特撮テレビドラマ『仮面ライダーカブト』(2006年)の放送20周年を記念したVシネクスト『仮面ライダーカブト20th 天を継ぐもの』が、2026年11月6日より期間限定上映されている。宇宙から飛来し、人間の姿や記憶をコピーする侵略者「ワーム」と戦うため、昆虫型変身アイテム・ゼクターに選ばれた「マスクドライダー」たちの群像劇を描いたテレビシリーズから20年。かつてのマスクドライダー(ガタック/加賀美新、ドレイク/風間大介、キックホッパー/矢車想)たちがふたたび激しい戦いの道を歩み出す。
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石田秀範(いしだ・ひでのり)。1962年生まれ。専門学校卒業後、東映テレビ・プロ作品で助監督を務め、1991年『特救指令ソルブレイン』第19話で監督デビュー。『仮面ライダークウガ』(2000年)から始まる平成仮面ライダーシリーズで多くのエピソードを演出し、綾野剛、竹内涼真をはじめとする若い俳優たちを鍛えあげた。『仮面ライダーアマゾンズTHE MOVIE 最後の審判』(2018年)『がんばれいわ!!ロボコン ウララ〜!恋する汁なしタンタンメン!!の巻』(2020年)といった劇場作品も手がけている。
Vシネクスト上映を記念して、ここでは本作のメガホンを取った石田秀範監督にご登場いただき、20年前の『仮面ライダーカブト』テレビシリーズと本作にどんな変化があるのか、そして、当時若手だったキャスト陣(佐藤祐基、加藤和樹、徳山秀典)と再会したときの心情、さらには、次世代を担う若いキャスト(荒木飛羽、小寺結花)の印象について話してもらった。
「カブトらしさって何だろう」と理解をしていない
――今回の『仮面ライダーカブト』20周年記念作品を演出してほしいというオファーを受けたときの、石田監督の率直なお気持ちはいかがでしたか。
『カブト』と聞いて「今さら、何を撮るんだ。(キャストは)みんなオヤジだぜ?」ってところかな(笑)。
まあ、わざわざ僕に監督をやってくれとお話が来たんだから、ありがたい話ですよね。オファーをもらって、嫌だとは言わないですし、今までそんな風にしていただいた仕事を断ったことも、ほとんどありません。よっぽど合わないな、無理だなという依頼については、その限りではないですけどね。
――『仮面ライダーカブト』の新作を作るにあたって、石田監督の思う『カブト』らしさはどんなところに込められましたか。
その「らしさ」というのが僕にはわからないんですよね。特撮ファン、仮面ライダーファンの方々は、カブトならカブトらしさ、クウガならクウガらしさを求めるんですけど、僕にはそういう「らしさ」を意識的に出すことができません。
自分自身が「カブトらしさって何だろう」と理解をしていないですから。常に退いた目で作品を見ているので、コアなファンのみなさんからはときどきご批判をいただくんです。ある意味、キャラクターに対する愛情が薄いのかもしれません。『カブト』に限らず、あらゆる作品に対する姿勢は同じです。
――今回のVシネクストで、石田監督から特にこうしたいという要望はあったのでしょうか。
もともと、俳優サイドから「こういうことをやりたい」と要望があったことからスタートした企画なので、僕が声をかけてもらって参加し始めたときには、主役の3人、つまり加賀美(新)、(風間)大介、矢車(想)をどのように描くか、という骨子のところが決まっていました。20年を経た彼らの成長物語ってことか……と理解したんです。
――『カブト』撮影当時と現在(2026年)を比べて、撮影環境はどう変化したと思いますか。
そんなには変わっていませんでした。スタッフは20年前を知る人がたくさんいたし、現場の空気がわからない俳優がいたわけでもなかった。作品作りで不都合やストレスを感じたことはなかったです。
ただ、20年前と現在とで、大きく変わったのは社会のあり方でしょうね。仮面ライダーシリーズというくくりでも、20年前ではOKだった表現、描写が今ではNGになります。また、現場にいる何十人ものスタッフを取り仕切る、人の扱い方もずいぶん変わりましたね。
個人的に「こうしたい」と思っても、それは今の基準だと許されない。悪いことも良いことも、すべて配慮が必要になりました。こう言われたら人はどう思うだろうか、こんなことを言われたら嫌だよねと、何かを言う前に自分でわかるようになりましたよ、この齢になって(笑)。加賀美、大介、矢車だけじゃない、石田の成長物語でもありました。
本当に、キャラクターの成長を描きながらも、作り手全員の成長も見せなきゃいけないというか、完成した映像を通じて、そういう部分が見えてきたらいいなと思いながら撮影していました。キャストはもちろん、キャメラマンやエディターも20年前と同じ仕事はしていない。ものの見方も変わったりして、日々成長しています。そんなところも含めて、出来上がった作品は「20年後の『カブト』」になっているかもしれませんね。
――テレビシリーズからの印象で、『カブト』ではシリアスなシーンの中にいきなりギャグが挿入されたりするところがあり、それが作品の持ち味になっていました。Vシネクストでも、随所にシリアスとギャグの絡み合いといいますか、キャラクター同士の濃い掛け合いが観られますね。
そういうのは僕の思いつき、ひらめきですね。「カブトっぽい」というより「石田っぽい」ところかな。シリアスな場面でギャグを入れたりするのも、僕自身の経験から来ていることが大きいですね。
人間、生活していてどんなに厳しい境遇に追い込まれたりしても、一瞬「心がゆるむ」ことってあると思うんです。楽しいだけ、厳しいだけじゃない、生きているからにはいろんな感情が混在している。そういうところに僕の人生観が出ていると思います。
「最近の若い人」をNGワードに、20年で変わった若手俳優との向き合い方
――仮面ライダーガタック/加賀美新役の佐藤祐基さん、仮面ライダーキックホッパー/矢車想役の徳山秀典さん、仮面ライダードレイク/風間大介役の加藤和樹さんは20年前からのお付き合いで、監督との信頼関係が築かれていると思います。一方で、次世代を担うフレッシュなキャスト、加賀美結役の荒木飛羽さん、天道ヒカル役の小寺結花さんの印象はいかがでしたか。
よく「最近の若い人」って言いますけど、そのワードをNGにしていました。社会の変化に合わせ、今を生きる世代の考え方も変化していますから、古い世代もそこを理解しないといけません。
若さゆえの未熟さはありますが、自分なりの考えをしっかり持っている。それを頭ごなしに否定してはいけない。悪いと決めつけてはいけないんです。そもそも、自分の若いころを思い出してみなさいって話ですよ(笑)。僕が彼らと同じ年齢のころ、どんなことを考えてたかな……と思い出すと恐ろしいですし、荒木、小寺の2人がいかに立派なのか、感心してしまいます。僕らよりよっぽど立派。しっかりしています。監督としては、若い世代の人たちの感じ方、考え方を後押ししないといけない。彼らの背中を押してあげよう、そういう立場を意識しました。
――荒木さん、小寺さんの演技を観て感心した部分、またはこれから伸びていくだろうと思われる部分があったら教えてください。
物怖じしないところですね。そしてマジメ。逆に言えば、芝居に遊びがない……いや、遊べないんですね。昔の若手俳優は、演技をしながらどれだけ遊ぶことができるか、自分の個性を出せるか、が勝負だったんですが、今ではそんなスタンドプレーをしたら、各方面から怒られたりする、そんな空気があるようです。最初、荒木も小寺も芝居がカタかったのは、そういう空気のせいでした。失敗すると怒られるかもしれない、と思い、失敗しないような演じ方になっていた。
オーディションをしたときからそんな雰囲気が見て取れたので、撮影現場では可能な限り彼らの努力を褒めようと思いました。たとえ演技が完璧じゃなくても、努力して臨む姿勢はすばらしいですからね。前の晩、寝ないで台本を読んできたんだろうなとか、現場ではこういう芝居をしようと考えているんだなとか、日々の態度でわかるんです。努力しているところを褒めて、さらに演技を頑張ってOKが出たら、そこでもちゃんと褒める。そうやって、若い俳優に自信をつけてもらいたかった。それが僕たち大人の務めだと思ったんです。
――20年前に荒木さん、小寺さんたちと同じポジションだった佐藤さん、加藤さん、徳山さんとは、石田監督からの接し方が違っているわけですね。
あの頃の自分とは真逆! 別人ですね。佐藤や加藤、徳山は「なんで監督はあの2人(荒木、小寺)をえこひいきしてるんだ。俺たちのときとはぜんぜん違うじゃないか」と不満に思っているかもしれない(笑)。
20年前だと、佐藤、加藤、徳山、もちろん水嶋(ヒロ:仮面ライダーカブト/天道総司役)も、あいつらは僕に怒られると喜ぶんです。みんなギラギラしていて、褒められて喜ぶんじゃなくて、怒られて頑張るタイプが揃っていました。昔と今は、そんな部分も違います。逆に、怒られたりしないと彼らは「相手にされてないんじゃないか、無視されているんじゃないか」と心配する。だから、わざと台本に書いていない芝居をするとか好き放題やって、僕もずいぶん怒っていましたね(笑)。
「どう感じるかは自由」石田監督が語る“見どころ”とは
――Vシネクスト上映にあたって、石田監督から特に「この場面を観てほしい」というポイントはありますか。
こういうインタビューだと、みんなあなたのように「見どころは」と質問してくるんです。でも、作るほうが観てくださる方々に向けて、ここを観ろあそこを観ろというのは、非常におこがましいもの。
どこを観て、どう感じるのかは、映画をご覧になる人の自由ですから、作り手がああだこうだと語るのは無礼千万だと。作品を観た方が、心に留めてくださった部分、それこそが作り手の「観てもらいたかったところ」なんじゃないでしょうか。
――恐れ入りました! 最後にお尋ねしますが、今後また「仮面ライダー」作品の監督をやってもらいたいというオファーが来れば、お引き受けされますか?
お声さえかけてもらえれば、どんな作品でもやりますよ。ただ、声をかけてくださるなら早いほうがいいです。ぼやぼやしていたら天国からのオファーがかかってしまいますからね(笑)。
Vシネクスト『仮面ライダーカブト20th 天を継ぐもの』は、11月6日(金)より新宿バルト9ほか期間限定上映、2027年2月10日にBlu-ray&DVDを発売する。
Vシネクスト『仮面ライダーカブト20th 天を継ぐもの』
かつての戦いから20年。天道総司の行方は、いまもわからなかった。
そして人類とワームは、共存する道を歩んでいた。
しかし、なぜかZECTは秘密裏に、新たなマスクドライダーシステムを開発していた。
その資格者として選ばれたのは、加賀美新の息子で、高校生の結(ゆい)。
ZECTの三島正人は結との接触を図るが、そこに立ちはだかったのは、結のクラスメート・天道ヒカルだった。
一方、田所修一から情報を得た加賀美新は、ZECTの陰謀に立ち向かうべく、かつての仲間たちのもとを訪ねるが、風間大介も、矢車想も、加賀美への協力を拒否した。
たったひとりでも、敵と戦う覚悟を決めた加賀美。
そんな彼の前に、意外な人物の影が……!
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