日銀による利上げがつづき、銀行の普通預金にも以前より多くの利息がつくようになりました。一方で、「普通預金のままでいいの? 」「定期預金や個人向け国債に移したほうが得? 」と迷っている人も多いのではないでしょうか。
そこでこの記事では、普通預金・定期預金・個人向け国債の3つを金利・安全性・引き出しやすさの視点から比べ、目的に合わせてお金をどこに預ければよいかを解説します。
なぜ預け先選びが大切なのか
長い間、日本の預金金利はほぼゼロの状態がつづいてきました。2024年3月に日銀(日本銀行)がマイナス金利を解除する前、メガバンクの普通預金金利はわずか0.001%でした。たとえば100万円を1年間預けても、利息は税引前で10円にすぎません。
その後、日銀は段階的に政策金利を引き上げ、2026年9月には1.25%程度とすることを決めました。これを受け、銀行の預金金利も上昇しています。メガバンク3行の普通預金金利は、2024年8〜9月に0.1%となってから引き上げがつづき、2026年11月2日からは0.5%になります。ゆうちょ銀行も、11月9日から通常貯金の金利を0.5%に引き上げる予定です。
金利が0.5%なら、100万円を1年間預けたときの利息は税引前で5,000円です。これはマイナス金利時代の500倍にあたり、「銀行に預けても利息はつかない」という常識は過去のものになりつつあります。
こうした金利の上昇によって大切になったのが、「お金をどこに預けるか」という預け先選びです。金利が上がっているのは普通預金だけではなく、定期預金や個人向け国債も同じだからです。
金利がほぼゼロだった時代は、どこに預けても受け取れる利息はわずかで、預け先による差も小さいものでした。しかし今は、普通預金・定期預金・個人向け国債のどれを選ぶかによって、利息にはっきりとした差が出ます。100万円を1年間預けるだけでも、1万円以上の差がつくこともあります。
ただし、預け先を選ぶときに見るべきなのは、金利だけではありません。元本の安全性や、必要なときにすぐ引き出せるかどうかも含めて考えることが大切です。
普通預金・定期預金・個人向け国債の仕組みと特徴
普通預金・定期預金・個人向け国債は、どれもお金を置いておくことで利息を受け取れる点は同じです。しかし、金利の決まり方や、預ける期間が決まっているかどうかなど、仕組みは商品によって異なります。預け先を選ぶ前に、まずは3つの仕組みと特徴を押さえておきましょう。
普通預金 - いつでも出し入れできる生活の基本口座
普通預金は、いつでも自由にお金を預けたり引き出したりできる預金です。給与や年金の受け取り、公共料金や家賃の引き落としにも使えるため、日々の暮らしに欠かせない口座といえるでしょう。
金利は各銀行が決めており、世の中の金利の動きに合わせて見直されます。前述のとおり、日銀の利上げに合わせて普通預金の金利が引き上げられてきたのはこのためです。反対に、世の中の金利が下がる局面では、普通預金の金利も下がる可能性があります。預けている間も金利が変わりつづける点が、普通預金の大きな特徴です。
定期預金 - あらかじめ期間を決めて預ける
定期預金は、1年や3年など、預け入れる期間をあらかじめ決めておく預金です。満期日までは原則として引き出せない代わりに、普通預金より高い金利が設定されています。一般的な定期預金では、預け入れたときの金利が満期まで変わりません。
定期預金にはいくつかの種類があります。お金を一括で預ける一般的な定期預金のほか、1,000万円から預け入れができる「大口定期預金」、毎月決まった日に一定額を積み立てていく「積立定期預金」などです。積立定期預金は、進学や住宅購入など、目標額を決めてコツコツ貯めたいときに使われます。
満期を迎えたときの扱いは、契約時に選べます。元本と利息を普通預金に戻す「自動解約型」と、同じ期間で新たな定期預金をつづける「自動継続型」が代表的です。
個人向け国債 - 国が発行する個人向けの債券
個人向け国債は、国が発行する個人投資家向けの債券です。半年ごとに年2回利子を受け取ることができ、満期を迎えると元本が戻ってきます。1万円から1万円単位で購入でき、毎月発行されています。
個人向け国債には3つのタイプがあり、金利の決まり方と満期までの期間が異なります。
「変動10年」は満期が10年で、半年ごとに適用される利率が見直されます。世の中の金利が上がれば、受け取る利子も増えるのが特徴です。
一方、「固定5年」と「固定3年」は、それぞれ満期が5年と3年です。発行時に決まった利率が満期まで変わらないため、購入した時点で受け取れる利子の総額がわかります。
どのタイプでも、金利が年0.05%を下回ることはありません。世の中の金利がどれだけ下がっても、この最低金利が保証されています。ただし、発行から1年間は原則として換金できない点には注意が必要です。
3つの預け先を「金利」「安全性」「引き出しやすさ」で比較
普通預金・定期預金・個人向け国債の仕組みがわかったところで、この3つを具体的に比べてみましょう。比べる視点によって、優れている預け先は変わってきます。
金利 - もっとも高いのは個人向け国債
2026年10月時点の金利(税引前)を比べると、金利の差ははっきりしています。
メガバンクの普通預金は現在0.4%で、11月2日から0.5%になります。三菱UFJ銀行の定期預金は、1年ものが0.5%、5年ものが1.0%です。一方、10月に募集されている個人向け国債は、変動10年が2.05%(初回の適用利率)、固定5年が2.39%、固定3年が2.07%となっています。
100万円を預けた(個人向け国債は購入した)場合の1年あたりの利息を、税引前の金額で比べてみましょう。11月からの普通預金と1年ものの定期預金は5,000円、5年ものの定期預金は1万円です。これに対して、個人向け国債の固定5年は2万3,900円で、普通預金のおよそ5倍になります。
ただし、ネット銀行などのなかには、普通預金で年1%を超える銀行や、給与の受け取りなどの条件を満たすと金利が上がる銀行もあります。定期預金でも、メガバンクより高い金利を設定している銀行があります。
安全性 - どれも元本が守られる仕組みがある
普通預金と定期預金は、預金保険制度で守られています。万が一銀行が破綻しても、ひとつの金融機関につき1人あたり元本1,000万円までとその利息が保護されます。ただし、1,000万円を超える部分は、全額は戻ってこない可能性があります。
個人向け国債は預金保険制度の対象ではありませんが、元本と利子は国が責任を持って支払い、預金のように「いくらまで守られる」という上限はありません。ただし、国の信用状況が大きく悪化した場合には、支払いが滞るリスクがまったくないわけではありません。
引き出しやすさ - 自由度がもっとも高いのは普通預金
普通預金は、いつでも自由に引き出しができます。ATMやネットバンキングですぐにお金を用意できるため、急な出費にも対応できます。
定期預金は満期前でも解約できますが、多くの場合は当初の金利ではなく、銀行が定めた低い金利が適用されます。せっかくの高い金利が活かせなくなる点には注意が必要です。
個人向け国債は、発行から1年間は原則として換金できません。例外は、保有者が亡くなった場合や、大規模な自然災害で被害を受けた場合です。1年が過ぎればいつでも換金できますが、直前2回分の各利子(税引前)相当額×0.79685が差し引かれます。
目的別に選ぶ、お金の預け先
3つの預け先には、それぞれ得意なことと苦手なことがあります。どれかひとつを選ぶのではなく、「何のためのお金か」「いつ使うか」という目的に合わせて分けて考えるのがポイントです。
すぐに使うお金・もしものためのお金は普通預金
毎月の生活費や、病気・失業などの急な出費に備えるお金は、普通預金に置いておきましょう。金利は3つのなかでもっとも低いものの、必要なときにすぐ引き出せる安心感は何にも代えられません。少しでも利息を増やしたいなら、ネット銀行など、普通預金の金利が高い銀行に口座を持つのもひとつの方法です。
数年以内に使う予定があるお金は定期預金
車の買い替えや結婚、子どもの進学など、使う時期がある程度決まっているお金には定期預金が向いています。満期を使う時期に合わせておけば、中途解約で金利が下がる心配もありません。万が一急にお金が必要になったときは、金利は下がるものの、預けてすぐでも解約できます。
また、1カ月や半年といった短い期間から選べるのもメリットです。ただし、期間が短い定期預金は普通預金と金利が変わらないこともあるため、預ける前に比べておきましょう。毎月コツコツ貯めたい人は、積立定期預金を使えば、目標額に向けて自動的にお金が貯まっていきます。
高い金利で増やしたいお金は個人向け国債
少なくとも1年以上は使う予定がなく、できるだけ高い金利で増やしたいお金には、個人向け国債が向いています。元本と利子は国が支払うため、預金保険のような「1,000万円まで」という区切りもなく、1,000万円を超えるまとまったお金の置き場所としても適しています。
3つのタイプは、今後の金利の見通しや、お金を使う時期をもとに選びましょう。今後も金利の上昇がつづくと予想する場合は、半年ごとに利率が見直される変動10年が向いています。一方、購入時点の金利を満期まで確定させたい場合や、使う時期が3〜5年後の場合は、固定3年や固定5年が適しています。
用途ごとに賢く使い分けよう
金利が上がった今は、預け先によって受け取れる利息にはっきりとした差が出ます。生活費やもしものためのお金は普通預金、使う時期に合わせて準備したいお金は定期預金、高い金利で増やしたいお金は個人向け国債と、目的に合わせて使い分けることが大切です。金利は今後も変わる可能性があるため、最新情報を定期的に確認し、預け先を見直しましょう。
