これまでの連載でマンション購入の資金計画の立て方などをお伝えしてまいりましたが、多くの方が心配されるのが「そもそもローン審査が通るかどうか」ということ。私は一般社団法人「女性のための快適住まいづくり研究会」の代表として「女性のためのかしこいマンション購入術講座」の講師を務め、これまで8万8千人以上の20代~70代女性のマンション購入の相談に乗ってまいりましたが、多くの女性からこうした質問をいただきます。

結論から申し上げますと、マンションを購入するときに今は保証人はいりません。そして税込年収の7~9倍のローンの借り入れが可能です。

「フラット35」なら、年収が400万円以上かそれ未満で返済比率を分けているだけで、年収の最低ラインというものはありません。年収100万円でも、昨年勤めていなくても、勤続年数が1年未満でも、現在安定した年収があれば大丈夫です。

銀行の事前審査の場合は、現在3~3.2%の審査金利をもとに年収に対する返済比率を30~35%で計算します。44歳以下の場合は計算式も同じで、45歳以上になると年齢も考慮して融資可能額が計算されるので1歳でも若く、そして審査金利が低いときのほうが融資可能額は高くなります。

契約社員や派遣社員の人は、銀行の住宅ローンの利用規定に「正社員で勤続3年以上」と書かれているのを見て諦めたというご経験があるかもしれません。これはあくまでも原則。非提携ローンの場合は確かにこうしたケースもありますが、不動産会社の提携ローンならこの条件に当てはまらない人も利用できることもあります。

どんな雇用形態であってもまじめにコツコツ働き続けているかどうかが審査では重視されますので、転職したばかりの人や今年の年収がどれくらいになるかわからない場合は会社に依頼して「年収見込証明書」を作成してもらい、転職してからの給与明細を添付すれば審査も受け付けてくれます。新しく入社するときは、月の途中ではなく一日付けで入社することが大切です。なぜなら、一か月の給料を基にローンの借入額が計算されるからです。ただし、派遣社員で次々に会社を渡り歩いている人は要注意。審査が厳しくなることがありますので、登録している派遣会社や派遣先をできるだけ変えず、ひとつの派遣先で社員と同じ気持ちで長く働くことが大切です。

収入が安定していないという意味では自営業やフリーランスの人も不安定な職業とみなされ、審査が厳しくなることがあります。会社員の場合は必要ありませんが、自営業やフリーランスの人はローン審査で提出するのは過去2年間の確定申告書の控えですので、収入の多かった年や経費があまり出なかった年の翌年に審査を受けるのが有利です。さらに仕事先の安定性、フリーになる前の職歴もローン審査にはある程度影響します。やはり会社員のうちにローン審査をし、マンションを買ってしまうのが一番の早道です。

また、ローンの借り入れがあって返済が遅れている場合や、カードのキャッシングやリボ払いを繰り返している人はチェックの対象になるので注意が必要です。キャッシングをしたことがない人でも、クレジットカードや銀行のカードにキャッシング機能があるものが多いとマイナス要因になることがあります。キャッシング機能がついていたら止めておくことが大切です。クレジットの残高がある場合、まずそちらの精算を優先し、今は頭金がゼロでも良いので住宅ローンの審査に確実に通るようにしておくことのほうが先決です。

不動産会社では契約前に提携ローンの事前審査を無料で行ってくれるので、ぜひ利用してみてください。事前審査に通っていれば退職したり、大幅に収入が減ったりしていない限りは本審査もスムーズです。

そして大切なのは一度ぐらい審査がダメでも気にしないこと。ローン審査が通るかは、お見合い結果や就職の内定と同じ。時期によっては自分の条件に合う金融機関がきっと見つかりますので諦めないことが大切です。

執筆者プロフィール : 小島ひろ美

一般社団法人 女性のための快適住まいづくり研究会 代表。1957年福岡県生まれ。関西学院大学商学部卒 ライフスタイル・コーディネーター、宅地建物取引士、相続診断士 。26歳の時にマンション購入で苦労した経験をいかし、"女性がマンション購入の夢を実現できる世の中にしたい"と1991年に研究会を設立。

以降、「女性のためのかしこいマンション購入術講座」で、今までに8万8,000人以上の女性たちに800回以上の講演を行いながら、27年間に渡り女性のマンション購入を応援し、第一線で活躍中。著書「シングル女性の(特)マンション選び」(講談社)、「元気になる!幸せマンション購入術」(アスコム)、他多数。

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