第85期順位戦A級(主催:毎日新聞社・朝日新聞社)は3回戦が進行中。9月10日(木)には広瀬章人九段―千田翔太八段の一戦が東京・将棋会館で行われました。対局の結果、相掛かり空中戦の中盤から抜け出した広瀬九段が77手で勝利。双方の主張のぶつかり合うねじり合いを制して今期2勝目を挙げています。
双方に工夫の一手
広瀬九段1勝1敗、千田八段0勝2敗と挑戦・残留いずれに向けても負けられない両者。相掛かりに進んだ本局は持久戦を志向した先手の広瀬九段が趣向を披露します。後手からの飛車回りを受けるために右金を一段目にはわせたのが前例からのマイナーチェンジで、この金が自陣への打ち込みを消していることで飛車を切っての猛攻がしやすいと見ています。
新手を目の当たりにした後手の千田八段ですが20分の考慮で大胆な構想を打ち出します。盤上中央に角を飛び出したのは直後の歩突きとの連動で馬を作る狙い。先手がこれを拒否してくれば飛車をいじめる含みもあってうまい作戦と思われました。しかしこの日は広瀬九段の切り返しが冴えわたります。飛車取りを放置して歩を突き出したのが絶品の一手に。
勝敗分けた大局観
14時を過ぎた段階で盤上は早くも終盤戦の様相。飛車金交換で駒得に転じた千田八段ですが、先手からの遠見の角によるコビン攻めが厳しく反撃の手番が回ってきません。反対に形勢に自信ありと見る広瀬九段はジッと馬を作って優勢を拡大。受けては先述の一段金が飛車の打ち込みを防いでいるため攻めさえつながればというわかりやすい展開になっています。
逆転を目指す千田八段は飛車切りからの王手金取りでなんとか食い下がりますがこれは形作り。終局時刻は16時14分、最後は千田八段が形を作って夕食休憩前の早い終局となりました。全体を振り返ると、「飛車金交換でも遠見の角が厳しく優勢」という大局観で優位に立った広瀬九段の快勝譜に。広瀬九段は2勝1敗の勝ち越しとなって上位陣を追います。
水留啓(将棋情報局)
