数ある投資の中でも、少額から始められ、郵便局や銀行でも買える、といった敷居の低さから、多くの人の注目を集める「投資信託」。老後の資産形成にも有益だと言われていますが、本当に投資信託でお金を増やすことはできるのでしょうか。

この連載では、金融商品の斡旋や販売をしない中立的なお金の学校ファイナンシャルアカデミーが、投資信託の「よくある落とし穴」の中身を分解しながら、着実に資産形成をするためのヒントをお伝えします。

連載3回目の今回は、投資信託に興味のある人なら一度は利用を考える「iDeCo(イデコ)」の落とし穴について勉強していきましょう。

  • 意外と知らない、iDeCoのデメリット

そもそもiDeCoって何?

みなさんは、iDeCoの愛称で知られる「個人型確定拠出年金」を活用していますか? iDeCoとは、簡単に言えば、自分でお金を積み立てて作る年金制度のこと。20歳以上60歳未満の人なら、会社員でも公務員でも主婦でも原則誰でも加入することができます。

積み立てる方法は、元本保証型の預金もあれば、元本が保証されていない投資信託もあり、自分で方法や商品を選ぶことができます。

今回の連載のテーマは「投資信託」ですが、「iDeCo=100%投資信託」ではないので、誤解のないよう読み進めてください。

iDeCoのメリットとして謳われるのが「節税効果」。運用中の利益には税金がかからず、運用したお金を受け取る時も税金が安くなります。でも最もインパクトが大きいのが、「掛金が全て、所得控除になる」ということ。具体的にシミュレーションしてみましょう。 例えば、企業年金制度のない会社に勤める年収600万円の人が、毎月コツコツ1万円、年間で12万円を拠出したとします。実際には他の控除の状況などにもよりますが、所得税率が20%だとすると、12万円✕20%で2万4,000円の節税が可能になります。掛金12万円に対して2万4,000円の節税効果が得られるのは大きいですよね。

お金の学校目線で伝えたい「iDeCoの落とし穴」とは

しかし、その一方で、iDeCoはどんな人にでも手放しにお勧めできるものではない、という実情もあるのです。普段私たちが受講相談を受ける中でも、iDeCoに対して勘違いをしていたり、落とし穴の存在に気付かないままに始めようとしている人にかなりの頻度で出会います。中には、 iDeCoを始めなければ良かった、という人も。では、iDeCoの落とし穴とは一体何なのでしょうか。

自分のお金なのに60歳まで引き出しNG。中途解約もNG。

iDeCoの最大のデメリットは「積み立てたお金が60歳まで、原則引き出せない」ということ。自分のお金であるにも関わらず、受け取り年齢になるまで引き出すことができないのです。極端な例ですが、あなたが借金まみれになろうとも、自己破産しようとも、iDeCoは中途解約ができないのです。

ただし、月々の支払いが厳しい場合は、掛金の額を年に1回までは変えたり、積立をやめたりることができます。つまり、これまでに積み立てたお金を引き出すことはできないものの、毎月の積立をやめることは可能です。

ですが、ここでもデメリットがあります。それが「口座管理のための手数料がずっとかかり続ける」ということです。

長期で資産形成のつもりが、長期で資産を減らしてしまうことも。

金融機関にもよりますが、iDeCoはまず加入時に手数料が2,829円~3,929円かかり、その後も口座を保有し続けている限り、口座管理手数料が毎月かかり続けます。実はこれが少し厄介なのです。

たとえばあなたが海外移住をして、住民票を日本から海外に移したとします。一部の例外を除き、この時点でiDeCoは利用できなくなるのですが、実は先ほど伝えた「60歳まで中途解約不可」というルールは適用され続けます。

つまり「積み立てはできないけれど解約もできない。だから口座管理手数料は払い続けないといけない」という事態に陥るのです。

海外移住をしなくとも、例えば教育資金としてお金が必要な時や、マイホームを購入するのにもう少し頭金が必要というときに、積み立てたお金が存在するにも関わらず引き出して使うことができないということは、ある意味本末転倒とも言えます。

そのうえ、積立はやめても口座管理手数料が60歳までずっとかかり続けるという現実。iDeCoを検討するなら、節税効果だけに目を向けるのではなく、こうしたデメリットについても事前によく理解する必要があると言えるでしょう。

手数料は徹底的にチェック。目的にあっていれば活かせる制度

こうしたことを踏まえると、もしiDeCoを始めるなら「老後までは絶対に手をつけない」「60歳まで引き出せなくても困らない」という余剰資金で行うことが鉄則。そして金融機関ごとに大きく異なる手数料についても数社を比較した上で、金融機関を選ぶことが不可欠です。

iDeCoの目的はあくまで「自分年金づくり」。教育資金やマイホーム資金など、数年後に使う費用を貯めるためには全く適していません。しかし、老後の自分年金づくりという明確な目的があり、かつ資産をしっかり増やせる良い投資信託を選ぶことができれば、節税効果の大きい、お得な制度になります。

わかりやすい宣伝文句に踊らされることなく、知識をしっかりと身につけ、何のために行うかを明確にした上で賢く付き合っていくことが大切です。

次回は iDeCoとあわせて多くの人が気になる「NISA・つみたてNISAの落とし穴」についても勉強していきましょう。

ファイナンシャルアカデミー

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