コラム3:ウルトラマンとハヤタの気になる会話
『ウルトラマン』第1話「ウルトラ作戦第一号」は、科学特捜隊のハヤタ隊員が乗っているビートル機が、竜ヶ森湖上空を飛ぶ青い玉、そしてそれを追う赤い玉を目撃するところから始まった。
青い玉には宇宙の平和を乱す凶悪な怪獣ベムラーがおり、赤い玉にはベムラーを宇宙の墓場に輸送する任務を帯びた宇宙人(ウルトラマン)がいた。運悪く、赤い玉はビートル機と衝突してしまった。宇宙人は命を失いかけているハヤタの精神に語りかけ「モウシワケナイコトヲシタ、ハヤタタイイン。ソノカワリ、ワタシノイノチヲ、キミニアゲヨウ」と自らの過失を詫び、ハヤタと命を共有して「一心同体」になると告げ、共に地球の平和のために働きたいと申し出ている。
地球の人々にとってはヒーロー・ウルトラマンの来訪はほんとうにありがたいことなのだが、その理由が「衝突事故で落命した地球人の救済」というのが凄い。もしもウルトラマンがハヤタの乗るビートル機と衝突しなかったら、ベムラーを取り押さえた後、さっさと宇宙の墓場へ移送して、そのまま宇宙の彼方へ去っていったかもしれないのだ。
ウルトラマンがハヤタの生命を救うため地球に留まり、地球の平和のために戦う意欲を示してくれたのはありがたいが、果たして地球に来る以前にウルトラマンが行っていた「本来の仕事」はどうなるのだろうか? という疑問を抱かざるを得ない。テレビに映っていないところで、ウルトラマンが故郷のM78星雲・光の国に長期休職届を出していればいいのだが……。
「ウルトラマンは独断で通常任務を離れ、地球の平和のために働いていていいのだろうか」という素朴な疑問は、当時円谷プロ文芸企画室長を務め、『ウルトラマン』第1話をはじめとする主要なエピソードを手がけた脚本家・金城哲夫の筆による長篇ノベライズ『怪獣絵物語ウルトラマン』(ノーベル書房 怪獣大全集3)の文中での、ハヤタとウルトラマンとのやりとりの中で見事に解消される。ではそのくだりを一部引用してみよう。
(ハヤタ)「一心同体?」
(宇宙人)「ワタシニモシゴトガアル。シヌワケニハイカナイノダ」
(ハヤタ)「どんな仕事だ」
(宇宙人)「ウチュウノヘイワヲマモルタメニ、ハタラクコトダ」
(ハヤタ)「宇宙人の科特隊員か」
(宇宙人)「チキュウノカトクタイノコトは、シッテイル。オナジヨウナシゴトダカラ、キミトイッシンドウタイニナッテモカマワナイ」(引用終わり)
つまり、ウルトラマンは科学特捜隊を以前からしっかり認識しており、彼らと一緒に地球の平和を守ることは、宇宙の平和を守る自分の仕事と(規模の大小はあれど)同じであると考えていたわけだ。ウルトラマンはハヤタと命を共有し、一心同体になった後でも、宇宙の平和を守るという自分の仕事を継続していると解釈していいだろう。共に生真面目で正義感の強い者同士であるハヤタとウルトラマンは、きっかけこそ衝突事故という不運なものであったが、出逢うべくして出逢った運命的な2人だったといえないだろうか。
