ジャルパックは7月6日、リアリティショーのような偶然の出会いを演出する旅行商品「リアリティショー旅」の販売を開始した。この新しい旅はどのようにして生まれたのだろうか。参加者が抱くであろう疑問とともに、ジャルパックの担当者にお話を伺った。

  • (左から)商品実現を果たした北爪一仁氏(つながり創造部 新企画・価値創出グループ 統括マネジャー)、企画を立ち上げた都築寛氏(2026年4月よりJALグループ スプリングス・ジャパン)

    (左から)商品実現を果たした北爪一仁氏(つながり創造部 新企画・価値創出グループ 統括マネジャー)、企画を立ち上げた都築寛氏(2026年4月よりJALグループ スプリングス・ジャパン)

ジャルパックの「リアリティショー旅」とは?

ジャルパックが7月6日から販売を開始した「リアリティショー旅」は、集合場所と集合時間のみを知らされた参加者が、見知らぬ人同士でチームを組み、熱海を舞台にミッションをクリアしながら、地域の人々との自然な交流を深めていくという、新しい旅行商品だ。

この斬新な企画は、ジャルパック、博報堂、テレビ朝日との三社共同事業により実現した。プロジェクトの狙いはどこにあるのだろうか。企画を立ち上げた都築寛氏、商品実現を果たした北爪一仁氏に聞いてみよう。

何度も同じ地域に行く理由は「景色」や「食事」よりも「人」

――お二人はこのプロジェクトでどのような役割を担っているのですか?

都築氏:北爪と私は、2026年の3月まで新事業企画部で一緒に働いていました。博報堂さんから持ち込まれたアイデアを元に、私が2025年5月ごろからプロジェクトを始めて、構想・企画段階から実行・商品化に移すところで北爪にバトンタッチした形です。

北爪氏:はい。私は3月ぐらいからですね。最初はキャッチアップに苦労したことを覚えています。でも都築が企画案をかなり詰めてくれていましたので、試行錯誤しながら旅行商品に落とし込みました。

――それでは、「リアリティショー旅」が誕生した背景について伺っていきたいと思います。

都築氏:これまでのJALグループは“移動”というサービスを提供する会社でした。しかし2021-2025年度中期経営計画で、「移動を通じた関係・つながり」を創造する会社になるという宣言をしたんです。関係人口を増やすことは地域経済の活性化や社会課題の解決に繋がりますし、すばらしいことだよねと。それに共感していただいた博報堂さんがJALグループと一緒に新しい事業を生み出していく中で、リアリティショー旅の原型となるものが生まれました。

――なぜ「リアリティショー」という形を選んだのでしょうか?

都築氏:最初は地域のイマーシブ(没入)型体験みたいなものを提供する事業を検討したんです。ミステリーを解いていくような。でも、品質を担保するためにはプロの脚本や演者にお願いしなくてはいけません。そうすると費用がかかり、お客さまへの提供価格も上がってしまいます。ゆくゆくは日本中の各地域で提供したいと思っていたので、それぞれにオリジナルストーリーを作って演技をしてもらうのは現実的じゃないなと。

――そこで「リアリティショー」というコンセプトに向かうわけですか。

都築氏:イマーシブを一旦忘れて、「作り込むものではなく、自然な形で地域の方と交流が生まれ、一緒にいた旅行者との交流も深まるものを」と考えたんです。当時流行っていたリアリティ番組の中の、キャストの一人になったような気分で旅をする事業をやろうと。

やっぱり、何度も同じ地域に行く理由って、良い景色やおいしい食事だけじゃないと思うんです。その地域の魅力ある人との出会いや交流があると、「また行こう」「あの人に会いに行こう」というきっかけになるじゃないですか。「それが関係人口創出だよね」となって、リアリティショー旅をやる意義が広がっていったんですよ。

――リアリティショー旅が目指しているのは関係人口創出なんですね。

都築氏:はい。今回作り上げたのは熱海のリアリティショー旅です。とはいっても、これがゴールではなく、地域ごとにいろいろなストーリーや展開があると思っています。その土地の歴史、文化、観光資源、名物的な存在の方、商店の方、飲食店の方、宿泊施設の方などと自然な交流が生まれれば、また会いに行くきっかけになります。

そして、たまたま出会わせた他の旅行客の方と同じ時間を過ごすことによって、その方たちと、「また次回、一緒に旅をする」みたいなことが生まれていくと、どんどん関係性は深まっていくし、旅をする回数も増えていくのかなと思います。

「リアリティショー旅」は恋愛・結婚相手を探す旅なのか?

――リアリティショー旅の舞台として、飛行機を利用しない熱海を選んだ理由は?

北爪氏:今回の舞台である熱海は「だれと来ても仲良くなれる街」という都市伝説みたいなものがあるんです。昭和レトロな商店街や町並み、昔ながらの喫茶店、名物オーナーがいるバーやスナックなどの人たちと触れ合い、懐かしさを感じながら、肩の力を抜いた形で旅を楽しんでもらいたいと思っています。

都築氏:我々の主力商品は、お客さまに飛行機で(住んでいるところとは)異なる土地に行っていただく旅です。飛行機を使わず自動車や電車で行く熱海にはこれまで送客できていなかったので、そういう地域だからこそ新たに関係を築いていける取り組みに意義があると考えました。

――リアリティショー的な要素はどのように入れ込んでいるのでしょうか。

北爪氏:リアリティショー旅の中では「ミッション」と呼んでいるのですが、参加者に共通の課題を与えていきます。協力してミッションをクリアしていくことで、初対面の人同士でも仲良くなれるんじゃないかなと考えました。全部で9つのミッションを用意しています。

中身は詳しくお伝えできないのですが、ネタバレしない範囲でお話ししますと、参加者同士でチームを組んで対決したり、共同作業をするとかですね。また、見知らぬ人同士でフリートークだとなかなかお話もしづらいと思いますので、「トークテーマカード」というのも用意しています。

――地域の方との交流はどのように組み込まれていますか?

北爪氏:リアリティショー旅にはファシリテーターがいませんので、集合・解散場所の店員さんなどにミッションの提示を委ねています。それを参加者の代表の方が読み上げる仕組みですね。そういった流れの中で、地域の方との交流も自然に発生することを期待しています。

――個人情報を明かすことに抵抗のある方もいらっしゃると思うのですが、配慮などはされていますか?

北爪氏:参加者は基本的にニックネームで呼び合う形を採っています。SNSなどでの投稿も控えていただくよう、各種書類やしおりなどに注意書きも行っています。

――みなさんが気になっているであろうことを率直にお聞きしたいのですが、このリアリティショー旅において想定している「出会い」とは恋愛的なものでしょうか、それとも友人的なものでしょうか。

北爪氏:リアリティショーという名称から、やはりみなさん“恋愛”というキーワードはどうしても思い浮かべますよね。ですが、「婚活ツアーでありません」とはっきり明記しています。

男性同士、女性同士の出会い、恋愛じゃない部分での男女の出会いのなかから、自然に恋愛が生まれても素晴らしいと思っているので、完全に否定するわけではありません。ただ、恋愛という関係性を超えた、もっと広い意味での出会いをテーマにしている旅行商品です。そのあたりのギャップをどう埋めていくのかは、本当に販促する上での課題だと思っています。

熱海でしっかりと実績を作り全国展開を目指す

――「リアリティショー旅」実現に向けて特に苦労した点をお聞かせください。

都築氏:3社のベクトルは合っていたのですが、熱海市との話し合いも深まる中で、アイデアが二転三転し、旅行商品として実現可能な具体的なプランに落とし込むのに時間がかかり、なかなか形が定まりませんでした。また、ジャルパック社内で理解を得るのも難しく、とくに収益性は最後まで壁になりました。

でも、みんなモチベーションは落ちなかったんですよ。我々も博報堂さんも、そしてテレビ朝日さんも、移動・広告・放送以外の新しい事業で地域に貢献したいという目的で一緒に組むことができました。

北爪氏:実現段階では、サプライヤーさん、例えば宿泊先のホテルをどこにお願いするか、ミッションでどこの施設に行くかという協力依頼の部分でかなり苦労しました。熱海はいますごく人気が高く稼働率も高いので、企画趣旨は理解していただいても、「客室を何日も提供できません」とお断りされることも多くありました。

また、ジャルパックはこれまで飛行機+ホテルといったパッケージ商品を主に取り扱ってきましたが、熱海はお付き合いがあまりなかった地域ですので、協力のお願いは本当に大変でした。最終的には「観光客というよりも、地域と交流して継続的に熱海に来ていただくお客さんを育てたい」という思いを伝えて、ご理解いただきました。

――最後に、今後の展望について教えてください。

北爪氏:まだ第一回の実施前ですが、将来的にはその地域、その土地の文化、歴史に合わせて、いろいろなストーリーを作って全国展開していきたいですね。協力いただいているサプライヤーさんのためにも、まずは熱海でしっかりと実績を作って、参加者さんからも「他の地域でも企画してほしい」と言われるような旅にしたいと思います。

都築氏:実は私自身、20代のころからゲストハウスを巡る旅を続けているんです。そういう旅をしていると、普段なかなか接することのない学生の方から大企業の社長さん、お医者さんや消防士さん、夜にバーやスナックで働いている方、そしてゲストハウスのスタッフさんなど、本当にいろいろな方との出会いがあるんですよ。

自分とはまったく感覚が違う方と仲良くなって、新しい価値観や体験を得て、交流が広がって、幸せな気分になって帰宅し、またその人たちに会いに行くという旅を繰り返しているんです。私の願望というか、妄想ですが……こういう交流をどんどん深めていって、最終的には共同生活ができるような形も作れればなと思っています。

――これからの展開が楽しみですね! 本日はありがとうございました。