農林中央金庫グループが、デジタル証券(セキュリティ・トークン=ST)事業に初参入する。農中信託銀行、ケネディクス(KDX)、KDX STパートナーズ(KST)、SBI証券、Progmatの5社は11月5日、デジタルアセット発行・管理基盤「Progmat(プログマ)」を活用した不動産STの案件化に向けて協業すると発表した。

不動産STは、不動産を裏付けとする権利をブロックチェーンなどの技術を使ってデジタル証券化したもの。今回の協業では、農林中央金庫グループとして初となる不動産ST案件の組成を目指す。

SBI証券が販売、ケネディクスが不動産を供給

今回の協業では、各社がそれぞれの専門分野を生かして不動産STの組成・販売を進める。

ケネディクスはスポンサー兼アレンジャーとして対象不動産の供給とスキームの組成を担当。KDX STパートナーズはアセットマネージャーとして、ST組成後の運用や投資家への情報開示などを担う。

農中信託銀行は、受益証券発行信託の受託者として信託財産や受益権原簿を管理する。SBI証券はSTの引受・販売を担当し、幅広い個人投資家への商品提供を目指す。

Progmatは、農中信託銀行とSBI証券に「Progmat SaaS」を提供。同サービスを利用することで、金融機関は自社でブロックチェーンのノードを構築することなく、デジタル証券の原簿管理やカストディ業務などを行える。

不動産STを新たな投資機会に、2030年に市場規模2.5兆円を目指す

農中信託銀行は2025年4月にProgmatへ出資しており、従来は大型の機関投資家向けに提供されていた金融商品や、農林水産業に関連する資産のデジタル化などを検討してきた。

一方、ケネディクスとProgmatは2021年7月、国内初の公募型不動産STで協業した実績を持つ。2026年7月には、パブリックブロックチェーンとステーブルコインを活用した新たなデジタル証券スキームも発表している。

ケネディクスとKDX STパートナーズは、不動産STをREIT(不動産投資信託)や私募ファンドに次ぐ「第三の事業の柱」と位置付け、2030年までに市場全体で2.5兆円の不動産がST化されることを目指している。

SBI証券も今回の協業を通じて、不動産をはじめとする多様な資産を対象としたST商品の取り扱いを拡充し、個人投資家の投資機会を広げていく方針だ。

なお、Progmatが公表した2026年10月末時点の国内ST市場データによると、ST案件の残高総額は約9,104億円、累計発行額は約4,673億円(102案件)。参入証券会社は16社となっている。