長野県・松本城下の奥座敷として古くから栄えてきた浅間温泉。そんな歴史ある温泉地に立つのが、2026年8月に全館リニューアルオープンを果たした星野リゾートの温泉旅館「界 松本」だ。さらなる進化を遂げた注目の宿を訪れた。
「界」といえば、星野リゾートが全国20施設以上展開し、今開業ラッシュでさらに勢いを増している温泉旅館ブランド。「王道なのに、あたらしい。」をテーマに掲げ、その土地の伝統文化や工芸に触れる「ご当地楽」、地域文化を映す「ご当地部屋」、地域文化の魅力により深く触れる体験「手業のひととき」などで、その土地ならではの旅を提案している。
2026年は「界 草津」(群馬県吾妻郡草津町)、「界 宮島」(広島県廿日市市)、「界 蔵王」(山形県山形市/10月15日開業予定)の3施設が続々と、2027年には「界 嬉野」(佐賀県嬉野市)がオープンする。
音楽ホールを思わせる造形の現代建築
界 松本のコンセプトは、贅沢や優雅を意味するイタリア語「エレガンテ」を冠した「松本エレガンテに浸る湯宿」。建築・音楽・ワインが贅沢に、そして優雅に響き合うさまを表しているのだそう。
宿に到着しロビーに一歩足を踏み入れると、思わずはっとするような高さ10メートルの吹き抜け。ドーム型の音楽ホールを思わせる空間が広がっている。
松本は民芸運動の息吹が残る街で、ギターの生産が盛んなことでも知られる。加工前の木や職人の道具、楽器の制作過程を伝える展示とギターも並ぶ。
音楽がテーマのご当地部屋「GAKUの間」
全29室の客室はすべて、松本が育んできた音楽の「楽」をテーマにしたご当地部屋「GAKUの間」へと生まれ変わった。今回宿泊したのは、客室内に贅沢な露天風呂を備えた「ジュニアスイート」。ちなみに新設された1室限定の「GAKUスイート」には、客室専用のピアノ、露天風呂に加えてプライベートサウナ、専用の水風呂もあるのだとか。
ワインボトル型の木製のルームキーに、蒸し生姜湯、冷蔵庫にはNAGANO WINE(有料)、ReFaのドライヤー、歯ブラシなどを包むのはオリジナルふろしき、和漢生薬成分を用いたオリジナルスキンケアアメニティ、湯上がりを快適に過ごせる作務衣と羽織……客室の中にあるどれ一つをとっても洗練されていて上質。
レコードプレーヤー、スピーカーも全室に完備されており、プライベートな空間でじっくりと音楽に浸ることができる。
「温泉宿でイタリアンのフルコース」が新しい
今回のリニューアル最大の目玉と言ってもいいのが、旅館の王道である会席料理から、界ブランド初のイタリアンへ踏み出したこと。湯上がりの作務衣のままで信州産のワインとともに信州ならではの食材を活かしたイタリアンをフルコースで堪能することができる。
この日いただいたのは信州イタリアン「Matsumoto sinfonia」。ワインペアリングは「サンサンワイナリー」(長野県塩尻市)のもの。
最初の一品である「ストゥツキーノ(6種の小さな前菜)」は、見た目にも美しいピアノをモチーフにしたオリジナルの器で提供される。
続く五線譜に見立てた「ミッレ フォーリエ」は「柿沢ロゼ2024」に合わせて。
続いてふわふわの生ハム風味のミルクの泡に包まれた、洋風茶碗蒸し「玉蜀黍のスフォルマート」。
「柿沢メルロ 樽熟成 2024」が引き立てるのは、オレンジの皮が鮮やかな「鴨モモ肉のラグー タリアテッレ」。
ぶどう本来の果実味が感じられる「柿沢シャルドネ ネイキッド 2025」とともにいただくのが「金目鯛と季節野菜のズッパ・ディ・ペッシェ」。
メインの「牛フィレ肉のアロースト」は、焼きなすのコンディメント、にんにくのピューレ、郷土料理「やたら」に見立てたソース3種で贅沢に味わう。合わせるのはサンサンワイナリー最高峰の「グランキュヴェ メルロ 2023」。熟度が高い豊かな果実味と芳醇な樽の香りはまさにエレガンテ!
ラストのデザートまで信州らしさを感じられる「リンゴのティラミス」。
木の音の響きを感じるコンサート
吹き抜け構造を活かした音響効果のあるロビーで毎晩開催されているのは、ご当地楽「ソノリティコンサート: 木が紡ぐ音の調べ」。コンサートの冒頭では、使用する木材の種類による音色の特性をスタッフが解説してくれる。地元音楽家による生演奏で旅の夜がぐっと優雅に。
NAGANO WINEを楽しむ大人のワインバーが誕生
このロビー空間に新たに誕生したのが、界ブランド初となるワインバー「NAGANO WINE BAR」。「桔梗ヶ原ワインバレー」のワイナリーで醸造されたワインを中心に厳選したNAGANO WINEを提供する。
緩やかな曲線を描く半円形のカウンターで、心地よい音楽に耳を傾けながら、心ゆくまでワインの余韻に浸る時間を過ごすことができる。
テラスに出てワインを片手に焚き火を囲む、なんていう楽しみ方も。
地元ワイナリーでご当地体験「手業のひととき」
界では全国各地の施設でご当地体験「手業のひととき」を用意している。界 松本では「個性溢れる ブティックワイナリーで時代を紡ぐ醸造家の世界観を知る収穫・試飲体験」を開催(2026年は10月1日~17日の木曜日・金曜日・土曜日)。ワイナリーにとって最繁忙期であるシーズンに体験させてもらえるのは、地域に密着した界 松本との関係あってこそ。
ブドウ収穫体験やワイナリー見学で栽培のプロセスや品種の違いによる味の違いを聞き、造り手の思いを知る。
ワイナリー内で、ワイナリーのスタッフによるここでしか聞けない説明を聞きながら、ワインになる前のワインをテイスティングさせてもらう特別な体験も。
ボトルワインを自らの手でラベリングしてお土産に。
界 松本での夕食のフルコースペアリング、ワインバーでの一杯に至るまでサンサンワイナリー尽くし。ぶどうが育つまで、ワインになるまでを見て聞いて知ってから飲むワインは格別の味わいだった。
宿にいながら8種13通りの多彩な湯巡り
忘れてはならないのが温泉の大浴場。実は界の中でも屈指の多彩なお風呂を有し、人気の高いのが、ここ界 松本の大浴場なのだそう。
名湯を引いた広々とした内風呂や露天風呂をはじめ、温水を循環させて輻射熱で身体を優しく温める「ラディアントバス」、檜の芳香が広がる「檜おがくず風呂」、浮力に身を任せてリラックスする「寝湯」、深さ120cmの深水風呂など、2つの湯殿(男女日替わり)で館内にいながらにして8種13通りもの多彩な湯浴みを網羅する、贅沢な湯巡りを提案する。
温泉を堪能した後は、新設された湯上り処でゆっくり。信州の恵みであるりんごを使用した「はちみつりんご酢」やアイスバーなどが楽しめる。
青空体操と和膳でととのう朝
翌朝は7時から毎朝開催されている「青空体操」に参加して、すがすがしくスタート。
朝食は、長野県の発酵食品を取り入れた、からだの内側からじんわりと温まる和膳を(洋食も選択できる)。きのこと鶏肉をくるみ味噌でいただく朴葉(ほおば)蒸し焼き、具沢山の味噌汁には名物の七味をかけて。
NAGANO WINEを味わい、工芸文化に触れ、音楽に耳を傾け、多彩な名湯に身を委ねる——まさに「エレガンテ」という言葉がぴったりの贅沢な時間だった。単に宿でくつろぐだけでなく、土地の文化や造り手の思いに触れることで、松本という街そのものがもっと好きになる。全館リニューアルによって新たな魅力をまとった「界 松本」。日常を離れ、とびきり優雅な休日を過ごしたいときに、ぜひ訪れてほしい一軒だ。
界 松本
1泊4万1,000円〜(2名1室利用時1名あたり、税・サービス料込、夕朝食付)
JR松本駅より車で約15分
取材協力: 界 松本








































































































