第12期叡王戦五番勝負(主催:株式会社不二家)は段位別予選が進行中。10月1日(木)には計10局が東西の将棋会館で行われました。このうち、東京・将棋会館で行われた九段戦の渡辺明九段―藤井猛九段戦は101手で藤井九段が勝利。8連勝中と絶好調だった難敵を下し2回戦進出を決めました。

藤井流の四間飛車穴熊

本予選は段位別に組み分けされた棋士が16の本戦枠を争うもの。九段戦に臨む両者は枠抜けに向け4連勝が必要です。振り駒が行われた本局は先手の藤井九段が四間飛車穴熊を採用。直近の順位戦(C1、対阿部隆九段)含め連採している作戦で、ひとたび糸口をつかめば攻めに専念できる実戦的な指しやすさが特長です。対して後手の渡辺九段は手厚い銀冠で対抗。

本局は中盤の入り口から藤井九段の積極策が功を奏します。棒金に似た要領で右辺に構えた飛と金のコンビネーションが強力で、手順に後手の銀冠の歩をかすめ取って不満のない展開に。居飛車側は絶えず玉頭の薄さが気になる展開となり、局後SNSを更新した渡辺九段は「(41手目の▲5六歩が見えておらず)冷静な判断ができませんでした」と振り返りました。

振り穴の必勝パターン

主導権を握った藤井九段の指し手が冴えわたります。ジッと角を引いて「飛+角+金」という主力を3筋に集中させたのが筋よい指し方で攻めが切れない形に。このあと遊んでいた左桂を二段跳ねさせる手が実現したところで優勢が明らかになりました。守りの時間が続く渡辺九段は飛車こそ奪ったものの、自玉のそばの金銀が剥がされており粘りが利きません。

終局時刻は11時49分、自玉の受けなしを認めた渡辺九段が投了。最後は敵玉には必死がかかっている一方で自玉には有効な王手が続かないという、振り飛車穴熊の理想的な勝ちパターンが実現した終局図となりました。難敵を下した藤井九段は午後の2回戦で森内俊之九段と対戦。軽快な先手中飛車を駆使して戦ったものの終盤の一失で惜しくも敗れています。

水留啓(将棋情報局)

  • 8連勝と絶好調だった渡辺九段を止めた藤井九段。ファンも「完封じゃないか」「振り飛車穴熊を指したくなる」と盛り上がりを見せた(写真は第58期王座戦第1局のもの。撮影:週刊将棋編集部)

    8連勝と絶好調だった渡辺九段を止めた藤井九段。ファンも「完封じゃないか」「振り飛車穴熊を指したくなる」と盛り上がりを見せた(写真は第58期王座戦第1局のもの。撮影:週刊将棋編集部)