から、“妖婦”というイメージだけでは語れない、波乱に満ちた阿部定の人生と、その素顔に迫っていく。

  • 浅香光代さん

    浅香光代さん

【編集部MEMO】
『アナザーストーリーズ 運命の分岐点』は、歴史的事件や社会現象を“複数の視点”から描くマルチアングル・ドキュメンタリー番組。当事者や関係者などの証言を通じて、“運命の日”の裏側にあったもう一つの物語を浮かび上がらせる。語りは濱田岳、司会は松嶋菜々子が務める。

(C)NHK