渡辺太。

ネット麻雀「天鳳」では、最高段位の「天鳳位」に四人麻雀で2回、三人麻雀で1回の合計3回到達。

その実績を引っ提げて、2023年2月、最高位戦日本プロ麻雀協会のプロとなった。

そして、2023年6月のドラフト会議で、赤坂ドリブンズから指名を受けて、Mリーグで戦っている。

太が天鳳に打ち込んでいたころ、実は私も同じフィールドの「鳳凰卓」でプレーをしていた。

本当に凄かったこととして覚えているのは、太は「打数がハンパない」のだ。

ラス回避麻雀である天鳳は、精神力を削られるゲームだ。

それを何半荘、時には何十半荘も精度高く打ち続けられる集中力、精神力、そして荒れないメンタル。

この「ハートの強さ」こそ、渡辺太一番の武器だと私は考えている。

2026-27Mリーグでも、この胆力に裏打ちされたアガリが出たので、今日はその局を紹介したい。

10月5日(月)麻雀2ch第一試合。

ここまで太は3連勝中。

ただ、南1局1本場を迎える時点で、太は18400点持ちの3着目となっていた。

そんな太に、8巡目、

分岐が一つ訪れた。

ドラが2萬なのが、また悩ましい。

太は、

1萬を切って、6索を残した。

ネット出身のデジタル麻雀と聞くと、棒テン即リーチのような雀風を思い浮かべる方もいらっしゃるかもしれないが、決してそんなことはない。

ここは、

(黄色の牌はツモ切りを示す。)

ストレートに6索を切る手もあるが、そうすると、マンズで雀頭を求めにいく形となるので、自然と「ピンズが2メンツを担う」手牌構成となる。

その場合には、カン7筒の愚形部分と運命を共にする可能性が高くなってしまうのだ。

だから太は、ドラの2萬引きには目をつぶるかわりに、タンヤオを確定させながら、6索周りの好形変化を残すことで最終形を安定させようと試みた。また、裏目の2萬を引いたら引いたで、残す選択も可能だ。

柔らかくて、テクニカルな一打である。

そこへ、

「リーチ!」

大介のリーチが飛んできた。

少ししたあとで、太は、

無筋の9筒を掴まされてしまう。

太は静かに、

9筒を押した!

太の手に、大介の現物は赤5筒の1枚しかない。

しかも、これを抜くと完全に手が崩れてしまう。

大介に通っているリャンメンの本数(例 1-4筒で1本)は、全部で8本。

リャンメンは全部で18本あるので、仮に大介がリャンメン待ちでテンパイをしていたとして、残りは10本。そのうちの1本分である9筒が当たる確率は、10分の1で10%。

大介が愚形テンパイをしている可能性もあるので9筒の放銃率はもっと低くなるため、少なくとも1桁%台だと概算できる。

これくらいのリスクであれば、役アリのイーシャンテンを維持する価値は十分にある。

次巡、太が持ってきたのは、

4索であった。

ここで太は、

8筒をリリース。

8筒は筋の牌だ。しかも、9筒が全て見えていてカンチャン待ちは存在しない。

シャンポンか単騎にしか当たらない8筒の「塵のような放銃率」に怯える太ではない。

次のツモで、

6筒を引いてテンパイ!

タンヤオがあるので、ダマで出アガリの効くここでも――

もちろんリーチだ!

立体図を見てみよう。

まず、太は自身で2索を捨てているので、ソウズが嬉しいリャンメンになるのは7索を引いてきたときだけである。しかも、8策は2枚切れ。よって、ツモ7索を待つことに固執する必要はない。

また、4索や6索を引いたら、ピンズの4赤5666筒と合わせて三暗刻含みの変則三面待ちになる。

しかし、3-6筒は残り3枚。4索や6索がトイツになっても最大で2枚しかないため、変則三面張はMAXで5枚待ち。今のカン5索は4枚残りなので、たった1枚分の差だ。

まとめると、上記のような変化にもさほど大きな価値がないうえ、変化の種類が多いわけではないため、それならば「この時点ですぐに打点が上昇する」というメリットを追ってリーチした方がいい、という結論になる。

1巡につきツモによる変化のチャンスは1回しかない。ならば、この段階で即、大介の打牌と自分のツモという「1巡につき最低2回のアガリ抽選」においての打点アップを図った方がいいわけだ。もちろん、瑞原や佐野から打ち出される可能性も0ではない。

役があるためにカンチャン待ちをダマりたくなる方もいらっしゃるだろうが、太はこういうときに「リーチをして攻撃力を高める」スタンスで麻雀をしている。

実にアツい選択だ。

内に秘めている太の勝負熱が、わずかに赤らむ頬から漏れ出ているようにも見えた。

太は、

3萬をツモってきて暗カン。

リンシャン牌に、

5索がいた!!

裏ドラは…

4枚乗った!

リーチツモタンヤオ嶺上開花赤裏裏裏裏、4000-8000は4100-8100のアガリだ!

柔らかく6索を残し、大介のリーチにイーシャンテンから押して、勇気とともに愚形テンパイでリーチをした者にしか、この倍満ツモへと辿り着くことは出来ない。

マシーンのような精密さで決めたこのアガリが効いて、この半荘、太はトップを獲得。個人4連勝となった。

何度か「メンタルの強さ」をこの記事で触れたが、太は「鋼鉄のハート」を持ちながら、感受性も強い人間だと私は考えている。

2024-25シーズンが終わって、目前で優勝を逃したドリブンズ。囲み取材で、太は悔し涙を流した。

あのときの涙が、さらに太を強くしたのだと私は思う。

さぁ、今シーズンは始まったばかり。まだまだ渡辺太は勝ち続けるだろう。

このシーンも幾度となく見ることが出来るはずだ。

「それではみなさんご一緒に」

「WIN TONIGHT!」

(C)Mリーグ (C)AbemaTV,Inc.