WOWOWで11月8日より放送・配信スタートする『連続ドラマW 恩田陸 ユージニア』(毎週日曜22:00~、全6話 ※第1話無料放送)。恩田陸氏が2005年に発表した小説を原作に、名家で17人が死亡した毒殺事件と、その後も事件に翻弄される人々を描くダークミステリーだ。

本作の主人公・雑賀満喜子を演じるのは、岸井ゆきの。11歳のときに事件を目撃し、後に事件を題材とした小説を発表する満喜子は、話す相手や状況によって声色や話し方が変わるという、つかみどころのない人物でもある。

そんな満喜子を演じるにあたり、岸井は「自分が考えてきたことが正しいとは思わない」と語る。役を誰よりも理解したいという思いと、自分の解釈に固執しない柔軟さ。その両方を大切にする岸井に、満喜子という人物へのアプローチや、他者を理解すること、そして日々の記録について話を聞いた――。

  • 岸井ゆきの 撮影:上岸卓史

    岸井ゆきの 撮影:上岸卓史

「すごく面白いけど、難しい話が来たよ」

台本を受け取った際、「マネージャーさんから“すごく面白いけど、難しい話が来たよ”と言われました」という岸井。かねてより、恩田陸氏の小説の愛読者で、脚本を手掛ける安達奈緒子氏のファンだったこともあり、ドラマへの参加を望む気持ちは早くからあった。

「安達さんの脚本だと伺い、読む前からすでに“参加したいかも…!”と思っていました。いざ台本を読み始めると、“なんだ、これは…!?”と。物語の進み方も面白いですし、過去が次第に暴かれていく感じも、断片的に入ったと思ったら、その記憶の続きがあったりして、自分自身が『ユージニア』の世界に巻き込まれていく感覚がありました。“これをどう演じるんだろう?”と興味が湧いたのと同時に、自分がやるとなると背負うものが大きいとも感じましたが、それでもやりたいと思いました」

その後、改めて原作小説も読んだという岸井。「脚本と小説では、自分のなかでの物語の立ち上がり方が大きく違っていた」と振り返る。

「台本を読むと、普段からやっている自分の経験値があるからこそ映像が立ち上がっていくんです。でも、小説を読んだときは、文字を読むことによる視覚的な効果がすごく面白い。ドラマで描かれているものとはまた違う“自分の中の真実”や、記憶されたものが記録とどれだけ違うのかという部分は、小説の方が多いと感じました」

岸井が演じる雑賀満喜子は、幼い頃に目撃した毒殺事件から10年後、大学の卒論として事件関係者へのインタビューを始め、その後、事件を題材にした小説を発表する。しかし、彼女自身もまた、事件の記憶から逃れられずにいる。

つかみどころのない人物へのアプローチ

役作りにあたっては、20代と40代、それぞれの満喜子が抱えるものを、独自のイメージで捉えた。

「20代の満喜子は、どうしたらいいかわからない、迷子のような感じがするんです。事件が起きていなかったら…という思いもあるし、事件によって自分や周りからの見え方が変わってしまったことにも囚われている。いろいろなことが塵になって、まだ舞っているようなイメージがありました。一方、40代の満喜子は、舞っていたはずの砂が全部固まって、泥団子になってしまったような感じ。もっと固くなってしまったけれど、材料は同じなんです。“これがあったからこその自分である”という意識が、昔よりさらに強くなっている。小説を書き上げ発表した後も、まだ事件に執着しているところがあって。自分で新しく書き直しているような感覚があるんだと思います」

満喜子は、話す相手によって声色や話し方が変わる。演じるうえでは、その変化をあらかじめ細かく決めるのではなく、相手と向き合ったときの感覚を大切にしたという。

「たとえば、家族と一緒にいるときと、いま取材の場で皆さんの前でお話ししているときとでは、同じ私自身であっても全然違いますよね。状況に応じて変わるというのは、多かれ少なかれ誰にでもあると思うんです。ただ、満喜子にとっては、その意味がもっと広い。“この人と話すときはこうしよう”と自分で考えて作ると、ちょっとチープになってしまう気がしたので。本(脚本)読みではあまり色をつけず、実際に現場に行って、その人と会ったときの感覚で変えていけたらいいなと思っていました」

実際の撮影では、タバコを吸う相手に合わせて、普段は吸わないのに吸い始めたり、話しているうちに急にタメ口になったりする満喜子の変化を自然に表現できたそう。

「普通のドラマや映画では、“この子だったらこんなことはしない”と、自分が演じるキャラクターについてあれこれ頭で考えながら選択肢を見つけていくことの方が多いんです。でも今回は、会ったときの感じや、その日の天気でも変わっていく要素があって。自分で“チェンジしなきゃ”と思わない方が面白いんだろうなと感じました」