東京都千代田区の、日比谷公園や皇居から直近の位置にあるランドマーク・東京ミッドタウン日比谷。その6階のビジネス創造拠点「BASE Q」が大規模リニューアルし、 2026年9月1日より「東京ミッドタウン日比谷 ホール」としてオープンした。この記念に同ホールでは、9月5日から10月18日まで、現代アート作家・平子雄一氏の展覧会「HUMAN AND NATURE」を開催している。
イベント対応力が大幅アップデート
東京ミッドタウン日比谷 ホールは既存のHALL1・2に加えてHALL3を新設し、イベントスペース総面積は1,200㎡超に及ぶ。ホール全体を使ってのカンファレンスや商品発表会だけでなく、ホールを分割してセミナーや展示同時進行させるなど、さまざまな用途に対応可能だ。充実の映像・音響設備のほか、少人数利用の個室を新設し、BASE Q時代より備えていたキッチンスペースや屋外テラス空間は引き続き利用できる。
このホールの広さを活用した展覧会「HUMAN AND NATURE」には、初公開となる最大約3.5mのモビール群をはじめ、立体造形や絵画など新作を含む約300点が登場。没入感のあるアート展示を通じて、来場者へ向けて人と植物、都市と自然との関係性の再考を促すことを狙いとする。
「人と自然」「アートと街」をつなぐ展示コンセプト
平子氏は人と自然の関わりを、西洋的な対立構造でなく、身近な花瓶・鉢植や公園にも小さな自然が宿っているという日本人的な感覚で捉え、それをアート化してきた。「本展では日比谷公園に注目し、都会の中心にあって緑豊かな日比谷公園と、展覧会との間に相互作用が生まれる様子を見てみたい」と語る。一部の展示ではあえて窓を広く使い、外光の変化や日比谷公園の風景を作品に取り込んだという。
細かな作品意図や制作経緯などを紹介するキャプションなどが、本展では存在しない。監修の秋元氏は本展の楽しみ方について、「作品がどういうシンボルや意味で作られているか、鑑賞者自身がイメージしてほしい」と語る。
インスタレーションは1階の屋外広場や、日比谷公園内にも設置される。三井不動産の中村氏は、「アートを食事や買い物など日常体験と組み合わせ、展覧会と日比谷の街を回遊させたい」という。東京ミッドタウン日比谷は屋上庭園や敷地内緑地が広く、ほかにもビル上に自然を再現する構造・取り組みのおかげで、現在は日比谷公園とリンクする形で野鳥などの生態系ができているという。今回の展覧会は、まさに施設とピッタリの内容というわけだ。
鑑賞者のイマジネーションが促される木質の展示空間
本展の特色は、リニューアルされたホール全体に木製パーテーションを配置した空間設計だ。パーテーションは全体がカーブ状になっていて、場所によっては動線が二分してから合流する箇所や、大きな部屋の横に行き止まりの小部屋がある箇所もあり、直線の通路を進む通常の美術展示とは趣が異なる。人と自然をテーマにする展示だけあって、森の中の小道を散歩するような雰囲気があった。
導入に当たる1部屋目では、壁全面を使って標本のような小さい立体作品が並べられている。二分した動線に挟まれて島状になっている壁面には、平子氏がアイデアを固める際のドローイングが何枚も貼られていた。平子氏がどのような世界観やモチーフで作品を制作しているか、直感的に体験できる場所だ。
続く2部屋目は展覧会でも一番広いスペースを使い、中型〜大型まで複数の立体造形が中央に並べられている。ここは庭にある植物をイメージしたもので、よく見れば花瓶や鉢など、人間が自然と関わるときに使う日常的なアイテムがたくさん配置されている。もしも自分がマイクロサイズの小人になって、民家の庭を探検したら、こんな風景が見えるかも?という想像も捗りそうだ。
3部屋目は大型絵画が壁面に架けられ、展示会場の中でも最も静かな雰囲気だ。上述のとおりキャプションはなく、絵の意味は鑑賞者自身が脳内で組み立てることになる。なお、平子氏の作品には「頭から木の枝(に見えるもの)を生やした、頭部が緑一色の人物」がアイコンとして頻出するが、名前の設定などはなく、いわゆる「キャラクター」とは似て非なる物だという。
最後の4部屋目では多くの大型インスタレーションが天井から吊り下げられ、その奥の窓辺からは日比谷のビル群や日比谷公園が見える。室内の空調でかすかに揺れ、普通に床置きされているインスタレーションとは異なる非現実感を作品に与えている。
窓から差し込む外光や、その先に広がる日比谷公園や皇居の緑が作品と重なり合い、展示空間と外の自然がゆるやかにつながっているように感じられた。
「I'm donut?」コラボも注目
内覧会では、「I'm donut?」オーナーシェフの平子良太氏によるコラボドーナツも登場。「木の枝と緑頭の人物」をモチーフにしたものなど数種類が並び、濃厚ながら自然な甘みを楽しめる。
物販ブースには、コラボドーナツのほか、マグカップや関連書籍、作品をモチーフにしたぬいぐるみなども並ぶ。展示を見終えたあとも、気に入った世界観を持ち帰れるのがうれしい。
「HUMAN AND NATURE」は、人と自然の関わり、そして人とアートとの関わりを、いつもとは少し違った視点から見つめ直すきっかけになるはずだ。


















