フジテレビのドキュメンタリー番組『ザ・ノンフィクション』(毎週日曜14:00~ ※関東ーカル)で、19日・26日の2週にわたって放送される「就職先はさる軍団3 ~怒られない時代に芸を磨くということ~」。1000年続く伝統芸能「猿まわし」の世界に入った新人たちと、彼らの育て方に苦悩する日光さる軍団を率いる村崎太郎(65)(※「崎」は正しくは「立つ崎」)を追った作品だ。前編では、村崎が「怒るのをやめた」と語る一方、新人たちの芸を見て厳しい言葉を残す姿が描かれた。
撮影・ディレクターを務めたのは、約40年にわたって村崎をカメラで追い続けてきた共同テレビの永山真治氏。厳しい指導で芸を受け継いできた村崎は、なぜ怒ることをやめたのか。「怒られない時代」に伝統芸能を継承する難しさと、そこに見いだした新たな希望を聞いた――。
撮影現場で感じた、先輩たちの指導への違和感
今回のシリーズ第3弾を制作するきっかけとなったのは、2020年放送の第1弾で取材したゆうやさんとゆめこさんの成長だった。2人がメインステージに挑戦すると知り、「最初に描いた彼らの成長を、きちんと撮りたい」と考えたという。
さらに、2025年に入社した新人たちが、それぞれ印象的な背景を持っていたこともあり、再び新人の成長を追うことになった。
このように当初から「怒られない時代」をテーマに据えていたわけではなかった。撮影中、新人を指導する先輩たちの様子に、違和感を覚えた永山氏。話を聞くと、会社として、なるべく厳しく叱らない指導に変えようとしていることが分かったのだ。
かつて、猿まわしを志す者は、師匠の門をたたいて弟子入りするのが当たり前。厳しい修業を覚悟した上で入門する世界だったが、現在は、動物の専門学校などを卒業した若者が、新卒社員として施設を運営する会社へ就職する形になっている。
永山氏は「今は、劇場のあるレジャー施設に就職するという感覚で入ってくるので、教育方法も変えていかなければいけないんです」と指摘。伝統芸能や映像の世界には、手取り足取り教えるのではなく、先輩の技術を「見て盗む」という考え方が根強くあっただけに、今回の変化を「大きな転換期」と捉え、主軸のテーマとして描くことになった。
意味のない慣習は切り捨ててきた“改革派”
19日に放送された前編では、長年、厳しい熱血指導で知られてきた村崎が「怒るのはなるべくやめました。もう意味ないから」と胸の内を明かした。
約40年にわたって村崎を見てきた永山氏は、その言葉から「昔のように厳しく怒鳴って教えることができないことに葛藤はあると思います」と受け止めるが、彼が単に昔の方法を守り続けてきた人物ではないことを知っている。
かつて当然のように行われていたサルの訓練法について、意味がないと判断したものは次々と廃止し、より合理的な方法へ変えてきたのが村崎だ。以前の新人は、芸が仕込まれていないサルと組んで共に育っていったが、今はすでに芸を身につけたベテランのサルと組ませるようにした。それも、早く舞台デビューさせることに加え、事故を防ぎ、動物への負担を軽減する狙いがあるからだそうだ。
永山氏は「“こう教えろ”と言われ、理由も分からず続けていたことでも、太郎さんは“これは意味がないよね”と切り捨ててきたんです。それによって調教技術も上がっています」と解説。人を育てる方法についても、村崎が今、新たな形を模索していると見ている。

