アニソン・キャラソン・声優ソングをこよなく愛するフリーライター・須永兼次が、とにかく自分の「好き!」を中核にオススメディスクをご紹介していく連載レビュー、須永兼次の「アニソンをしゃぶりつくせ!」。

●まずは

はじめまして。フリーライターの須永兼次と申します。この書き出しだとアフィサイトっぽいですね(早速脱線)。このコーナーを担当させていただくにあたって、取り上げるジャンルの曲を昨年度どれくらい聴いたか改めて振り返ったら、お仕事関連だけでざっくり600曲。そこに毎クールの主題歌や好きな作品のキャラソンを足すと、1000曲は下らなさそうでした。昔の曲を聴くのも好きなので、この数字にはびっくり。

アニソンにハマッたのは2000年頃で、某ラジオ(と某声優さん)にハマりまくったことがきっかけでした。それから中高大とアニソンがどんどん好きになっていって、大学はたまたま日本語学を専攻していたこともあり、畑亜貴さんの歌詞をテーマに卒論を書かせていただきました。それがきっかけでなんやかんやあってフリーライターになり、現在に至ります。普段の他媒体さんでのレビューよりもだいぶパッションダダ漏れになるとは思いますが、ぜひぜひお付き合いいただけますと幸いです。

初回にご紹介するのは、TVアニメ『NEW GAME!!』キャラクターソングミニアルバム2『SINGin' SING UP♪♪♪♪』。第1期のBlu-ray特典として製作された既存の6曲に加え、それぞれ初となる涼風青葉&滝本ひふみ、篠田はじめ&飯島ゆんのデュエットからなる新曲2曲を収録した、ファン垂涎のアルバムだ。

まずはじめに、作品未見の方のために簡単なイントロダクションからご紹介。 小学生の頃にゲーム『フェアリーズストーリー』にハマり、キャラクターデザイナーを志した主人公・涼風青葉。高校卒業後、その制作会社・イーグルジャンプに就職した彼女は、『フェアリーズストーリー』のメインキャラデザを担当した憧れの存在・八神コウのチームに部下として配属される。そしてそのコウをはじめとした様々な先輩社員と関わりながら、開発が後半に差し掛かった続編ソフト『フェアリーズストーリー3』の制作に向かい……?

●しっかりとバトンが受け継がれた1枚に

……いやぁ、2期は超絶アツかった。完全に日常系の皮をかぶった青春群像劇で、終盤は涙が止まらなかった……なんて想いを持ったまま、1期第1巻の特典曲であるあおっち(涼風青葉)の「春色Runway」を今振り返ると、超グッとくる。

成長した彼女を見た今、スタート地点を振り返る懐かしさというか。サウンドも歌声も、始まりを感じさせる明るさとワクワクに満ちあふれたもので、出社シーンから始まる第1話の、その前を補完してくれる貴重な存在でもある。あ、あとサビ直前の"頑張るぞ! 行きましょう"の言葉の並びは、音としてちょっとズルいと思います。でもそういうの好き。

それに続く、ひふみん(滝本ひふみ)が優しくほわっと、う「そうじろうのうた」は、リコーダーやマリンバ・グロッケンの音色がボーカルにピッタリ。宗次郎とはひふみんが飼っているペットのハリネズミのこと。本楽曲は「宗次郎の声」として客観視されたところから、家でのひふみん像が描かれている。第2巻の特典らしく少々時間が経過しており、「あの子」のおかげで毎日が楽しそうなひふみん像が描き出されているのにもほっこりさせられる。

そして同じく先輩組、八神コウと遠山りんのふたりによる「Little Bitter Duet」が続く。こちらも爽快感のあるロックチューンに先輩社員組ならではの葛藤を乗せつつ、最も強く感じるのは、やはりふたりの関係性。特にりんがコウをそっと見守るような2コーラス目のBメロに、ふたりが二人三脚で互いを歌い合うDメロなんてああもう尊い。そのうえ鋭く強めのコウの歌声を、優しく丸みあるりんが包んでいるような、ふたりの関係性そのもののようなボーカルの相性もまた至高だ。

そこからガラリとアプローチが変わるのが、篠田はじめと桜ねねによる「ミラクル☆マジカル☆ムーンレンジャー」。作中のアニメ『魔法少女ムーンレンジャー』の主題歌(※「Special Edition」として2期4話のイベントシーンでも主役ふたりが歌唱)を、熱狂的ファンふたりでカラオケで熱唱する様子が秒で浮かぶ。ちょうどねねっちがデバッガーとしてイーグルジャンプにバイトに来た時期だし。サウンド面は、映えるブラスとオーケストラ・ヒットの音色が印象的で、往年の名作アニソンを感じさせる1曲だ。

続く飯島ゆんの「Sweet Everyday」はふわっとオシャレなナンバー。現実の彼女の実家は和室だけれども、普段の服装やそれが似合う、彼女の理想の世界をふんだんに散りばめた優雅なワルツだ。メロディの流れが特殊であったり詰まっていたりと難しいポイントもあるのだが、それを「飯島ゆん」としてしっかり歌ってくれているのも、またうれしい。イントロやアウトロのスキャットも、その理想の世界に似合うかわいらしいものだ。

そして既存曲ラストとして、強烈なインパクトを与えてくれたのが「いとしかなし月日よ」。阿波根うみこの凛とした声質に非常によく似合う演歌で、歌声の情念がとにかく深すぎる。いい意味で。1曲を通じて歌われているのは仕事に対する想い(と若干の憤り)であり、「撃っていいですか」のキーフレーズには思わずニヤリ。結局Dメロで撃ち鳴らした銃の先には、やはり葉月しずくがいるのだろうか。時間帯も夜明け前だし。

……という1期の曲を経て、ラスト2曲は新曲。2曲とも、やはりこの組み合わせならではのバディ感の出た歌詞や歌声になっている。

まずははじめとゆんによる「カラフル☆フュージョン」。テンポも速くてわちゃわちゃ感のあるサウンドで、下支えするベースのラインが大変気持ちいい。しかもそのサウンドのテンション感は、ふたりの普段のやり取りともそのままリンクするものだ。

若手らしい仕事にまっすぐ向かう心情も歌いつつ、曲中に散りばめられたセリフでのやりとりはまさに普段の開発ブース。軽口を叩きあったりもするけれど、大サビ前はゆんがはじめを励ましたりアドバイスを出したりと、なんだかんだで相性抜群の凸凹コンビなのだろう。そう言うと、きっとゆんは照れてしまうのだろうけれども。

もう1曲、青葉とひふみによる「Dreaming Stars」は「カラフル☆フュージョン」とは違った方向性のバディ感を持つ温かなミドルナンバー。まっすぐ歌うあおっちを、追いかけやハモリで支えつつ美しいハーモニーを成立させるひふみんという構図に、良好な先輩後輩関係が見える。

その表現へのこだわりゆえか、安易に2コーラス目で役割を交代させない点にも好感が持てる。そんな確固たる関係を築いたふたりが「一緒じゃなきゃ起こせない 大きな奇跡起こすんだ」と歌うのも、最高ではないだろうか?

そして1曲聴ききったところで気づく。「まっすぐなあおっちを包み込むひふみん」という関係性は、コウ・ゆんのそれと重なるものだ、と。2期のラストでコウがフランスへと旅立った今、しっかりとバトンが受け継がれていることを示してくれる点は作品ファンとして純粋に喜ばしいし、加えてまだまだ未来へと物語が続いていくことを感じさせてアルバムを締めくくるのも、素晴らしいねらいだと思わされた。こうして本作は、既存曲と新曲との組み合わせにも関わらず、非常に収まりのいい1枚に仕上がったのだ。

[まとめのひとこと]
イーグルジャンプに入社したい
定時で帰れなくてもいいから
今度は研修生組のキャラソンも、聴いてみたいなぁ……

  • 『NEW GAME!!』キャラクターソングミニアルバム2『SINGin' SING UP♪♪♪♪』

●商品情報
TVアニメ『NEW GAME!!』
キャラクターソングミニアルバム第2弾『SING'in SING UP♪♪♪♪』」
発売日:1月24日
価格:2,700円(税込)

・収録内容
01.「春色Runway」
歌:涼風青葉(CV:高田憂希)
02.「そうじろうのうた」
歌:滝本ひふみ(CV:山口愛)
03.「Little Bitter Duet」
歌:八神コウ(CV:日笠陽子)&遠山りん(CV:茅野愛衣)
04.「ミラクル☆マジカル☆ムーンレンジャー」
歌:篠田はじめ(CV:戸田めぐみ)&桜 ねね(CV:朝日奈丸佳)
05.「Sweet Everyday」
歌:飯島ゆん(CV:竹尾歩美)
06.「いとしかなし月日よ」
歌:阿波根うみこ(CV:森永千才)
07.「カラフル☆フュージョン」
歌:篠田はじめ(CV:戸田めぐみ)&飯島ゆん(CV:竹尾歩美)
08.「Dreaming Stars」
歌:涼風青葉(CV:高田憂希)&滝本ひふみ(CV:山口愛)

●著者プロフィール
須永兼次(すながけんじ)。群馬県出身。中学生の頃からアニメソングにハマり、会社員として働く傍らアニソンレビューブログを開設。2013年フリーライターとして独立し、主に声優アーティストやアニソンシンガー関係のインタビューやレポート記事を手がける
Twitter:@sunaken

記事内イラスト担当:jimao
まいにち勉強中。イラストのお仕事随時募集しております。Twitter→@jimaojisan12

(C) 得能正太郎・芳文社/NEW GAME!!製作委員会
(C) 得能正太郎・芳文社/NEW GAME!製作委員会