第74期王座戦(主催:日本経済新聞社、日本将棋連盟)は、伊藤匠王座への挑戦権を争う挑戦者決定トーナメントが進行中。7月24日(金)には準決勝の藤井聡太竜王・名人―丸山忠久九段戦が東京・将棋会館で行われました。対局の結果、得意の角換わり腰掛け銀を駆使した藤井竜王・名人が丸山流の力戦策を攻略し91手で勝利。挑戦者決定戦へとコマを進めています。

丸山九段の注文

両者の対戦成績はこれまで丸山九段の3勝1敗。銀河戦決勝の舞台で丸山九段が2年連続で藤井竜王・名人を破ったのはファンの間では語り草で、この日も自然と丸山九段の作戦に注目が集まりました。振り駒が行われた本局はともに得意とする角換わり腰掛け銀のオープニングに。後手となった丸山九段は△3三金型の力戦策を選んで早くも定跡形を外します。

互いに手探りの駒組みのなか、丸山九段のほうに苦労が目立ちはじめます。中央に飛車を回ってから左辺に玉を囲ったのはやむを得ないとはいえ不自然な駒運び。2筋に立った銀と他の駒との関連性が薄いため「既に作戦負け」(局後の丸山九段)の展開ですが、これに関しては藤井竜王・名人の奇をてらわずに敵陣の隙を作りだす指し回しが光った形です。

作戦勝ちからの快勝

具体的な決め手こそないものの、放っておくと先手のほうにばかり指したい手が残るのが丸山九段のつらいところ。藤井竜王・名人が決めに出たのは16時を少し過ぎたころ、後手が3筋に飛車を回ったときのことでした。これを放置しておいて地下鉄飛車の要領で飛車を大転回したのが決め手で、裏口から攻められた格好の後手玉はひとたまりもありません。

終局時刻は19時8分、最後は丸山九段が形を作って投了。圧力をかけられた後手としては右辺の遊び駒を働かせるよりない情勢でしたが、ここで駒を渡したことにより先手からの反撃が厳しく残りました。クセのない指し手でいつの間にかリードを奪う指し回しに、敗れた丸山九段も「全体的に完敗」と認めるよりありませんでした。勝った藤井竜王・名人は広瀬章人九段との挑戦者決定戦にコマを進めています。

水留啓(将棋情報局)

  • 藤井竜王・名人は次局に向け「広瀬九段は一局ごとに工夫を凝らす印象で終盤の切れ味も鋭く大変な将棋になる」と展望(写真:矢島遼大)

    藤井竜王・名人は次局に向け「広瀬九段は一局ごとに工夫を凝らす印象で終盤の切れ味も鋭く大変な将棋になる」と展望(写真:矢島遼大)