悩み多きビジネスパーソン。それぞれの悩みに効くビジネス書を、作家・書評家の印南敦史さんに選書していただきます。今回は、心配性すぎる自分に悩んでいる人のためのビジネス書です。

■今回のお悩み
「仕事や子育て、常に何かを心配していて疲れます」(32歳女性/販売・サービス関連)

  • 「心配性」を治すのに必要な意識とは(写真:マイナビニュース)

    「心配性」を治すのに必要な意識とは


かなり昔の話ですが、人から「のんきな性格だね」と言われたことがあります。

「あー、なるほどねー、そう見えるのね」って感じでした。僕は基本的に、「物事は、なるようにしかならない」と考えているので、おそらくそれが「のんき」であるように見えたのだろうと。

実際にはそんなことはなくて、悩みや心配ごとなんかいくらでもあるんですけどね。まー、人間ですから当然の話。

でも人間として当然なことである以上、あとはそれをなんとかすればいいだけ。そう考えることもできるのではないでしょうか?

ちなみに僕の場合、気がついたら気持ちが落ち込んでいたとか、知らないうちにモヤモヤしたものが心を覆っていたとか、つまりなんらかの不安が心のなかにあると感じたときは、その不安感をなるべく冷静に「分析」するようにしています。

「なぜ不安感があるんだろう?」と落ち着いて考え、その原因を突き詰めていくと、多少なりとも気持ちがスッキリするからです。そして、その結果なんらかの原因を見つけることができたとしたら、あとはそれを解決すればいいだけ。

とはいえ、もちろんすぐに解決できるわけではありません。相応の時間がかかることのほうが、圧倒的に多いと思います。しかし、それでも原因と向き合えば、それだけでだいぶ気持ちは楽になるものなのです。

さてさて、ビジネス書は、この問題についてどう回答してくれるのでしょうか?

悩みやストレスを気にしないために前頭葉を使う

『どうでもいいことで悩まない技術』(柿木隆介 著、文響社)の著者は、脳科学者。15年ほど病院勤務を続けたあと、脳科学研究者となったのだそうです。

当然ながら研究ざんまいの日々を送っているわけですが、臨床医として患者さんたちと触れ合うことで、人の悩みや心配事と向き合うことができ、それが自身の研究の土台になっているのだとか。

そこで本書では、日常のなかでしばしば質問されること、相談されること、また自分自身が経験してきた多くの事例をもとに、「悩みやストレスを気にしないでもいい方法」を提案しているのです。

不安はストレスがかかることによって生まれるものですが、ストレスの最大の問題点は、その問題に常にこだわってしまい、心が離れないこと。したがって、なんらかの方法でその悪循環を断ち切らなければならないわけです。

そこで著者は、なにか単純な作業に集中してみることを勧めています。「野菜をひたすら切る」「編みものをする」「パズルを解く」「掃除をする」など、なんでもOK。比較的好きにやれることを探してみるべきだというのです。

不安や緊張、恐怖を感じるのは大脳辺縁系の異常興奮で、それが何度も繰り返される悪循環になるとパニック状態になるのだそうです、そこで、大脳辺縁系のお目つけ役である前頭葉の出番。

たとえば料理中やパズルを解くとき、編みものをするときなどには前頭葉が活発に活動するのだとか。しかも「野菜をひたすら切る」「編みものをする」「パズルを解く」などの単純作業は飽きにくいため、長続きしやすく、その間は意識の集中も必要になります。

前頭葉が活動し、一つのことに長時間意識集中できる。それは、不安を忘れるためには最高の条件なのです。人は不安があると他のことを何もしたくなくなり、あることにとらわれてしまいそうになるのですが、何かアクションを起こしてみることが大切です。(87ページより)

  • 『どうでもいいことで悩まない技術』(柿木隆介 著、文響社)

逆に動き出せないままでいると、不安はどんどん大きくなり、ものごとが前に進まないどころか、精神的なゆとりがなくなってしまうもの。だからこそ、深く考えずに動くことも大事だということです。

「レジリエンス」を鍛え引きずらない自分へ

人はどうしても、失敗、挫折、不安などをひきずってしまうもの。では、どうすれば「ひきずらない人間になれるのでしょうか?」。『ひきずらない技術』(深谷純子 著、あさ出版)の著者は、「レジリエンス」がその解決策だと主張しています。

つらい経験やストレスを糧に、前進していくのが「良い引きずり」です。この「良いひきずり」に変える力を、心理学では「レジリエンス」と呼んでいます。これはもともと、物理の分野で使われていた言葉です。(中略)一般的には、失敗や挫折を経験して心が折れてしまったとき、つらい経験をしてへこんでしまったとき、その状態からもとの元気な状態に戻る力を「レジリエンス」といっています。(34ページより)

  • 『ひきずらない技術』(深谷純子 著、あさ出版)

なお著者はこれに加え、心が回復するだけでなく、つらい経験をする前よりも成長できることが「レジリエンス」の本質だと考えているといいます。すなわちそれが、「引きずらない技術」だということ。

しかも、レジリエンスは鍛えられるのだそうです。

レジリエンスを鍛えるうえで最も大切なのが、「ストレス対応力」です。「ストレス対応力」とは、ネガティブ感覚がわきあがってきたときに、その感情をコントロールして心が揺らがないようにする力です。(85ページより)

「ストレス対応力」を鍛えるために大切なのは、「自分の感情を知ること」。自分がなににストレスを感じて、どんなネガティブ感情を抱いているのかをつきとめる必要があるということです。冒頭で書いた、僕自身の不安とのつきあい方と共通する部分がありますね。

なお厚生労働省の調査によれば、働く人の心の健康(メンタルヘルス)問題が現れる原因としてもっとも多いのは「本人の性格の問題」なのだそうです。だとすれば、ストレスは個人の受け止め方次第ということになります。

つまり、ネガティブ感情の受け止め方を変えることができれば、ストレスはコントロールできるわけです。

そしてネガティブ感情の特徴がわかれば、感情的になることを予防したり、和らげたり、コントロールできるようになるでしょう。

起きてしまったネガティブ感情をプラスに転換して利用したり、ストレスを抱えている人をサポートできるようになればベストだといいます。

自分自身にブレーキをかけるな

人間なら、誰でも大なり小なり「気が弱い」もの。そのことを知っておけば、自分の気の弱さなど気にならない。『ビビらない技法』(内藤誼人 著、大和書房)の著者は、そう主張しています。

気が弱い人は、「私は気が弱いんだ」という暗示を自分にかけている。だから、人前に出ると、オドオドしたり、汗をかいたりする。声は震え、顔は真っ赤になる。そうやって“自滅”していくのが、気の弱い人の特徴である。気の弱さ自体は、決して直ることはない。だが、自分でおかしな暗示をかけて、自滅することくらいは防ぐことができる。うまく隠して、だれにも気が弱いことを気づかれずにすますこともできる。本書では、そういう心理テクニックについてご紹介していきたいと思う。(「はじめに」より)

  • 『ビビらない技法』(内藤誼人 著、大和書房)

たしかに人間は誰しも気が弱いのでしょうが、その度合いが強い人もいるはず。では、彼らはなぜ「人並み以上に気が弱い」のでしょうか?

この問いに対して著者は、こう答えています。「自分が気弱になるような暗示を自分にかけているから」なのだと。実力が発揮できないのも、才能が伸ばせないのも、自分で自分自身にブレーキをかけているからだというのです。

だから、そういうブレーキを取っ払ってしまえばいいという考え方。

気弱な人は、「自分は気弱だ」「強くなれるわけがない」「一生、このままだ」という思いにとらわれている。だから、気弱さが、どんどん強化されてしまうのである。そういう思い込みをしているうちは、気弱さは絶対に直らない。なぜなら、自分でも変わることがないと思っている人は、自分を変えることなど、思いもよらないからである。ちょっとした工夫をすれば、精力的で、アグレッシブで、パワフルな人間になれるのに、そうしないのである。(中略)気弱さなど、思い込みさえ取っ払ってしまえば、すぐにも直せるのである。(22ページより)

人間は、変わろうと思えばいくらでも変われるもの。気弱な性格が、心配性な性格が、ずっと変わらないということはありえないわけです。上記のようなちょっとした大切なことさえ知っておけば、すぐにでも変わることは可能。

要するに、自分の気持ち次第だということなのでしょう。


そして、なにより大切なのは、いまある自分を受け入れることではないでしょうか? 常になにかを心配している自分を「そういう人なのだ」と受け入れたうえで、「そもそも自分だけではなく、人間は誰しも心配性なのだ」と考えることができれば、少しずつ気持ちは楽になっていくのではないかと思います。

著者プロフィール : 印南敦史(いんなみ・あつし)

作家、書評家、フリーランスライター、編集者。1962年東京生まれ。音楽ライター、音楽雑誌編集長を経て独立。現在は書評家としても月間50本以上の書評を執筆中。『読んでも読んでも忘れてしまう人のための読書術』(星海社新書)、『遅読家のための読書術――情報洪水でも疲れない「フロー・リーディング」の習慣』(ダイヤモンド社)、『プロ書評家が教える 伝わる文章を書く技術』(KADOKAWA)ほか著書多数。