数ある投資の中でも、少額から始められ、郵便局や銀行でも買える、といった敷居の低さから、多くの人の注目を集める「投資信託」。老後の資産形成にも有益だと言われていますが、本当に投資信託でお金を増やすことはできるのでしょうか。

この連載では、金融商品の斡旋や販売をしない中立的なお金の学校ファイナンシャルアカデミーが、投資信託の「よくある落とし穴」の中身を分解しながら、着実に資産形成をするためのヒントをお伝えします。

連載4回目の今回は、投資信託に興味がある人は必見!「NISA(ニーサ)」の落とし穴について勉強していきましょう。

  • 「NISA」が万能ではない理由

そもそも「NISA」って何?

前回の連載で扱ったiDeCo(イデコ)と共に、さまざまな記事や広告でよく見かけるNISA(ニーサ)。耳馴染みの良い響きもあり活用していない人でも、名前だけは聞いたことがあるのではないでしょうか。しかしこのNISAも、実は勘違いが非常に多い制度なのです。

NISAの正式名称は「少額投資非課税制度」。文字通り「少額投資の場合、利益が出ても非課税にしますよ」という制度です。私たちが受講前の方の相談を受けていると、NISAという金融商品があるのだと勘違いしている人にたまに出会いますが、NISAはあくまで税金がお得になる「制度」のこと。NISA口座を使って投資をした利益には税金がかからない、ということであって、何かお買い得な商品の名前ではありません。

投資をしている人にとっては当たり前のことですが、現在日本では、株式投資でも投資信託でも、投資で得た利益には20,315%の税金がかかります。仮に利益が50万円出た場合、そのうちの約2割、10万円ちょっとは税金としてひかれてしまうということです。これがNISA口座で運用していた場合、50万円の利益がまるまる自分の手元に残る、というわけです。

NISAには現在、主に「NISA」と積み立て専用の「つみたてNISA」が存在し、投資信託はどちらでも運用することが可能です。現行の内容としては「NISA」は原則として最大5年間使えて、年間120万円までの投資に対して、出た利益が非課税になりますよという制度です。それに対して「つみたてNISA」は、投資金額の上限は年間40万円ですが、その代わり非課税期間が20年間という長期間になっています。

ちなみにNISAには、前回学んだiDeCoにあった「60歳まで原則引き出し不可!」といったルールは一切ないので、使い勝手は良い制度だと言えるでしょう。

良い商品を選べない人にとってはデメリット! 「NISA」の落とし穴とは。

NISAのメリットは、利益に対して課税されないことですが、その反面、利益が出ていない場合には、デメリットにつながる可能性があるのです。

まずは「損益通算ができない」ということ。損益通算とは、一定期間の利益と損失を相殺することを言います。

例えばNISA口座ではなく、一般的な証券口座の場合、A証券での口座で20万円利益が出て、B証券の口座で20万円損失が出たとします。この場合、損益通算をすることで、A証券の口座で出た20万円の利益にかかるはずの税金が、B証券での口座の20万円の損失と相殺になり、税金をかからないようにすることができるのですが、もし損失が出たB証券の口座がNISA口座だった場合、損益通算ができないため、A証券の口座での利益に対する税金を納める必要がある、ということです。

もう一つ大きな問題になりうるのが、NISAの非課税期間が終わるタイミングで、課税口座に移管する場合です。課税口座に移管した際の金額によっては、実際には利益が出ていないにも関わらず、ケースによっては売却時に納税しないといけない事態が発生します。

少し具体的に説明しましょう。例えば100万円分購入した投資信託が、課税口座移管時に70万円まで値下がりしていたとします。移管後、少し持ち直して90万円にまで価格が戻ったので、いざ売却しようとした場合、移管時の金額である70万円で購入したのと同様に扱われることになり、この場合、なんと利益が20万円出たとみなされてしまいます。

課税口座であれば、20万円の利益に対しては、約4万円の税金の支払いが必須。つまり実際には、10万円損失が出ているにも関わらず、約4万円の税金を支払わなければいけない、という事態に陥るのです。

「NISA」も「つみたてNISA」も、とにもかくにも利益が出てはじめてメリットを享受できる制度。「貯蓄から投資へ」の潮流の中で、NISAはあたかも万能な制度のように広告で謳われることもありますが、あなたに良い商品を選べる知識があり、かつ利益が出るタイミングで売却できてこその制度だということを、頭に入れておきましょう。

それではいよいよ次回から、投資信託を選ぶ際に必要な知識を一つずつ勉強していきましょう。

ファイナンシャルアカデミー

お金の教養を身につけるための「総合マネースクール」。2002年の創立以来、東京校・大阪校・ニューヨーク校・WEB受講を通じて19年間で延べ60万人が、貯蓄や家計管理といった生活に身近なお金から、資産運用、キャリア形成、人生と社会を豊かにするお金の使い方までを学んでいる。現在、全くの初心者でも投資の基礎知識をわかりやすく学べる「株式投資スクール体験セミナー」「投資信託スクール体験セミナー」などを無料提供している。