世の中の大半の仕事は、人がいることによって成り立つ。そもそも取引先がいなければ仕事の受注がないわけだし、上司や先輩のサポートもなくいきなりバリバリと業務はこなせない。

多くの他人が関係してくる以上、相手に対する敬意やマナーが必要となってくる。だが、職場で使用するツールの使い方や業務上必要なタスクを先輩社員からレクチャーされることはあっても、ビジネスマナーをイチから教えてもらった機会がある社会人は少ないはずだ。そのような人は、無自覚のうちに礼節を欠いた態度をとってしまい、ビジネスチャンスを逸してしまう恐れがある。

そこで本連載では、筑波大学および札幌国際大学の客員教授を務めながら、大学や官公庁などで「職場に活かすおもてなしの心」をテーマとした講演や研修を手掛ける江上いずみ氏に、社会人として知っておくべきビジネスマナーを解説してもらう。

  • 名刺交換の正しいやり方を知ろう

    名刺交換の正しいやり方を知ろう

新社会人になり、配属が決まって、初めて名刺を手にしたときは嬉しいものですね。自分の肩書きと氏名が記されたカードの束を見て心躍らせる新社会人の方も多くいらっしゃるのではないでしょうか。

名刺交換はその先のビジネスを円滑に進めるための入り口です。新入社員の入社時のみならず、人事異動や組織変更などに伴って、ビジネスの出逢いはいつも名刺交換から始まるといえます。初対面の人と交わす名刺交換をスマートにこなすことができれば、第一印象もぐんとアップします。スマートに、迅速に、笑顔で対応できるよう、名刺交換の正しいやり方を身につけましょう。

名刺は大事なビジネス上のアイテム

名刺交換にはさまざまなルールやマナーがあるので、すべて覚えるのは大変です。しかし、名刺は「その人の顔」であると考えると、自ずとルールがわかってきます。

相手の名刺 = 相手の顔 ⇒大切に丁寧に扱う
自分の名刺 = 自分の顔 ⇒人に渡して恥ずかしくないか注意する

「自分の顔」である名刺ですから、汚れたり折れたりしたものを差し出すことは絶対に避けなければなりません。まずはそのために必要な準備を考えましょう。

名刺交換の準備

(1)名刺を綺麗に保つために、必ず名刺入れを持つ

名刺交換をすると、財布や手帳、首から下げる身分証明書の裏から名刺を取り出す人が散見されます。社会人として必ず名刺入れを持ちましょう。

その名刺入れは、あなたの人柄が表れる大切な小物です。最近はいろいろな素材や形の名刺入れがあるようですが、いくら綺麗だからといっても、ラインストーンがちりばめられてキラキラした名刺入れをビジネスシーンで取り出すのは、社会人としての品格が疑われてしまいます。

また受け取った相手の名刺は、受け取ってテーブルに置く際、自分の名刺入れの上に載せるというマナーを考えると、名刺入れにボタンや飾りが付いているとよい「座布団」になりません。質・色・形などにこだわってセンスのよいものを選びましょう。

(2)名刺入れには常に20枚以上の名刺を入れておく

名刺交換のマナーとして一番守らないといけない点は「自分の名刺を切らさないこと」です。複数の人と名刺交換をしているうちになくなってしまったなどということのないよう、十分に準備していきましょう。

名刺を多く使いそうな日は、名刺入れとは別に予備をバッグに入れておくなどの用意周到さが必要です。

(3)名刺入れはズボンのポケットに入れない

初対面の第一印象は大切です。名刺交換の際にズボンのおしりのポケットや上着の腰のポケットから名刺入れを取り出すような仕草は、名刺をぞんざいに扱っている印象を与えかねません。男性は胸ポケット、女性はバッグの中からスマートに取り出しましょう。

(4)身だしなみを整える

誠実な印象を与えるために、上着がある場合は必ず着用します。女性はすべてのボタンを、男性は一番下のボタン以外は留めるという「ボタンマナー」を意識して行いましょう。

名刺交換の基本

  • 名刺と名刺入れは常にウエストラインより上に

    名刺と名刺入れは常にウエストラインより上に

(1)名刺と名刺入れは常にウエストラインより上に保持する

名刺交換時はもちろん、交換の前後も名刺を大切に扱っている印象を与えられるよう、常に名刺を持つ手はウエストより上に保持しましょう。

(2)名刺交換の順番を意識する

目下の人から目上の人に対して先に名刺を差し出す、というのが名刺交換の基本です。ビジネスにおける目上・目下とは、社会的地位や年齢などにかかわらず、
お金を出す側(発注側)が目上
お金をもらう側(受注側)が目下
です。つまり営業活動をする上では、受注側が先に名刺を差し出すことになります。

営業以外の場面では、地位が低い人から高い人へ、訪問者から訪問先の方へ近づき、先に名刺を差し出すと覚えましょう。

(3)名刺の持ち方に配慮する

名刺は相手に正面を向けて差し出します。自分の名刺を渡すときも、相手の名刺を受け取るときも、名刺の社名やロゴ、肩書き、氏名の文字に指がかからないよう配慮しましょう。

(4)名刺交換は必ず立って行う

名刺交換をする際には必ず立った状態で行います。応接室に通され、先に座って待っているような場合でも、相手が入室してくる気配を感じたらすぐに立ち上がります。

(5)名刺交換時のアイコンタクトと明瞭な名乗りを心掛ける

名刺交換はビジネスの始まりですから、相手に与える第一印象を高めることが大切です。相手の名刺を受け取り、自分の名刺を渡す際には、相手の目をしっかり見てほほえみながら渡しましょう。伏し目がちに差し出すと自信なさげに見えてしまいます。

そして早口に発生することなく、ゆっくり、はっきりと自分の会社名・肩書き・フルネームを述べることで相手に好印象を残せます。