東京駅八重洲口に9月10日、大規模複合施設「TOFROM YAESU TOWER(トフロム八重洲 タワー)」が開業する。地上51階・地下4階、高さ約250m。オフィスをはじめ、商業施設、劇場・カンファレンス、医療施設、バスターミナルなどを備える。開業に先駆けて行われたメディア向け内覧会で、東京建物 代表取締役社長執行役員の小澤克人氏が、施設に込めた狙いや、八重洲という街ならではの特徴について説明した。
■「八重洲へ、八重洲から」TOFROMという名前に込めた意味
まず気になるのが、「TOFROM(トフロム)」という少し耳慣れない名称。これは英語の「TO」と「FROM」を組み合わせた造語だという。
「TO八重洲、FROM八重洲。世界中からさまざまな人、モノ、コトがこの地に集まり、ここで多様な価値が生み出され、そしてこの街からその価値が発信されていく。そんな場所になってほしいという思いを込めました」(小澤氏)
東京駅西側の丸の内が武家屋敷の街として発展したのに対し、八重洲から日本橋、京橋にかけては、江戸時代から商人の街として栄えてきた。中でも八重洲一丁目周辺には、かつて料理屋などさまざまな業種の店が軒を連ね、細い路地と小規模な建物が入り組む街並みが広がっていた。
非常に細かく細分化された区画が集まり、人が通れる程度の細い路地も残り、古い建物が立ち並んでいたといい、今回の再開発には、そうした地域で商売を営んできた約250名の権利者が関わっている。
■元の八重洲の街並みをデザインに取り入れた箱積みの外観
そうしたかつての街並みは、約250mの超高層ビルへと生まれ変わったTOFROM YAESU TOWERの低層部のデザインに活かされている。
「多様な個性が集積する八重洲らしい街並みを表現するために、箱を重ね合わせたようなデザインとしました。八重洲の地でさまざまな人々を支え、つなげてきた街の歴史を継承し、発信することを目指したものです」(小澤氏)
“街っぽさ”は外観だけではない。施設周辺には八重洲通り、八重洲仲通り、外堀通り、さくら通りがあり、その4つの通りを3本の通路で結ぶ。地下では八重洲地下街を介して東京駅とも直結し、雨の日でもスムーズにアクセスできる。
一般的な大型商業施設では、まず客を館内へ招き入れ、その内部を回遊させる設計が多いが、TOFROM YAESUでは多くの店舗の“顔”を建物の外側、道路側へ向けて配置。2階へ直接上がれる屋外階段やエスカレーターも複数設けている。これは、路面や路地裏に店舗が立ち並ぶ再開発前の雰囲気を、街の魅力と考えて継承していく狙いだという。
■68店舗が集結! テーマは「ニュー&クラシック」
来街者にとって最大の注目ポイントとなりそうなのが、TOFROM YAESU TOWERとTOFROM YAESU THE FRONTにまたがる商業ゾーン「TOFROM YAESU Shop & Restaurant」だ。飲食店を中心に68店舗が集結し、9月10日にはTOWER内の60店舗が開業。THE FRONT内の店舗は2026年冬以降、順次オープンする予定だ。
歴史ある老舗や名店と、カジュアルな居酒屋などが混在し、東京駅周辺で幅広い人が最も肩の力を抜いて楽しめる飲食エリアとして親しまれてきた八重洲という土地の賑わいを、「東京・八重洲 王道 ニュー&クラシック」をテーマに現代的に再編集。日常使いできるカジュアルな居酒屋、ハレの日の高級店、古くから愛されてきた老舗、ミシュラン星付きの人気店から派生した新業態まで、かなり振り幅のある顔ぶれが集まった。
■170年以上続く割烹も、八重洲生まれのバーも“帰還”
象徴的なのが、再開発前からこの地に根を張ってきた店々だ。例えば、江戸時代の料理屋番付にも名を連ね、170年以上の歴史を持つ老舗の「割烹 嶋村」や、八重洲を代表する老舗中華「TaiKouRou TOKYO」。
また、日本を代表するミクソロジスト・南雲主于三氏が手掛けるバー「Mixology salon(ミクソロジーサロン)」も、この土地との縁がある。南雲氏が2009年に1号店を開いた場所は、実は現在のTOFROM YAESUの敷地内だったという。
一方で、星付きレストランの新業態など新しい顔もそろう。商業ゾーン全体で、公式が掲げる「東京の“歴史”と“新しさ”が共存する場」を形にしている。
■地下には国内最大級の高速バスターミナルも
もうひとつ、TOFROM YAESUならではの大きな機能が交通だ。地下には「バスターミナル東京八重洲」を整備。東京ミッドタウン八重洲、TOFROM YAESU、今後整備される八重洲二丁目中地区を含む東京駅前の3つの再開発事業の地下空間に、最終的に計20バースを備える国内最大級の高速バスターミナルが形成される。
そのほか、3~6階には東京駅前初となる段床式劇場を備える「東京建物 ぴあ シアター&カンファレンス」、6~7階には「日本医科大学八重洲健診ステーション」も配置されている。
数字だけを見れば、TOFROM YAESU TOWERは紛れもなく巨大な再開発だ。しかし外へ向かって開いた店構えや外階段、店ごとに異なるファサード、そして再び暖簾を掲げる八重洲の老舗などを見ると、「大きなハコの中にすべてを収める」タイプの商業施設とは、ずいぶん異なる印象を受ける。
細い路地と店、人の行き来が生んできた八重洲のにぎわいを、新しい街でどう残すか。その答えの一つが、この“箱積み”ビルなのかもしれない。















