テレビ画面を注視していたかどうかが分かる視聴データを独自に取得・分析するREVISIOでは、16日に放送されたNHK大河ドラマ『豊臣兄弟!』(総合 毎週日曜20:00~ ほか)の第31話「これで、お別れにございます」の視聴分析をまとめた。

  • 仲野太賀(中央)と池松壮亮=『豊臣兄弟!』第31話より (C)NHK

    仲野太賀(中央)と池松壮亮=『豊臣兄弟!』第31話より (C)NHK

「兄者!」「口出し無用じゃ! 黙って見ておれ!」

最も注目されたのは20時27分で、注目度77.1%。秀吉(池松壮亮)が、滝川一益(猪塚健太)の刺客に寛大な沙汰を下すシーンだ。

秀吉が大徳寺で行った信長(小栗旬)の葬儀が終わった。喪主を務めたのは秀吉の養子となった信長の五男・羽柴秀勝(柊木陽太)。秀吉は三法師(清水伊織)を助け、信長の目指した新しい世を創ると参列者を前に宣言する。「今からその覚悟をお見せいたす。捕らえた賊をここへ連れてまいれ」「お待ちくだされ、なぜ…」小一郎(仲野太賀)が制止するも、藤堂高虎(佳久創)らに連れられ、滝川一益が放ったと思われる3名の刺客が秀吉の前に引き出された。

参列者の視線が一斉に集まる中、秀吉は高虎が携えていた刀を抜く。「兄者!」「口出し無用じゃ! 黙って見ておれ!」たまらず声を上げる小一郎を秀吉は一喝する。秀吉は座している刺客の背後に立ち、刀を高く掲げる。刺客も覚悟を決めたのか目を閉じる。一同が固唾を飲んで見守る中、秀吉が刀を振り下ろす。しかし、刀は刺客の首に届く寸前で止まった。小一郎や刺客が驚きの表情を浮かべる中、秀吉は刺客を縛る縄を切った。

「上様の葬儀の間、血は見とうはない。ほかの者たちも解いてやれ」皆が秀吉に注目する中、「丹羽殿と池田殿も来てはおられぬが名代を遣わしてくださった。うぬらも滝川殿の名代ということにいたす」と告げる。刺客たちは信じられないという表情で秀吉を見上げた。秀吉は刺客の1人の肩に手を置く。「早う立ち去れ。そして滝川殿に伝えるのじゃ。葬儀は無事に終わった。次からは引かぬとな」

秀吉はさらに続ける。「もしも、こたびのことで滝川殿のもとにいられなくなった時は戻ってまいれ。わしが家来にしてやる。わしと共に面白き世をつくろう」秀吉の寛大な処置に感銘を受けた3名の刺客は、深く頭を下げそのまま去って行った。柱の陰で密かに状況をうかがっていた前田利家(大東駿介)は、複雑な表情を浮かべ立ち尽くしている。

「皆の者! 大儀であった!」秀吉の声が境内に響くと皆が一斉に頭を下げる。一連の振る舞いで秀吉は参列者の心を大きく惹きつけたようだ。秀吉は信長の位牌の前に膝まづくと懐からかつて授かった草履を取り出す。「これで、お別れにございます」秀吉は草履をうやうやしく位牌の前に供える。「この人たらしめ」と、小一郎は密かにつぶやくのだった。

  • 『豊臣兄弟!』第31話の毎分注視データ推移

    『豊臣兄弟!』第31話の毎分注視データ推移

「ただ見せしめで殺すよりよっぽど怖い気がする」

このシーンは、秀吉の水際立った人心掌握術に視聴者の注目が集まったと考えられる。

秀吉の強引な手法は織田家臣団の強い反発を招いた。そんな秀吉をもっとも警戒したのは織田信長の妹である市(宮崎あおい)だった。秀吉に先んじて信長の法要を行った市。その市の行動を受けて、秀吉も市こそが最大の障壁であると認識する。養子である羽柴秀勝を喪主に据え織田信長の葬儀をおこなった秀吉は、滝川一益の放った刺客に命を狙われるが、逆に利用し参列者の心を奪う。これには弟である小一郎も感服するしかなかった。

SNSでは「人たらしなだけじゃなく、演出力にも長けすぎるな兄者は」「何か、ただ見せしめで殺すよりよっぽど怖い気がする」「もう完全にみんなを魅了している。秀吉の独壇場だな」と、秀吉の鮮やかな処置にコメントが集まった。

今回、信長の葬儀が行われた大徳寺は京都市北区紫野にある臨済宗大徳寺派の大本山で、山号を龍宝山という。開山は宗峰妙超、通称・大燈国師で、1315(正和4)年に赤松則村の援助によって創建されたとされている。後醍醐天皇から厚く帰依され、南北朝期には朝廷との関係を深めた。室町時代には五山制度から外れ、応仁の乱によって大きな被害を受けた。しかし一休宗純が復興に尽力し、堺の商人などから支援を受けて再興される。その後、戦国時代にかけて武将や茶人との関係を深めていく。

信長の葬が行われた際、秀吉は信長の菩提を弔うため総見院を建立した。その名は信長の法名である「総見院殿贈一品大相国泰岩大居士」にちなんで名付けられたと伝わっている。