内田有紀と寺西拓人がW主演を務めるフジテレビ系ドラマ『ラストノート』(毎週木曜22:00~ ※FOD・TVerで見逃し配信)の第3話が、23日に放送された。

本作は、20歳差という年齢はおろか、育った環境や経験にも大きな隔たりがある“恋をするはずがない/恋するわけにはいかない”男女が惹かれ合う大人のラブストーリー。

誰もが想像してしまう、いわゆる“ベタ”な方向へ進みながら、最後の最後で誰も予想しなかった展開へと舵を切る――だから本作は見逃せない。今回も視聴者の期待に対する“すかし方”が、実に巧妙だった。

  • (左から)寺西拓人、坂井真紀 (C)フジテレビ

    (左から)寺西拓人、坂井真紀 (C)フジテレビ

破滅へ向かう優子を救った、意外すぎる人物

第3話は、前回ラストでついに“タガ”が外れてしまった優子(坂井真紀)の暴走と、そのてん末を描いたエピソードであった。序盤から、不安定すぎる感情の揺れや澄晴(寺西拓人)への執着、そして葵(内田有紀)と澄晴の関係を少しずつ知っていく過程が積み重ねられ、そこで迎えたラスト。再び澄晴に騙され、“300万円”の絵を買ってしまうという破滅までのグラデーションが、じわじわと、そして恐ろしく描かれていった。

ここまでは、ある意味で視聴者にとって分かりやすい王道展開だっただろう。

優子はいずれ葵と澄晴の関係を知り、その過程でさらに暴走する。一度は後悔したはずなのに、騙されていると気付きながら(いや、本当は気付いていないのかもしれない)それでも認めようとはしない。そんな混沌とした感情の果てに、破滅へ向かっていく――。

澄晴が仕掛けた罠とはいえ、優子の転落は自業自得である。最終的にさらに高額な契約を結ばされてしまう姿は、想像どおりの“ベタ”であり、罠へとはまっていく様子を見ながら、思わず快感すら覚えてしまった。

しかし、最後は鮮やかに期待を裏切った。優子の暴走を止めたのは、他でもない、彼女を騙そうとしていた澄晴自身だったのだ。

あの展開は驚きだった。もうここまで来たら痛い目に遭った方がいい…とすら思ったあの場面で、澄晴は契約書を破り捨てる。視聴者が見ていた“ベタ”な一本道を、自ら断ち切ってしまったのである。

そしてそこから、私たちが思い描いていた物語は、大きく軌道を外れていく。

もしあの場面で優子が本当に300万円を失っていれば、葵と澄晴の関係が深まった時、借金とともに憎悪はさらに募っていっただろう。そんな展開は十分に想像できた。

しかし、その線は消えた。

優子を救ったのは、紛れもなく澄晴であり、そのきっかけとなったのは葵の存在だった。

今後、優子がその真実を知った時、借金以上に深い憎しみが葵へ向かう可能性すらあるのではないか。想定どおりと思わせておきながら、最後の最後で進むべき道を変えてしまう。そして、その先に待つ恐怖は、当初想像していたものよりもさらに深い。本作のエンターテインメント性は、まさにそこにあった。

  • (左から)寺西拓人、内田有紀 (C)フジテレビ

    (左から)寺西拓人、内田有紀 (C)フジテレビ

好きなのに嫌いになりたい…澄晴を象徴する感情の混沌

大きくうねる物語とは対照的に、今回最も印象的だったのは澄晴という人物の描き方だ。第1話から感じていた彼の「優しさ」と「怪しさ」。その表裏一体の矛盾が、今回はより鮮明になった。

澄晴は絵が好きでありながら、ロマンス詐欺まがいの手口で高額な絵を売りつけている。私はこれまで、それを単なる設定上のギミックだと思っていた。しかし、好きなはずの絵を詐欺の道具として使う理由は、「自分が絵を嫌いになるため」だった。この一言が深く刺さった。

優しさと怪しさ。好きなのに嫌いになりたい。その矛盾は、葵に惹かれながらも距離を置こうとする彼自身の感情とも重なっている。その混沌こそが、澄晴という人物を象徴していたのである。

さらに、自分を慕う女性を無下にし、詐欺まがいの行為に手を染めながらも、澄晴にはどうしても純粋さを感じてしまう。その理由も、毒親である父を見捨てられないという事実によって、ようやく一本につながった。父を傷つけてしまった「父のようにはなりたくない」という一言。その後悔が、父の苦しみまで背負い込み、本来なら支払う義理のない示談金まで工面する行動へとつながっていた。

それはあまりにも単純で、不器用な理由だ。けれどだからこそ澄晴からは純粋さを感じ取っていたのだ。そして、それこそが視聴者までも惑わせる理由なのだったのだ。

ラストも秀逸だった。ラブストーリーにおいて、「最悪の出会い」が「運命の恋」へ変わるためには、決定的な瞬間が必要になる。それが、葵が絶望の中で救われたあの絵を描いたのが、実は澄晴だったという事実である。

この展開だけを見れば、まさしく王道であり、“ベタ”だ。しかし、ここまで徹底して視聴者の予想を裏切り続けてきた本作である。この“運命”すら、そのまま運命では終わらせないのではないか。そう期待せずにはいられない。

最後にもう一つ気になるのは、序盤で優子が澄晴の免許証を隠し撮りしていたことだ。あの描写が、この先どんな恐ろしい展開へつながっていくのか…。考えるだけで恐ろしく、そして楽しみだ。

  • (C)フジテレビ