皆様こんにちは、マネックス証券の益嶋です。「目指せ黒帯! 益嶋裕の日本株道場」第8回をお届けいたします。本コラムでは、「これから投資を始めたい」「投資を始めてみたけれどなかなかうまくいかない」といった方向けに、投資家としてレベルアップするための色々な知識をお伝えしていきます。今月もまずは最近のマーケット動向を簡単にご紹介します。

じりじりと値を戻す日本株

前回のコラムが掲載された3月22日時点で日経平均は21,591円でした。今月のコラムを書いている4月18日時点で日経平均は22,158円まで600円ほど上昇しました。実はコラム掲載翌日の3月23日には米国と中国の貿易戦争懸念が高まって日経平均が1日で1,000円近く下げ、20,617円まで下落しました。その後両国が交渉の余地を示すなどして過度な不安が後退するとともに日経平均は徐々に値を戻しました。現在はまもなく始まる日本企業の決算発表待ちといった感じです。日経平均の今年の高値(終値ベース)は1月23日につけた24,125円で足元の株価との差は約2,000円。ぜひ早々の高値更新を期待したいものです。

ご存知ですか? J-REIT

では今月も本題に入っていきましょう。読者の皆様は、J-REITという言葉を聞いたことがありますか?REITとはReal Estate Investment Trustのそれぞれの単語の頭文字にJapanのJをつけたもので、一般的に「不動産投資信託」と呼ばれます。

個人で不動産投資を行うためには多額の元手が必要なので、そう簡単にできるものではありません。その問題を解決するために、J-REITは多くの投資家からお金を集めて不動産投資を行います。一人ひとりは100万円しか持っていなくても、1,000人いれば10億円集まります。10億円あれば立派なビルを購入できますので、「ビルに入居している借り主から家賃収入を得る」「ビルの価格が上昇したら売却益を狙う」などができます。そうして得た利益をもとにさらなる投資を行ったり、利益を投資家に還元したりするわけです。なお、J-REITは上場企業とまったく同じ方法で購入できます。トヨタ自動車などの株式と同様に朝9時から15時まで東証で取引されています。購入したい場合は証券会社を通じて東証に注文を出します。

J-REITの魅力

J-REITの魅力はなんと言っても高い分配金利回りでしょう。株式投資でいう配当利回りにあたるものですが、現在の東証1部の平均配当利回りが2%程度であるのに対しJ-REITの平均分配金利回りは4.2%と2倍以上の水準です。以下のグラフに赤い線で示したとおり、現在のJ-REITの分配金利回りはいわゆるアベノミクス・マーケットが始まって以降最も高い水準にあります。通常、株式で配当利回りが高いということはその銘柄の業績が思わしくなく、市場の成長期待が低い場合や減配懸念がある場合がほとんどです。では現在のJ-REITはどのような状況なのでしょうか?

  • 不動産投資信託「J-REIT」ってご存知ですか?

実はJ-REITの業績は好調です。以下のグラフはJ-REITのうち6期前(J-REITは通常6ヶ月決算なので過去3年間)から業績を取得できた45銘柄について、純利益を集計したものです。J-REITの業績は右肩上がりに伸びてきたことがわかります。利益の増加は増資などによる物件取得による成長(外部成長)も含みますが、REIT指数が上がる中で、利回りも伸びており賃料改定などによる利益増加(内部成長)も大きいと言えそうです。超低金利と国内景気の堅調さに支えられて不動産市況が良くなっているということでしょう。

J-REITにも様々な銘柄があります。例えば森ヒルズリート(3234)は森ビルがスポンサーで、六本木ヒルズやアークヒルズ、虎ノ門ヒルズといった不動産に投資を行っています。その他にも九州の物件に投資する福岡リート(8968)やリゾート地運営で有名な星野リゾートがスポンサーの星野リゾート・リート(3287)など多種多様なREITがありますので、ぜひ色々と調べてみてください。

今月はいつもと少し趣向を変えてJ-REITについてお伝えしました。業績が好調なのに利回りが高いJ-REIT。うまく活用すればとても魅力的な投資商品ですので、ぜひご自身のポートフォリオに入れることを検討していただければと思います。最後までお読みいただきありがとうございました。ではまた次回!

執筆者プロフィール : 益嶋 裕

マネックス証券 マーケット・アナリスト兼インベストメント・アドバイザー

早稲田大学政治経済学部政治学科卒。2008年4月にマネックス証券に入社。2013年からアナリスト業務に従事。2017年8月より現職。現在は「日本株銘柄フォーカス」レポートや日々の国内市況の執筆、各種ウェブコンテンツの作成に携わりながら、オンラインセミナーにも出演中。日本証券アナリスト協会検定会員。
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