3回目となる今回はDAY1より”アイドル”をテーマに、アイドルマスター 765プロオールスターズ、i☆Risの2組をご紹介。かたやアイドルをテーマにした作品発のユニット、かたや声優とアイドルの活動を両立するハイブリッドユニットと一見共通項を見出しにくいように思える2組だが、実は”アイドル”という点以外にも確かな共通点を有していた。

【アイドルマスター 765プロオールスターズ】”進み続ける”という誓いの曲、「LEADER!!!」

2015年以来、5年ぶりの出場が予定されていた765プロオールスターズ(以下:765AS)。言わずと知れた、今に繋がるアイドルコンテンツ人気の火付け役『THE IDOLM@STER』に登場するアイドルたちによるユニットである。

今年はアーケード版の稼働開始15周年にあたる記念すべき年であり、8月1日・2日に2Daysのライブも開催予定だった。そのライブでの熱量と、それを受けてさらに大きく膨らんだ意気込みとともにSSAに立ち、歓喜の渦をさらに大きくしていたことだろう。

☆この曲を聴け!……「LEADER!!」

「iを歌うから」と歌い始められたこの曲は、誓いの歌である。自分自身であり、愛であり、そしてロゴでは"iDOLM@STER"と表記される本作になぞらえて”アイドル”を表す”i”。それらすべてをこれからも歌い続ける――という誓いの歌。そしてその頭サビの最後に、力強く「私たち LEADER!!」と明言してみせているのが、15年目に突入した昨年リリースしたこの曲なのだ。

その"LEADER!!"という言葉は、後輩アイドルたちを引っ張り先頭に立つという意味に加えて、メタ的にはアイドルコンテンツの草分け的存在でありながら長年トップランナーであり続けているという意味ももつ。だが、その割にはこの曲、あまり今までの765ASっぽい曲ではない。たしかにブラスやストリングスも用いられた華やかなものであり、コールを通じて一体感を高められるポイントが存在したりと”らしさ”も多々ある。

しかしその一方で、頭サビから1番のサビまでの間に全員にそれぞれソロパートが与えられていたり、頭サビ明けに「イエーイ!」とコールを入れられる”お約束”の部分がなかったり(こちらは3年前の「ToP!!!!!!!!!!!!!」でもみられたのだが)、変革も感じさせる。その試みが、歩みを止めないことを歌った歌詞と結びつくことで、”現状に安住しない”という彼女たちの姿勢が示された楽曲として完成をみることができた――と言ってもよいのではないだろうか。 加えてクリエイターにも焦点を当てると、よりこの曲が”これから”を見据えたものであると感じ取れる。

「LEADER!!」の作詞・作編曲を手掛けた星 銀乃丈氏は、リリース当時弱冠20歳。しかも、中学生時代に765ASの7th ANNIVERSARYライブに参加していたという筋金入りのPでもある。そんな彼だからこそこれまでの歩みに敬意も込めつつ、まだまだ続いていく彼女たちのアイドルとしての日々を、前例にとらわれずに作り上げることができたのだろう。

これまでと未来の13人の姿を同時に見据えたこの曲に、15周年を迎えた今だからこそ、改めて注目してほしい。

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【i☆Ris】「ハピラキ☆Dream Carnival」には、今の6人のおいしいところがぎゅぎゅっと凝縮!

7月7日に結成8周年を迎えた彼女たちは、アニサマへは6年連続7回目の出場。ダンスパフォーマンスのアグレッシブさは衰え知らずであるのと当時に、近年ではキャリアを重ねたからこそのオトナ感を発揮した曲の発表も増え、その魅力を高め続けている。

そのうえで各メンバーが個々に志向するフィールドも深化させ活躍の場を広げつつも、約2年半ぶりの4thアルバム『Shall we☆Carnival』は自身初のアルバム週間チャートTOP10入り。エンターテイナーとして加速度的に成長を続けながら、認知と人気を広げてきた1年だった。

☆この曲を聴け!……「ハピラキ☆Dream Carnival」

楽曲自体はハッピーなムードとともに、リスナーの今の頑張りを肯定しつつ、さらに前に進めるようエールとエネルギーを送るポップなナンバー。加えて、デビュー7周年ライブでパシフィコ横浜を見事に埋めた彼女たちが、その後の初リリースとなるアルバムのリード曲で「夢の続きを」と歌い始めてくれたことが、たまらなく嬉しかったファンも多かったはずだ。

そんなこの曲は、2番の構成が1番と全く異なっていたりと一筋縄ではいかない構成(ぜひ引用のMVを御覧いただきたい)。その中において6人は、それぞれの個性とスキルを発揮しながら全力で”遊んで”いる。各々のソロ最後のロングトーンをそのまま重ねて美しいハーモニーの虹をかけたかと思えば、嵐の海をバックにしたMVにリンクするかのように、コミカルさも出しながら合唱風の重厚なハーモニーを響かせる。

その一方で、最後には冒頭部分と呼応するフレーズを清らかに歌唱し、ひとつの物語としてこの曲を美しく閉じているのだ。

そんなこの曲が、今のi☆Risとよく重なるように感じたのは筆者だけだろうか。時としてハチャメチャにフルスイングしながらも、決してやり逃げせずに最後にはきちんと収めるところに収める姿とピッタリ来ないだろうか。それを特に象徴しているのが、2番以降のリーダー・山北早紀の活き方である。2-Bメロで、MVでは嵐の海を背負いつつボーカルで思いっきり遊びながら、Dメロの最後にはフォーメーションの内側に位置取ると、左右両側のメンバーと目を合わせながら「(夢を)共に目指して行こう」と歌い上げる。

遊ぶところは遊び、まとめるところはきっちりまとめるというリーダー然とした姿が、振付も含めて曲中にバッチリ投影されているのだ。

それをちゃんと表現しきった6人はもとより、今のi☆Risのスキルと面白さと魅力をこれでもか! とばかりに伝えられる要素を詰め込みまくった、作詞・作編曲を手掛けたMotokiyoにも拍手を送りたい。i☆Risとは直近シングル2作の収録曲でもタッグを組んでおり、相性も良好。今後もともに良曲を量産してほしいと、心から願う。

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キャリアを重ねた今だからこそ歌える曲を直近のリリースにて発表し、進化を止めない姿を提示した――これが2組の、”アイドル”という表面的な部分以外の共通項である。加えて、ジャンルにおける”開拓者”でもある、という点でも繋がる部分はあるだろう。

ということは、裏を返せば2組とも、これまでの歴史のなかでリリースを重ねてきたということ。もし本稿を通じて興味を持った方は、ぜひソロ曲・ユニット曲等も含めて過去曲にも手を伸ばし、それぞれの良さに触れてもらえれば幸いだ。

また、今回ピックアップした曲は奇しくも、いずれも気鋭の若手クリエイターによるもの。他のクリエイターやアーティストのものも含め、お気に入り曲を手掛けたクリエイターの楽曲を横断的に聴いていくことも、アニソンの楽しみ方をより広げてくれるだろう。そんな新しい出会い方も、あわせてオススメしたい。

さて、次回は"待望"をキーワードに、ASCA、スキマスイッチ、西川貴教の3組をピックアップ。そのテーマも相まって何をご紹介するかも非常に悩みどころな3組ではあるが、"予習"という観点を大事に提案していく予定なので、どうぞお楽しみに!

●著者プロフィール
須永兼次(すながけんじ)。群馬県出身。中学生の頃からアニメソングにハマり、会社員として働く傍らアニソンレビューブログを開設。2013年フリーライターとして独立し、主に声優アーティストやアニソンシンガー関係のインタビューやレポート記事を手がける
Twitter:@sunaken

記事内イラスト担当:jimao
まいにち勉強中。イラストのお仕事随時募集しております。Twitter→@jimaojisan12