『救命病棟24時』第1話で描かれた爆発事故の空撮映像は、実は生成AIによって作られた架空の風景だった――フジテレビは、ドラマ制作におけるAI活用の実験場「AI Sandbox」を設置。一部の映像制作工程では作業工数を最大70~80%削減する効果を確認しており、2027年10月をめどに、同局が制作するすべてのドラマでAIを活用できる体制を目指す。

  • 『救命病棟24時』第1話より(空撮自体がAI生成した架空の風景。そこにさらに煙を合成)

    『救命病棟24時』第1話より(空撮自体がAI生成した架空の風景。そこにさらに煙を合成)

『救命病棟24時』で爆発事故の空撮映像をAI生成

同局は今年7月の組織変更で、デジタル戦略統括室内に「AIセンター」を新設。そのもとで、ドラマ制作部門や技術部門、AI関連企業のANDENTなどによるプロジェクトチームを結成し、9月から「AI Sandbox」の運用を開始した。

現在、地上波のゴールデン・プライム帯で年間16本の連続ドラマを制作する同局では、実写撮影やVFX、CGなどの従来の手法に生成AIを加え、作品やシーンに応じて最適な制作方法を選択。映像表現の幅を広げながら、現場の負担軽減や安全性の向上を目指している。

その具体例が、13年ぶりに復活した『救命病棟24時』だ。第1話に登場した爆発事故のシーンでは、空撮映像そのものを生成AIで作成。実在しない架空の風景に煙を合成することで、事故現場を表現した。

また、医療シーンの細かな映像処理にもAIを活用。撮影前には監督が思い描く映像をAIで可視化し、制作・技術スタッフが完成イメージを共有した上で、実写撮影と映像処理をどう組み合わせるか検討しているという。

実際の制作を通じた検証では、生成AIを活用した一部の映像制作工程において、従来の手法と比べて作業工数を最大70~80%削減できることも確認した。ただし、これは特定の工程における検証結果であり、作品全体の制作費や制作工程全体の平均削減率を示すものではない。

10月期から毎クール1本以上のドラマを「AI強化枠」に設定

「AI Sandbox」の技術統括を務めるフジテレビの真崎晋哉氏(テックアートデザイン局長補佐)は、「すべてをAIで作るのではなく、従来のVFXなどと組み合わせ、作品にとって最も良い方法を制作スタッフと一緒に考えています」と説明。「効率化だけでなく、映像表現の幅を広げ、その経験や知見を社内に蓄積することが、『AI Sandbox』の大きな目的です」としている。

また、『救命病棟24時』の足立遼太朗プロデューサーは「特に災害シーンや海外設定のシーンでは、想像を超える映像クオリティが実現しています」と手応え。「AIは単なる効率化にとどまらず、映像表現の可能性を大きく広げる技術だと実感しています」と語った。

フジテレビでは、今年10月期から毎クール1本以上のドラマを「AI強化枠」に設定し、実際の作品制作で活用方法を検証。27年10月をめどに、同局が制作するすべてのドラマで、作品やシーンに応じてAIを活用できる体制を整える方針だ。

その後はフジ・メディア・ホールディングス傘下の映像関連企業にも取り組みを広げ、2029年度にはグループ全体で国内トップベンダーレベルのAI活用機能を保有することを目指すとしている。

【編集部MEMO】
『救命病棟24時』
1999年にスタートしたフジテレビ系の医療ドラマシリーズ。救命救急の現場で命と向き合う医師や看護師たちの姿を描く。2026年10月、2013年の第5シリーズ以来13年ぶりとなる第6シリーズがスタート。江口洋介演じる天才救命医・進藤一生と、松嶋菜々子演じる救命医・小島楓が16年ぶりに再集結した。木戸大聖、萩原利久、白石聖、宮野真守、八嶋智人、沢村一樹らが出演する。

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