悩み多きビジネスパーソン。それぞれの悩みに効くビジネス書を、作家・書評家の印南敦史さんに選書していただきます。今回は、転職して新しい仕事をはじめる際に、不安を感じる人のためのビジネス書です。

■今回のお悩み
「転職して、新しい仕事を始めるにあたり不安です」(37歳男性/営業関連)

  • 転職への「不安」をなくすために(写真:マイナビニュース)

    転職への「不安」をなくすために


行く先が同業種であろうと異業種であろうと、やはり転職には不安がついて回るものですよね。転職先に受け入れられたということは、相応の価値を認められたということにほかなりません。したがって一般論としては、不安を感じる必要などないのでしょう。

しかし、そうはいっても未知の環境に足を踏み入れようとしているのです。そんなとき、自信満々の状態で飛び込んでいくのはやはり難しいはず。僕も過去に何度か転職活動をしたことがあり、転職当初にうまくいかなかったこともあったので、大いに共感できる部分があります。

でも、ご相談者さんのように転職先がすでに決まっているのであれば、あとは腹を括るだけです……というよりも、腹を括ることが結果的にはベストであるはず。

ある程度の期待値を持って迎え入れてもらえるわけですから、転職者にはその期待に応える義務があります。逆にいえば、「なんだ、期待してたほどじゃなかったじゃん」などと思われてしまったら、信頼を一気に失ってしまうことにもなりかねません。

だからこそ重要なのは、「なるようになる」と大きく構え、本来の自分のままでぶつかっていくことではないでしょうか? もちろん不安でしょうが、それで命を取られることはありませんし、そのくらいの気持ちでいたほうがうまくいくものでもあると思います。

「キャリア設計力」を身につけよう

ただ37歳ということなので、「なんとか成功させなければ」と意気込んでいらっしゃるのかもしれませんね。そこで、まずは『30代最後の転職を成功させる方法』(井上和幸 著、かんき出版)をご紹介したいと思います。

ずばり、「30代以降の人が、転職で成功するための具体策」が書かれた書籍。

30代は現実を見つめる時期であり、仕事やプライベートで大きな決断を下す時期です。満足いくキャリアを築いた一流のビジネスパーソンは、例外なく30代でよき「転職を迎えています。あなたが、転職を成功させ、理想のキャリアを歩みたいのなら、“今”決断し、“今”から動き出すべきです。(「はじめに 8000人以上の経営者・幹部に対面してわかった企業がリアルに『欲しい人材』の共通点」より)

  • 『30代最後の転職を成功させる方法』(井上和幸 著、かんき出版)

著者は人材コンサルタント、ヘッドハンターという仕事を通じ、8,000人以上の経営者・幹部に対面してきたという実績の持ち主。転職市場の現場を見て、生の声を聞いてきたわけです。

そこで、ここでは30代以降の転職市場をリアルに紹介し、それに沿った「現状で考えられる最適な方法」を紹介しているのです。

30代は人生の転換期だからこそ、「キャリア設計力」を身につけておくことが大切だと著者は主張しています。30代のうちに、それまでの社会人としての歩みを棚卸しし、以後の30年について」の展望を描いておくべきだということ。

ライフビジョンを描くことはとても重要なことで、設定した目標に向かって必要な努力や投資を行わなければ、理想に到達することはないでしょう。ただ、キャリアビジョンは、固執しすぎるとよくないのも事実です。今日、描いたビジョンが、そこへ向かって3年、5年と頑張った結果、その地点に立つと、また違った新たなビジョンが見えてきたりもするものです。つまり、キャリアビジョンは、常に見直したり、描き直しながら、想いを馳せつつ楽しみつつ、自分への期待をもって上書き更新し続けるものなのです。(37ページより)

ポイントは、そのような姿勢と習慣を30代のうちにしっかり身につけ、展望を描きつつも、目の前の業務に邁進すること。「いま」を大切にし、「いま、すべきこと」に注力することが、将来につながるという考え方なのでしょう。

この「キャリア設計力」を30代のうちに身につけておけば、40代を過ぎてからさまざまな局面があったとしても、前向きに軌道修正しつつ、乗り切っていくことができるということです。

転職を成功させるために必要な5つの要素

『転職に向いている人 転職してはいけない人』(黒田真行 著、日本経済新聞出版社)の著者は、過去30年にわたって「転職」に関わってきたプロフェッショナル。いまも多くの人々の転職相談を受けているため、少なからず成功や失敗の事例を直接聞いてきたのだそうです。

本書では、その経験を通じて知り得たことがらの中から、「いかに自分が機嫌よく働いていけるか」という目的実現のために、「手段としての転職」を納得感の高いものにするために知っておいていただいたほうがよい情報をまとめました。(「まえがき」より)

  • 『転職に向いている人 転職してはいけない人』(黒田真行 著、日本経済新聞出版社)

転職して目指すべきは「必要とされる人材」になることですが、その人材像は変化していると著者は指摘しています。そこで、35歳を雇用の需給転換点と考え、そこを超えても相対的に高い市場価値を発揮し続けられる人材の共通点を整理しているのです。

(1)「固定観念に縛られない思考」ができる人
(2)自尊心が過去よりも未来にある人
(3)慎重すぎず、無謀でもない決断ができる人
(4)新たなことを学ぶのが好きな人
(5)他者に肯定的で、自責思考の強い人
(215~222ページより抜粋)

つまりは柔軟な発想力・思考力を持ち、仕事上の業績や経歴、年収など「過去のもの」に偏りすぎず、どんな局面においても能動的な選択ができ、学習継続能力(ラーニングアビリティー)を備え、誰かが失敗したときに、そのケーススタディーから学ぶ力を持っているか。

転職を成功させるためには、これら5つの要素を備えた人材になることが重要だということです。

逆にいえば、これらをクリアしていくことさえできれば、転職にまつわる不安を解消することができるとも考えられるはず。そういう意味において、これは重要な指針になりそうです。

仕事を楽しむために必要な条件とは

誰にとっても転職は怖いもの。『このまま今の会社にいていいのか? と一度でも思ったら読む 転職の思考法』(北野唯我 著、ダイヤモンド社)の著者は、そう指摘しています。

転職の一歩を踏み出そうとするときには「自分には専門性がない」「いまの生活水準は落としたくない」「特殊な才能はないけれど、活躍したい」「家族・恋人は反対するだろうか」など、さまざまな思いが頭のなかによぎって当然だということです。

ですが、安心してください。転職とはそもそも「特殊な病」なのです。冷静に考えてみて、あなたとまったく同じ顔に生まれ、同じ場所で育ち、あなたと同じ仕事をして、あなたと同じ年で結婚する人はいません。顔も育ちも、性格も違う。だとすると「完璧なロールモデル」を世の中に探したって、どこにも見当たらないのは当然。だから不安になって当たり前なのです。(「はじめに 『いつでも転職できる』の確信を持った人だけが、自由になれる」より)

  • 『このまま今の会社にいていいのか? と一度でも思ったら読む 転職の思考法』(北野唯我 著、ダイヤモンド社)

こう語る著者は、人材系メディアの立ち上げに参画し、多くの論考を発表してきたという実績の持ち主。そのたびに多くの相談を受け、何度もこの「本質的な悩み」に答えてきたのだそうです。

著者はストーリー形式になった本書のなかで、仕事を楽しむ人間が使うことばは2種類に分けられると主張しています。

・人間には、「何をするか」に重きをおくto do型の人間と、「どんな人でありたいか、どんな状態でありたいか」を重視するbeing型の人間がいる
・99%の人間はbeing型である。だから、「心からやりたいこと」がなくても悲観する必要はまったくない
・being型の人間が仕事を楽しむために必要な二つの条件
1:マーケットバリューを高めること
2:その上で、仕事でつく小さな嘘を再消化すること。自分を好きになれなければ、いくらマーケットバリューが高まり、自分が強くなっても、その「ゲーム」を楽しむことはできない。(220ページより)

たしかにこれらを意識しておくだけでも、目的意識を高め、前向きに転職に臨むことができるかもしれません。


今回は転職先が決まった方からのご相談でしたが、転職に関する書籍の多くは、これから転職先を決めようという方のために書かれています。ご紹介した3冊も基本的にはそうなのですが、当然ながら「就職が決まってから考えておくべきこと」にも焦点が当てられています。

そのため目を通してみれば、少なからず参考になるはず。ピンときたものがあったら、ぜひ手にとってみてください。

印南敦史

作家、書評家。1962年東京生まれ。音楽ライター、音楽雑誌編集長を経て独立。現在は書評家として月間50本以上の書評を執筆。ベストセラー『遅読家のための読書術』(ダイヤモンド社)を筆頭に、『読んでも読んでも忘れてしまう人のための読書術』(星海社新書)ほか著書多数。4月8日発売の最新刊は、『書評の仕事』(ワニブックスPLUS新書)。