ここまでマンション購入の手順を紹介しましたが、最後に中古マンションの購入についてもまとめておきます。基本的には新築マンションと同じですが、中古マンション特有のチェックポイントや手順があるのです。

2つの築年数チェック

新耐震基準以降の建物であること

1つは耐震チェックです。昭和56年6月1日に新耐震基準が施行されました。昭和56年6月1日以降に竣工した建物であればOKというわけでなく、それ以降に建築確認の審査がされた建物であることが大切です。したがって建物の竣工はそれから少なくとも1年くらい後になります。旧耐震基準の建物は、耐震補強等がなされて、耐震評価基準に適合していなければ、住宅ローンを借り入れるのは難しくなります。地震保険等の保険料にも影響します。

特定住宅瑕疵担保責任の履行の確保等に関する法律

平成12年4月に「住宅の品質確保の促進等に関する法律」が施行され、新築住宅の所定の部分について10年間の瑕疵担保責任(かしたんぽせきにん)が義務付けられました。構造体や屋根などの重要な部位に不具合が見つかった場合、新築後10年間は補修等の義務が生じます。

さらに平成21年10月より、瑕疵担保責任の履行を確実にするために保険の加入や資金の供託が義務付けられました。従って築10年未満の中古マンションは瑕疵担保責任期間が残っていることと、平成21年10月以降のものは履行のための資力が担保されていることになります。ただし、保険の加入や供託金が供出されているかどうかの確認は必要です。

フラット35の適合証明とは?

フラット35を利用するためには、購入する中古住宅について、住宅金融支援機構が定める独自の技術基準に適合していることを証明する適合証明書の交付を受ける必要があります。この適合証明書は、検査機関または適合証明技術者へ物件検査の申請を行い、合格すると交付されます。

適合証明技術者とは、機構と協定を締結している(社)日本建築士事務所協会連合会および(社)日本建築士会連合会に登録した建築士です。住宅金融支援機構のホームページなどで物件の最寄りの調査機関・建築士を検索します。交渉して条件がまとまれば、調査を依頼します。物件が適合していて適合証明書が発行されたら、それを添付して融資の申し込みを行います。

連載4回目「購入前にモデルルームを見に行くとき」で述べたように、購入前に現地やモデルルームで建築士のセカンドオピニオンを受けることは大切なポイントです。したがってフラット35を利用しない場合も、新築同様セカンドオピニオンを求めることをお勧めします。

同時にフラット35の適合証明は単なる目視による判断で、購入を決める材料としてはいささか不十分です。適合証明技術者に追加のチェックを依頼できると便利ですが、適合証明技術者は所定の講習等を終了すれば、ある程度誰でも取得でき、マンション設計のエキスパートであるかどうかはわかりません。

建築士事務所協会では、既存住宅状況調査技術者制度が平成29年2月から導入されました。登録建築士名簿から最寄りの建築士に、よりレベルの高いマンションや周辺環境のチェック等も可能かどうか打診してみるのもよいでしょう。

中古マンション購入注意点

築年数と建物チェック、環境チェックのほかに中古住宅としてチェックしておくべき項目はあります。

管理費と修繕積立金

管理費や修繕積立金は一体で管理費として徴収されます。そのうち修繕積立金は別途プールされて毎年の小規模な修繕や10年程度に一度の大規模修繕の時に使われます。修繕費は、分譲時の修繕一時金(毎月の管理費負担を軽減し、大規模修繕に備える為に、新築分譲時に一括して支払う一時金)の有無にもよりますが、全体の管理費の50%弱です。極端に少ない場合はその理由について確認しましょう。

最終的に現在いくらの修繕積立金がプールされているかは重要なポイントです。一般的に規模の大きいマンションほど、管理費や修繕工事金額は割安になる点も考慮に入れてください。また、世帯数が多いと、建築や税務など各分野の専門家が居住している確率も高くなり、工事費を適正価格に抑える意味でも有利です。

長期修繕計画の実績と計画

長期修繕計画とは、建物が耐用年数を終えるまで、概ね、いつどのような修繕をどのくらいの費用で行うかの長期計画です。建物の設備や材料はそれぞれ耐用年数が異なります。修繕積立金はその部位が耐用年数を迎えて、どうしても修繕しなければならなくなった時に、必要な費用を確保しておくための資金の元です。

きちんとした修繕計画があるかどうかは管理状態の質を表していて、重要なポイントです。また最終の大規模修繕工事がいつ実施されたかも重要です。購入してすぐに大規模修繕となり、修繕積立金が不足していれば、各住戸は一時金を支払わなければなりません。

中古物件を購入すると同時にリフォームしたり、リノベーションしたりするケースも多くなってきています。そのためのローンもありますので、物件選びの際には合わせて検討ください。

<著者プロフィール>

佐藤 章子

一級建築士・ファイナンシャルプランナー(CFP(R)・一級FP技能士)。建設会社や住宅メーカーで設計・商品開発・不動産活用などに従事。2001年に住まいと暮らしのコンサルタント事務所を開業。技術面・経済面双方から住まいづくりをアドバイス。

※画像と本文は関係ありません