メールに代わる新たな仕事でのコミュニケーションの手段として、チャットが注目され、社内導入する企業も増えている。そこで現代のビジネスパーソンなら知らないとマズい、仕事で使うチャットのマナーのノウハウを、IT企業に法律顧問サービスを提供している弁護士である藤井総氏に解説してもらった。

  • 拡がるビジネスでのチャット利用

    拡がるビジネスでのチャット利用

仕事でのコミュニケーションツールの変化

仕事でのコミュニケーションの手段は、ひと昔前と比べて大きく変わっている。以前は、会議や電話でおこわれていたものが、今やすっかりメールが主役となっている。

会議や電話といった相手と時間を合わせる必要がある「同期」で「口頭ベース」、さらに「少数参加」(電話であれば1対1、会議であっても会議室のスペースの制限がある)のコミュニケーションとは違い、メールはお互い都合の良いタイミンでおこなえる「非同期」かつ「テキストベース」で「多数参加可能」(ccやメーリングリストを使用した場合)である。

このようにメールは、空いた時間などいつでもコミュニケーションをはかることができて、テキストが残るので言った言わないのトラブルも起きにくく、複数メンバーでの情報共有もしやすい。まさに仕事のやり方を一変させた革命的なソリューションだった。

しかし、メールは新たな問題も引き起こした。「お世話になっております」から始まるフォーマットなど、ビジネスメールの体裁に縛られた文書が求められ、1通書くだけでも一苦労。それが億劫でついつい後回しにしてしまい、返信の遅れや漏れが多発。ほとんど自分に関係ないのにccだけ入れられているメールや迷惑メールに埋もれて、自分に関係のあるメールを探すだけでも一苦労。そのせいでメールを見逃してしまい、またもや返信の遅れや漏れが多発。

メールを送った立場からすれば、いつまでも返信が来なくてイライラが募り、固く冷たくなりがちなメールの文書はときに相手をイラッとさせ、やり取りはいつの間にか喧嘩腰になる悪循環に。宛先やccの間違いは、状況共有の漏れどころか、ときに情報漏えいの問題まで引き起こす。これならむしろ、会議や電話のほうがよいのではと思う場面も少なくない。

メールに代わるビジネスチャットの導入

そんな現代で、メールに代わる新たな仕事でのコミュニケーションの手段として、チャットが注目され、社内導入する企業も増えている。チャットというと、LINEやFacebookメッセンジャーをイメージするかもしれないが、最近はビジネス用途のチャットが多くの企業から提供されている。国内では老舗の「Chatwork」、LINEのビジネス版「LINE WORKS」、アメリカ発の「Slack」などなど。ちなみに筆者はChatworkを利用している(筆者はChatwork社の顧問弁護士でもある)。

紹介が遅れたが、筆者はIT企業に法律顧問サービスを提供している弁護士である。弁護士というとあまりITに縁がなさそうなイメージを持つかもしれないが、筆者のクライアントの90%以上はIT企業であり、また、業務にITツールを徹底的に導入して業務効率化を極限まで高めていることで、筆者1人で顧問先企業を70社以上(2019年現在)を抱えながら、毎年100日以上も海外を旅しながら仕事をしている。

  • 「世界で一番美しいマクドナルド」と言われるブタペストにあるマクドナルドにて

    「世界で一番美しいマクドナルド」と言われるブタペストにあるマクドナルドにて

  • アンコールワット遺跡にて

    アンコールワット遺跡にて

  • パラワン諸島の無人島にて

    パラワン諸島の無人島にて

それだけの日数海外にいながら、それだけの数の顧問先企業にどうやって対応できるのか?とよく聞かれるが、その秘訣はチャットにある。筆者は2012年より、クライアントとのコミュニケーションの手段を全てチャットに統一した。面談も電話もメールも、一切使うことはない(テレビ会議は時たま使う)。そのおかげで、いつでもどこでもチャットでクライアントからの相談や依頼に対応することができているのだ。

仕事でチャットを使うようになってはや7年。おかげでチャットのマナーというかノウハウが人並み以上に溜まってきた。仕事でのチャットの活用法というテーマで取材を受けることや講演をすることも多くある。

そこでこの連載では、おそらく弁護士としては日本でもトップクラスに仕事でチャットを使っている筆者が、現代のビジネスパーソンなら知らないとマズい、仕事で使うチャットのマナー(ノウハウ)を解説したいと思う。プライベートでのLINEのやり取りは慣れているが、仕事でのチャットのやり取りに慣れていない若いビジネスパーソンだけでなく、メールでのやり取りに限界を感じてチャットの社内導入を検討している方や、会社がチャットを導入したためチャットを使わないといけなくなったビジネスパーソンの皆さんにも、ぜひこの連載を役立ててほしい。

執筆者プロフィール:藤井 総(ふじい そう)

第一東京弁護士会所属『弁護士法人ファースト&タンデムスプリント法律事務所』代表弁護士

慶應義塾大学法学部法律学科在学中に司法試験合格。2015年に独立し事務所を設立。「世界を便利にしてくれるITサービスをサポートする」ことを使命(ミッション)に掲げ、IT企業に特化した法務顧問サービスを提供している。顧問を務める企業は2019年現在で約70社。契約書・Webサービスの利用規約(作成・審査・交渉サポート)、労働問題、債権回収、知的財産、経済特別法など企業法務全般に対応している。自身もITを活用したテレワークスタイルを実践。年間の約1/3は世界を旅しながら働く”ワーク・アズ・ライフ”を体現している。