悩み多きビジネスパーソン。それぞれの悩みに効くビジネス書を、作家・書評家の印南敦史さんに選書していただきます。今回は、副業しようか悩んでいる人のためのビジネス書です。

■今回のお悩み
「副業しようかどうか悩んでいる」(50歳男性/IT関連技術職)

  • 副業しようか悩んだときは(写真:マイナビニュース)

    副業しようか悩んだときは


終身雇用制は崩壊し、それどころか正社員でい続けられる可能性すら保証してもらえないような状況になっています。「組織が守ってくれる」という考え方自体がもはや現実的ではないのですから、副業しようかという気持ちになるのも当然かと思えます。

とはいえ、いざ行動しようとしても、いろいろ不安はつきまとうもの。だいいち、副業といっても多種多様です。調べなければならないことも多いでしょうし、自分にどんな副業が向いているのか、それ以前にどんなことをしたいのかなど、考えなければならないこともたくさんありそうです。

ところで僕はフリーランスなので、会社勤めをしながら副業をしようという方の気持ちをきちんと理解できるかといえば、そうとも言い切れない気もしています。ただ、自分でやらなければどうにもならない環境で生きてきたからこそ、アドバイスできることがあるのも事実。

ものすごく当たり前だけれど、ものすごく重要なのは、とにかく「動くしかない」ということ。それに尽きるといっても過言ではないと思います。

もちろん事前の準備は大切ですが、いろいろなことを考え続け、いつまでたっても行動に移せないということはよくあるもの。しかし、それではなにも始まりません。

ある程度のめどがついたら、まずは動いてみる。その結果、違和感のようなものがあったとしたら、別の手段を考え、またやってみる。

そんなことを繰り返していけば、やがて「天職」としての副業に巡り会えるのではないかと思います。

ただし、そんなときには情報収拾をお忘れなく。そういう意味で、今回ご紹介する3冊(のうちのどれか)が助けになるかもしれません。

自分にできることを見つける際のポイントは

まずご紹介したいのは、『リスクゼロで小さく起業 会社を辞めずに「あと5万円! 」稼ぐ』(新井 一 著、大和書房)。著者は、これまでに10,000人の企業をプロデュースしてきたという、いわば「企業のプロ」。

そんな立場から、「あと5万円」収入を増やす方法を伝授しているわけです。

でも、どうやって5万円を稼げばいいのでしょうか?それは、けっして難しいことではありません。手作りのアクセサリーを売ってもいいですし、趣味や仕事で培った技術を活用してもいいのです。自分自身が身につけたノウハウや知識をみんなに教えることでも、十分に仕事になります。(「はじめに」より)

  • 『リスクゼロで小さく起業 会社を辞めずに「あと5万円!」稼ぐ』(新井 一 著、大和書房)

    『リスクゼロで小さく起業 会社を辞めずに「あと5万円!」稼ぐ』(新井 一 著、大和書房)

著者が注目しているのは、インターネットの発達によって、「小さな起業」をサポートしてくれる新たなサービスが次々と誕生している点。そういったサービスをうまく活用すれば、お金をかけずに宣伝ができて、手軽にネット上で取引もできるということです。

そうはいっても、「自分にはなにも特技がないから無理……」だと感じる方もいらっしゃるでしょう。しかし小さな起業では、必ずしも特別なことをする必要はないのだと著者は主張しています。

スタートラインは、普段からやっていることを、別の人にもやってあげようかと考えてみることだとか。たとえば会社で経理の仕事をしている人なら、起業・独立した知人の帳簿に記入する手伝いをするなどでもいいわけです。

自分にできることを見つける際のポイントは、ビジネスのタイプを見極めること。著者によれば、ビジネスは大きく4種類に分けられるそうです。

■プロダクト系……形のあるモノをつくったり売ったりする
■スキル系……技術や労力を提供する
■ノウハウ系……情報や知識を提供する
■スペース系……みんなが集まる場を企画する
(41~42ページより)

たしかに、どれが自分に適しているのかを見極められれば、そこから可能性が広がっていきそうです。もちろん本書には「それ以降」のノウハウも詰め込まれていますので、「なにかやりたい」という漠然とした気持ちを、より具体的なものにしていけるはず。

副業する「時間」を確保するために

『好きなことで無理なく毎月10万円稼ぐ方法』(ピンクプロジェクト 編著、西村公児監修、かんき出版)も、基本的な考え方は共通しています。ただしタイトルからわかるとおり、目標額は10万円と『リスクゼロで小さく起業 会社を辞めずに「あと5万円! 」稼ぐ』の2倍。

ちなみに編著者の「ピンクプロジェクト」とは、「女性の活躍」「子育て支援の促進」「隙間時間の有効活用」を軸に、女性に求められる育児・仕事について考えるプロジェクトなのだそうです。

つまり女性がターゲットなのですが、その内容は男性にでも応用できるものばかり。そこで、ご紹介しておこうと思い立ったわけです。あるいは、パートナーと一緒に副業をしたいという方にも向いているかもしれません。

ところで副業をしようというとき、まず目の前に立ちはだかるのは「時間」の問題です。なにしろ本業と並行させるわけですから、時間を確保しなければならず、それがなかなか難しいということ。

とくに規則正しさを大切にする傾向の強い日本人は、「こうでなくてはならない」という潜在意識を持っていることが多く、つい完璧主義を目指してしまいがち。でも、「だいたいできたらOK」というように考え、ちょっと気を楽にしてみることが重要なのだといいます。

ポイントは、現在の自分の時間の使い方を可視化してみること。

たとえば、1間のうちにドラマやバラエティー番組を観る時間があるとしたら、それは「なんとなく観ていないか」を精査してみてください。意外と、どうしても観たい番組は1、2本だけだったりします。なんとなく観ていたものを1本削れば60分、2本削ればあっという間に120分の時間が捻出できてしまいます。(48ページより)。

  • 『好きなことで無理なく毎月10万円稼ぐ方法』(ピンクプロジェクト 編著、西村公児監修、かんき出版)

    『好きなことで無理なく毎月10万円稼ぐ方法』(ピンクプロジェクト 編著、西村公児監修、かんき出版)

なるほど、そのように工夫をしてみて、それを積み重ねていけば、副業のための時間を生み出すことができることでしょう。その他、具体的なアイデアもふんだんに盛り込まれていますので、本書に目を通してみれば、副業に対するモヤモヤを解決できるかもしれません。

全体像をつかみたいなら

さて、最後にご紹介したいのは、『フリーランス&“複"業で働く! 完全ガイド』(一般社団法人プロフェッショナル&パラレルキャリア・フリーランス協会 監修、日経ムック)。

副業の始め方、続け方、実際に副業している人たちへのインタビュー、フリーランスのリスクとその回避法、法律・税金・公的支援の正しい知識と、フリーランスおよび副業に関して知りたいことがわかりやすくまとめられたムックです。

フリーランスと副業の全体像をつかみたいという方のニーズを叶えてくれる、とても実用的な内容。なにより、いろいろな立場の方の意見を吸収できるのがうれしいところです。

フリーランスという働き方は、それなりの覚悟とスキルが必要で、向き不向きもあります。私は誰もが独立すべきとは決して思っていません。ただ、自分が何にやりがいや喜びを感じるかを追求したときに、選択肢の一つに独立や副業があり、挑戦しやすい環境があるといいなと考えています。会社員もフリーランスも、多様なオプションがあるほうが、長く幸せに働けそうです。自分にどんなスキルがあるのか知ってオプションを増やすためにも、副業から始めてみるのはオススメです。

  • フリーランス&“複"業で働く! 完全ガイド』(一般社団法人プロフェッショナル&パラレルキャリア・フリーランス協会 監修、日経ムック)

    『フリーランス&“複"業で働く! 完全ガイド』(一般社団法人プロフェッショナル&パラレルキャリア・フリーランス協会 監修、日経ムック)

これは、一般社団法人プロフェッショナル&パラレルキャリア・フリーランス協会 代表理事、平田麻莉さんのことば。ここには、フリーランスや副業に関してとても大切なことが凝縮されているように思います。

まずは自分に適したビジネスのタイプを見極め、それを副業にしてみるのはいかがでしょうか?

著者プロフィール: 印南敦史(いんなみ・あつし)

作家、書評家、フリーランスライター、編集者。1962年東京生まれ。音楽ライター、音楽雑誌編集長を経て独立。現在は書評家としても月間50本以上の書評を執筆中。『読んでも読んでも忘れてしまう人のための読書術』(星海社新書)、『遅読家のための読書術――情報洪水でも疲れない「フロー・リーディング」の習慣』(ダイヤモンド社)、『プロ書評家が教える 伝わる文章を書く技術』(KADOKAWA)ほか著書多数。