第85期A級順位戦(主催:毎日新聞社・朝日新聞社)は3回戦が進行中。9月11日(金)には永瀬拓矢九段―佐々木勇気八段の一戦が東京・将棋会館で行われました。対局の結果、最先端の角換わり右玉戦から抜け出した永瀬九段が149手で勝利。3連勝スタートに成功して挑戦権争いに名乗りを上げました。
佐々木八段の準備力
この日を迎えた段階で豊島将之九段と増田康宏八段が3勝0敗で首位グループを形成。残る唯一の無敗勢として永瀬九段も負けられない戦いが続きます。両者得意の角換わり戦へと進んだ本局は後手の佐々木八段が渾身の右玉研究を披露。駒がぶつかった数十手後、88手目まで1分以上の考慮なしという異常事態にファンも「すごい研究」と驚きを隠せません。
14時30分を過ぎたあたりからようやく順位戦らしい長考合戦に合流。形勢互角の中盤で、後手としては2筋の銀が敵の大駒を抑え込んでいる点が主張です。逆に先手の永瀬九段としては玉の堅さの差が強みで、受ける展開が続いても持ち駒さえ入れば反撃が望めるだけに辛抱も苦になりません。棋風と展開がマッチしたことも永瀬九段の追い風となりました。
永瀬九段の手厚さ光る
佐々木八段の攻勢とは裏腹に形勢の針は徐々に先手へと触れ始めます。手数にして100手を迎えた場面、夜戦の攻防に最初のアヤが隠されていました。権利となっている香取りの王手を保留して角を打ったのはプロらしい含みの残し方ながら先に形を決めるのがやや不満。結果としてこの角が受け一方の駒になってしまったことが佐々木八段の誤算となりました。
狙い通り持ち駒を蓄えた永瀬九段の反撃のタイミングは近づきますが、その直前で最後の分岐点が待っていました。感想戦では飛車取りを手抜いて攻め合う際、佐々木八段としては自玉を顧みず桂を跳ねていれば勝機十分だったとの結論に。本譜は自陣の成香を抜く保険策を取ったものの、その図で永瀬玉も安全になっていた点が佐々木八段の敗因となりました。
終局時刻は0時35分、最後は攻防ともに見込みなしと認めた佐々木八段が投了。玉の堅さを頼りに丁寧な受けで持ち駒を蓄えた永瀬九段の懐深い指し回しが光る一局となりました。敗れた佐々木八段は1勝2敗の黒星先行となっています。
水留啓(将棋情報局)
