数ある投資の中でも、少額から始められ、郵便局や銀行でも買える、といった敷居の低さから、多くの人の注目を集める「投資信託」。老後の資産形成にも有益だと言われていますが、本当に投資信託でお金を増やすことはできるのでしょうか。

この連載では、金融商品の斡旋や販売をしない中立的なお金の学校ファイナンシャルアカデミーが、投資信託の「よくある落とし穴」の中身を分解しながら、着実に資産形成をするためのヒントをお伝えします。

今回は多くの人が落ちてしまう「ランキングの落とし穴」について深掘りしていきましょう。

  • ランキング上位の商品は何が危険?

定番の音楽ランキングから、本や家電の売れ筋ランキングに至るまで。たくさん商品があるところには、必ずと言っていいほど「ランキング」が存在します。

現在、約6,000本もの商品が販売されている投資信託の世界にも当然ランキングがあり、窓口で「こちらの商品は人気ランキング上位ですから…」とおすすめされたり、ネット証券ユーザーであれば、ログイン後のページの目立つ位置に掲載されたランキング結果をヒントに、購入する商品を決めている人も少なくないと思います。

ですがこのランキングは、成果を出すにあたって、実は落とし穴にもなることもありえるのです。売れている商品なのに成果が出ないとは、一体どういうことなのでしょうか。

その商品はなぜ売れるのか、2つの理由から考える

成果が出ない理由は「なぜその商品が売れるのか」を考えると明白です。販売ランキングの上位ということは、窓口にしろ、インターネットにしろ、その金融機関が力を入れて販売したという結果でもあります。

ではなぜ、金融機関は特定の商品に対して力を入れて販売するのでしょうか。答えは簡単。その金融機関にとってメリットが大きい、つまり得られる手数料が高いからです。

試しにインターネットで、いくつかの証券会社の販売ランキングを見てみると、ランキング結果が各社で大きく異なっていることに気づくことができるでしょう。もともと扱っている商品も証券会社によって違うのですが、ここまで上位の商品がバラバラだと、発表主体の思惑がランキングに何かしら反映されている、ということがよく理解できると思います。

金融機関が受け取る手数料が高いとどうなるのでしょうか。これは前回もお伝えしましたが、私たちにとっては、イメージしていたよりも成果が出ないということにつながるのです。

またランキングは怖いもので、一度上位に入ってしまえば、今度は「ランキング上位だから」という理由で、成果が出るかどうかに関係なく、その商品がますます売れていくのです。

もちろんランキング上位に、私たちにとっても良い商品が入ることはあります。ですが、家電でもレストランでも普段からランキング上位のものを選ぶ傾向が強い人は、投資信託の販売ランキングに関しては「金融機関が頑張って売った結果だ」「ランキング上位だからますます売れたんだ」「つまり成果が出るかどうかは別の話だ」と捉えておくといいかもしれません。

人気ランキング・販売ランキングの結果だけに頼って選んだがために実際には成果が出ない商品を選んでいた、ということを避けられると思います。

アワードやブロガーランキングなども要注意

投資信託ランキングは、各金融機関が独自に行うものに限ったものではありません。最近では金融機関の垣根を超えたようなアワードや、個人ブロガーによるランキングも存在します。

これらについても、結果を鵜呑みにすることは危険です。もちろん、その中には実際によい商品もたくさんあります。ですがそうとは言い切れない商品も。過去には、鳴り物入りで登場し、アワードでも入賞したけれど、結果的に運用成績がふるわなかった、という商品も存在しました。

ファイナンシャルアカデミーの授業では、投資信託を選ぶ際の基準のひとつとして、商品の運用期間が3年以上のものを選ぶように伝えています。ですので、もしアワードを受賞した商品であっても、選ぶなら最低でも3年以上運用している商品であることが大前提。そのうえで、そのアワードにおける選定基準がどのようなものであるのかをしっかり読み込んでから判断することが大切です。

私たちにとって大切なことは、自分自身で良い投資信託を選べる力を身につけ、ランキングではなく、自分の基準に沿って商品を選ぶことなのです。

次回は多くの人が気になる「iDeCoの落とし穴」についてお話しします。

ファイナンシャルアカデミー

お金の教養を身につけるための「総合マネースクール」。2002年の創立以来、東京校・大阪校・ニューヨーク校・WEB受講を通じて19年間で延べ60万人が、貯蓄や家計管理といった生活に身近なお金から、資産運用、キャリア形成、人生と社会を豊かにするお金の使い方までを学んでいる。現在、全くの初心者でも投資の基礎知識をわかりやすく学べる「株式投資スクール体験セミナー」「投資信託スクール体験セミナー」などを無料提供している。