ひとつの医学論文が社会に広がり、人々の不安をかき立てる。その内容が科学者たちによって次々と反証され、後に改ざんまで発覚したにもかかわらず、不安は消えなかった――。1998年のイギリスで起きた「MMR事件」は、科学と社会の間に横たわる難題を浮き彫りにした。
NHKのドキュメンタリー番組『フランケンシュタインの誘惑 イギリスMMR事件 科学のジレンマ』が、7日(19:30~)にBSP4Kで放送される。はしか・おたふく風邪・風疹の3種のワクチンを混合したMMRワクチンをめぐり、ひとつの研究が社会に与えた影響と、「科学者たちの反論は、なぜ人々の心に届かなかったのか?」という問いに迫る。
「MMRワクチンが自閉症の原因」と示唆した論文
事の発端は1998年、イギリスで発表された医学論文だった。論文は「はしか・おたふく風邪・風疹の3種のワクチンを混合したMMRワクチンが自閉症の原因」だと示唆。発表直後から、他の科学者たちによる反証が相次いだ。さらに、後には研究の改ざんが発覚し、その内容は科学的に否定された。
科学者が反証しても“不安”は消えなかった
しかし、科学者たちによる反証や政府の後押しがあっても、人々の不安は解消されなかった。イギリスではMMRワクチンの接種率が大幅に低下。科学的な検証によって否定された研究が、なぜその後も人々の生活や行動に影響を与え続けたのか。番組では、「政府の、そして科学者たちの声はなぜ人々に届かなかったのか?」という問いから、MMR事件を検証していく。
科学と社会の間に生まれた「ジレンマ」
研究結果を検証し、誤りがあれば反証していく科学。そのプロセスが機能していたにもかかわらず、人々の心から不安を取り除くことはできなかった。ひとつの医学論文から始まり、社会へと影響が広がっていった「MMR事件」。番組では、その経緯をたどりながら、科学者や政府が発信する情報と、それを受け取る人々との間に何が起きていたのかを見つめる。
【編集部MEMO】
『フランケンシュタインの誘惑 科学史 闇の事件簿』は、闇に埋もれた事件に光を当て、「科学」「歴史」「倫理」に迫るシリーズ。科学は、人間に夢を見せる一方で、ときに残酷な結果をつきつける。理想の人間を作ろうとした青年フランケンシュタインが、怪物を生み出してしまったように――輝かしい科学の歴史の陰には、残酷な実験や非人道的な研究、不正が数多く存在した。語りは吉川晃司。



