悩み多きビジネスパーソン。それぞれの悩みに効くビジネス書を、作家・書評家の印南敦史さんに選書していただきます。今回は、仕事のモチベーションが上がらず、気合いを入れたいと悩んでいる人のためのビジネス書です。

■今回のお悩み
「全て中途半端です。気合いの入れ方を教えてください」(41歳女性/事務・企画・経営関連)

  • 仕事の"気合い"を入れるには?(写真:マイナビニュース)

    仕事の"気合い"を入れるには?


「モチベーションが上がらない」
「やる気が出ない」
「仕事に新鮮味がない」

などなど。こういう連載をしていると、モチベーションに関するお悩みがとても多いことに気づきます。つまりはそれほど、「上がらないモチベーションをなんとかしたい」と考えている方は少なくないのでしょう。

しかも、常にこうしたご相談が飛び込んでくることからもわかるとおり、これは一部の人だけが抱える悩みではありません。

端的にいえば、すべてのビジネスパーソンにとって切実な問題であるわけです。組織のなかで仕事をしている以上、同じような毎日に鮮度を感じることができず、結果としてモチベーションが下がってしまうのはむしろ当然の話。

人によって程度の差こそあれ、大半の人がこの壁にぶち当たるのではないかと思います。社会経験が長く、仕事に慣れていれば、なおさらその可能性は大きくなるかもしれません。ただ個人的には、ご質問にあるように「気合い」を入れようと考えないほうがよいのではないかと思います。

ある意味で、気合いを入れるということは、「上がらないモチベーションを無理やり上げる」ということになるのではないかと思うから。でも、いくら無理をしたって、それでは長く続かないものです。

むしろ、「すべてが中途半端」だというのなら、「中途半端な自分」をまず肯定して受け入れ、そこからできそうなことを探っていけばいいのではないでしょうか? そう考えれば、気持ちも楽になると思います。さて、このことについて、ビジネス書はどう回答してくれるでしょうか?

自分のモチベーションの源泉を知る

タイトルからもわかるとおり、『実は、仕事で困ったことがありまして 人材育成のプロが教えるストレスフリーに働く「問題解決力」』(寺下薫 著、大和書房)は、仕事の現場におけるさまざまなトラブルの解決法を紹介した書籍。

元ヤフー株式会社トレーニングマネージャーである著者は、20年以上にわたってさまざまなプロジェクトを立ち上げ、既存のチームを立てなおし、新規チームのメンバー育成などを行ってきた人材育成のプロフェッショナルです。

仕事に人生のほとんどを捧げる時代ではなくなり、自分のやりたいことを実現したり、仕事をしながらも、仕事だけではない自分のあり方を考える時代に入っているといえます。(中略)だからこそ問題解決スキルを身につけておくことは重要です、どんな会社、どんな部署、どんな仕事でも、ストレスフリーで楽しい仕事ができるのです。(「はじめに」より)

  • 『実は、仕事で困ったことがありまして 人材育成のプロが教えるストレスフリーに働く「問題解決力」』(寺下薫 著、大和書房)

こう語る著者は、モチベーションが上がらず、仕事をしていてもやる気が起きないということは、どんなビジネスパーソンでもありうるとも主張しています。

多くの場合、自分のモチベーションがどこにあるのかをわかっていないことがほとんどだとも。しかしそれは、自分自身を知る機会がほとんどないからなのだそうです。

そこで、問題解決のステップとして、次の3つを挙げています。

・自分のモチベーションの源泉を把握し、
・モチベーションの源泉と現在の仕事との関係を考えて、
・何をすべきかが見えてきたら実践してみる
(115ページより)

たしかに、自分にとってはなにがモチベーションの向上につながるのかについて考え、それを仕事にあてはめて実践してみれば、おのずと気持ちも変わってきそうです。

常に前向きに取り組むことが大切

『35歳からわたしが輝くために捨てるもの』(松尾たいこ 著、かんき出版)の著者は短大卒業後の約10年は自動車メーカーに勤務していたものの、ずっと自分のやりたいことが見つからなかったのだそうです。

子どものころから好きだったイラストをちゃんと勉強しようと決心し、上京したのが32歳のとき。そして35歳で遅咲きのデビューを果たしたというのです。そうやって遠回りをしてきたからこそ、本書を通じて3つのことを伝えたいのだといいます。

ひとつは、夢を叶えたい、素敵な人生を送りたいと考えることに、年齢制限はないということ。いつからだって、人は変わることができるということを、私はしょぼすぎてセンシティブ過ぎた自分自身の経験から学びました。
もうひとつは、大人になるほど、心が素直であることが大事だということ。心がかたくなって、人のアドバイスや新しい情報にネガティブになる人は損をするし、人のすすめに素直にチャレンジしてみる人ほど新しい自分に出会えるということ。
そして、一番大切な最後のひとつは、大人になってからの人生には、手に入れるものと同じか、それ以上に「手放し、捨てるものを見極めることが大事だということ。(「はじめに」より)

  • 『35歳からわたしが輝くために捨てるもの』(松尾たいこ 著、かんき出版)

とはいえ、「すぐに会社を辞めて新しいことをやりましょう」と言いたくて本書を選んだわけではありません。そうではなく、会社でいつのどおりの仕事を続けるにしても、常に前向きであれば、きっとなにかが変化していくはずだと思うのです。

そのため、著者の経験もなんらかの参考になるのではないかと考えたわけです。たとえば日常の仕事に関して言えば、

自分が不得意なことは人に任せる。私はそれができるようになってから、人生がものすごく楽になりました。(52~53ページより)

こうした考え方を取り入れてみるだけでも、やる気の度合いは変わっていくのではないでしょうか?

とりあえず「行動する」

行動しなければ何も起こらないのです。大事なのは決心した後に、いかに行動ができるかなんです。好きな人がいたら「好きだ」って言わない限りは伝わりません。(プロローグより)

このように「行動すること」を勧めているのは、『DDDD[ドゥドゥドゥドゥ]──「行動」だけが奇跡を起こす』(杉山大輔 著、自由国民社)の著者。

  • 『DDDD[ドゥドゥドゥドゥ]──「行動」だけが奇跡を起こす』(杉山大輔 著、自由国民社)

ニューヨーク育ちの日本人TEDスピーカーだと聞くと、ひたすら熱いアプローチにも納得できる気がします。そんな著者は、よく聞くPDCAよりも、DDDD(ドゥドゥドゥドゥ)が有効だと考えているのだといいます。

じっくり考えるのではなくて、考えながらもう行動する。
評価やチェックに時間をかけるのではなくて、検証しながら行動する。
検証した上で改善するのではなくて、微調整しながら行動する。
あるいは、行動が違うと思ったらすぐにほかの行動をとる。
スピード感を持って、次々と行動(=Do)することこそが大切なのです。(プロローグより)

では、行動できる人になるためにはどうしたらいいのでしょうか? この問いに対して著者は、大前提として「自分を知る」必要があると答えています。なぜなら、人によってベストな行動(選択肢)は違うから。

そして自分の特徴を知り、「まずは全力でやってみる」。それが大切だということです。

友人に「この仕事、手伝って」といわれたら、嫌いな仕事でないのならば、やってみることです。親に「この仕事が向いているのでは?」といわれたら、やってみることです。いろいろやっていくうちに、「この仕事は自分に合っている」「この仕事は好き」というものがわかってきます。やりながら、ふるいにかけていくのです。頭の中で考えているだけでは、何も変わりません。やってみると、考えていた仕事とはまるで違った、などということは、世の中にいくらでもあります。(137ページより)

それは会社での仕事にも言えるでしょう。モチベーションが上がらないことを思い悩む前に、まずはやってみる。そうすれば、おのずとそこから先に進むべき道が見えてくるはずなのです。

印南敦史

作家、書評家。1962年東京生まれ。音楽ライター、音楽雑誌編集長を経て独立。現在は書評家として月間50本以上の書評を執筆。ベストセラー『遅読家のための読書術』(ダイヤモンド社)を筆頭に、『読んでも読んでも忘れてしまう人のための読書術』(星海社新書)ほか著書多数。4月8日発売の最新刊は、『書評の仕事』(ワニブックスPLUS新書)。