伊藤匠王座に広瀬章人九段が挑む第74期王座戦(主催:日本経済新聞社・日本将棋連盟、特別協賛:東海東京証券)は、伊藤王座リードで迎えた第4局が10月14日(水)に兵庫県神戸市の「ホテルオークラ神戸」で行われました。対局の結果、両者得意の相掛かり戦から抜け出した広瀬九段が94手で勝利。タイトルの行方は最終局に委ねられました。

一気の逆転防衛なるか

開幕黒星から一気の2連勝で防衛に迫った伊藤王座、先手番で迎えたこの日は得意の相掛かりを採用します。両対局者の息が合って盤上は穏やかな持久戦に進展。局面のテーマは後手の広瀬九段が放った八方にらみの自陣角がどう働くかという点に絞られました。この角を起点とした端攻めが間に合えば後手ペースなだけに伊藤王座の対応に注目が集まります。

後手からの端歩突きを手抜いた伊藤王座の答えは右辺の桂頭攻めにありました。中央での戦いに持ち込めば9筋の折衝は間に合わないと見るのはプロらしい自然な発想ですが、「薄い作りになった」という局後の感想からは伊藤王座の苦労がしのばれます。後手の手厚い指し回しに遭うことになった本譜を思うと、先手はここで工夫が必要だったことになります。

広瀬九段の安定感ある寄せ

広瀬九段の指し手が勢いを増してきます。9筋の端歩は放置して自陣角の活用を急いだのが当然とはいえ好手。立て続けに二枚銀との協力で中央の勢力を奪還すれば、先手玉が中央にいることもあって後手優勢は疑いようもありません。結局この厚い攻めが決め手となり、以降は広瀬九段の安定感ある着地を見るばかりとなりました。

終局時刻は19時49分、最後は自玉の詰みを認めた伊藤王座が投了。終わってみれば広瀬九段の快勝譜で、道中で難しくする勝負手を何度か逃した伊藤王座は「激戦から一瞬で負けにしたのはひどかった」と反省を口にしました。どちらが王座のタイトルを手にするか、注目の第5局は10月27日(火)に山梨県甲府市の「常磐ホテル」で予定されています。

水留啓(将棋情報局)

  • 広瀬九段は「序盤は失敗気味、勝ちが見えたのは最後の最後だった」と一局を振り返った(写真提供:日本将棋連盟)

    広瀬九段は「序盤は失敗気味、勝ちが見えたのは最後の最後だった」と一局を振り返った(写真提供:日本将棋連盟)