悩み多きビジネスパーソン。それぞれの悩みに効くビジネス書を、作家・書評家の印南敦史さんに選書していただきます。今回は、長い会議をどうすればスマート化できるだろうかと悩んでいる人のためのビジネス書です。

■今回のお悩み
「会議の時間が長くて苦痛です」(47歳女性/IT関連技術職)

  • 会議が長い……スマートに行うには?(写真:マイナビニュース)

    会議が長い……スマートに行うには?


社会に出てまだ間もなかったころ、僕も会社の会議の長さに辟易していました。誰しもが感じることでしょうが、同じ話ばかりを繰り返しているような気がしたからです。

たまに誰かが妙案を出すと、「あ、それいいね」と一度は場が盛り上がるのですけれど、結局はまた「しかし、う~ん……」と全員が黙り込んでしまったりとか。

で、何時間もそんなことを続けた結果、最終的には会議の冒頭で出ていた「当初案」に落ち着いたりするわけです。つまりは、単なる逆戻り。それが、時間の無駄遣いにしか思えなかったわけです。

「きょうの会議の結論って、結局は最初に出た案に戻っただけでしたよね。2時間も話したのに」

ある日、会議が終わってデスクに戻ってから、直属の上司にそう言いました。不満をぶちまけたかったということではなく、その“意味のなさ”を一緒に笑い飛ばしたかったからです。

「君がそれをあの場で口にしなかったことに、僕は心から感謝するよ」

上司からはそう皮肉られちゃいましたが、けど、彼も心の底では同じことを考えていたのではないかと思います。いや、あの場にいた人の大半が、実はそう思っていたとすら言えるかもしれません。

ある意味で、会議とはそんなもの。それだけ無駄が多いということです。ですから今回のようなご相談があっても当然だと思うのですが、いずれにしても無駄な会議はシェイプアップする必要がありますよね。

会議の「ゴール」を決めて行う

そこで、『ムダゼロ会技術』(横田伊佐男 著、日経BP)が役に立つかもしれません。会議のムダを省くための策をわかりやすく解説した、きわめて実用的な書籍です。

たとえば著者は本書のなかで、「会議開始30秒でゴールを決めろ」と訴えています。「薄い会議」になるか「濃い会議」になるかのポイントは、そこにあるというのです。

「会議」とかけて、「海外旅行」と解く。そのこころは?
両方とも、行き先を決めなければグダグダになるーー。(93ページより)

  • 『ムダゼロ会技術』(横田伊佐男 著、日経BP)

渡航先を決め、現地の気候を調べ、ビザや通貨を準備しなければ、限られた旅行の時間はムダになってしまいます。会議も同じで、つまり「会議のゴールを決める」とは、終了条件を決めるということだというのです。

そして議長の冒頭30秒の発言を聞けば、「薄い会議」か「濃い会議」かが判断できる。ポイントは、冒頭30秒で「ゴール(こうなったら会議は終了)」を宣言しているかどうかだ。(94ページより)

著者いわく、会議の4大悩みは(1)「時間が長い」(2)「中身が薄い」(3)「なにも決まらない」(4)「発言がない」。そしてこのうち、目に見えて改善しやすいのが「時間が長い」という悩みだそうです。

ゴールを決めれば、すなわち「会議の行き先」を明確に決めてしまえば、長い会議を「短い会議」に変えることができるというわけです。そして、ここで重要なのは、「なにをしたら終わるのか」ということ。

・経営企画など、決断が求められる「決定」会議
・ブレストなど、発想の拡大が求められる「拡大」会議
・朝礼など、意思伝達の共有が求められる「共有」会議

この3種に分けられる会議のなかで、特になかなか決められないのが「共有」会議のゴール。したがって、そんなときには「共有内容のキーワード化」が重要で、具体的に言えば、共有内容を「13文字で伝える」ことがポイントだといいます。

「共有」会議で実践すべきなのは、参加者に内容を理解してもらい、スイッチを入れ、主体的に仕事に取り組んでもらうことだ。そのためには、「共有内容のキーワード化」つまり「13文字以内で伝える」方法を試してみよう。(100ページより)

短い端的なことばで、事前にゴールを設定することが大切だという考え方。もちろんこれは、「ムダゼロ」を実現するアイデアのひとつに過ぎません。しかし、こうしたことを実践してみるだけでも、会議のムダは確実に減らせるのではないでしょうか?

会議を有意義にする「5つの工夫」

一方、『期待以上に部下が育つ高速会議』(沖本るり子 著、かんき出版)の著者は、「会議を人材育成の場と捉え、最大限活用する方法」を提案しています。人材開発育成および組織改革コンサルタントとして、さまざまな企業の変革をサポートしている人物。その際に用いるツールが、まさに「会議」だというのです。

私は自らの会社員時代とコンサルティング経験に加え、心理学の専門知識を活かし「5分会議」という手法を生み出しました。5分会議は、1回の発言は数秒ほどでまとめ、全員が発言して高速で会議をまわしていくやり方で、受け身になりがちな会議での態度を百八十度変える枠組みになっています。そして会議を通じ、参加者のビジネススキルと自主性を養います。(「はじめに」より)

  • 『期待以上に部下が育つ高速会議』(沖本るり子 著、かんき出版)

人材育成のために会議を活用しているわけですが、当然ながらその手法は、会議そのものの質的向上も実現することになるはずです。そこで参考にしたいのが、5分会議を有意義なものにするための「5つの工夫」。

・工夫(1)「視点」で分解する:意見出しは「アイデア出し」→「アイデアのいいところ出し」→「アイデアの問題点出し」→「問題点への対策案出し」という構成が基本で、それぞれを集中して行う。
・工夫(2)「書く」ことで見えるようにする:小さな会議体ごとに議題をリセットし、メモ係がすべての発言を、その場で記録していく。
・工夫(3)「参加者全員」で必ず意見が出る:会議の参加者全員が、制限時間内に議題について意見を順番に出す。
・工夫(4)「立場」が関係なくなる:会議の意見は内容が大事で、発言者の立場によって判断が左右されるべきではないので、メモ係は発言者の名前を書かない。
・工夫(5)「賛否」でもめない:5分会議では、全員がひとつの議題についてどんどん意見を出し合うべき。ある案について反対していたとしても、「いいところ出し会議」ではその案のいいところを挙げなければならない。
(26~32ページより抜粋)

ひとつひとつは些細なアイデアかもしれませんが、こうした考え方を軸に会議を組み立てていけば、必然的にムダは省けるようになりそうです。

会議の品質を高める「70点の基準」とは

さて最後に、マネジャーにとっての会議の考え方を確認してみましょう。

会議とは、「関係者が集まって相談をし、物事を決定すること」(『大辞林』小学館)。つまり、「物事を決定すること」=「意思決定」こそが会議の本質ということです。そして、現場のメンバーがプロジェクトを前に進めるためには、組織的な意思決定が不可欠。現場に「生産性を上げよう」と激励する前に、マネジメント・サイドがスピーディかつ精度の高い意思決定をしなければならないのです。であれば、マネジャーが「会議の品質」を高めることによって、「意思決定の品質」を高めるスキルを磨かなければならないのは、当然の理というべきでしょう。(「はじめに 「『会議の品質』がチームの生産性を決める」より)

こう主張しているのは、『最高品質の会技術』(前田鎌利 著、ダイヤモンド社)の著者。ソフトバンクモバイル株式会社(現ソフトバンク株式会社)などで17年にわたって移動体通信事業に従事したのち、孫正義社長(現会長)の後継者育成機関であるソフトバンクアカデミア第1期生に選考され第1位を獲得したという実績の持ち主です。

トップの孫社長から矢継ぎ早にやるべき仕事が降りてくるだけでなく、現場では解決しなければならない問題が次から次へと浮上してくる――。そんな状況下で、「会議の品質」を高めるために試行錯誤を繰り返したのだといいます。

そうした経験に基づいて断言しているのは、「会議の目的は意思決定である」ということ。そして、その認識を徹底することが「会議の品質」を高める第一歩なのだとも言います。

しかし、その際には心がける重要なポイントが。それは、7割の勝率で勝負をするということ。

100点ではなく70点の意思決定をめざすことによって、スピードと意思決定の精度を両立させるわけです。もちろん、「これが70点の基準」という明確なモノサシがあるわけではありませんから、最終的にはマネジャーの胆力で「7割の勝算がある」と決断するほかありません。ですから、当然、間違えることもあります。しかし、それでいいのです。というか、それこそが、実は、最も精度の高い意思決定をする方法なのです。(30ページより)

  • 『最高品質の会技術』(前田鎌利 著、ダイヤモンド社)

なぜなら、そもそもビジネスにおいて100%の成功が保証された意思決定などないから。意思決定とは常に未来に賭けるものであり、未来のことは誰にもわからないものです。

だからこそ、「70点の意思決定でよいから、とにかく実行してみることが大切だという考え方なのです。


会議の時間を短縮したい、ムダを省きたいという思いは、その会議に参加する全員の望みであるはず。そこで、これら3冊を参考にしつつ、会議を短くする方法を模索してみたいものです。

印南敦史

作家、書評家。1962年東京生まれ。音楽ライター、音楽雑誌編集長を経て独立。現在は書評家として月間50本以上の書評を執筆。ベストセラー『遅読家のための読書術』(ダイヤモンド社)を筆頭に、『読んでも読んでも忘れてしまう人のための読書術』(星海社新)ほか著書多数。最新刊は、『書評の仕事』(ワニブックスPLUS新書)。6月8日、「書評執筆本数日本一」に認定。