夏ドラマが次々にスタートする中、6日開始の『夫を殺したはずなのに』(テレビ東京系)の強烈なタイトルが普通に受け入れられていることに気付かされた。

これは近年、テレ東が『夫よ、死んでくれないか』『夫の家庭を壊すまで』『夫を社会的に抹殺する5つの方法』『私の死体を探してください。』などの夫婦をめぐる過激なドラマを続けてきたことの証だろう。

ただ、夫婦をめぐる過激な物語、さらに言えば「夫を殺す」ありきの物語がちょうど10年前に放送されていた。その作品は『ナオミとカナコ』(フジテレビ系、FODで配信中)。テレ東のドラマはすべて深夜帯だが、当作はプライムタイムであり、いかに攻めた作品だったかがわかるだろう。

あらためてどんな魅力のある作品だったのか。ドラマ解説者・木村隆志が掘り下げていく。

  • 『ナオミとカナコ』(C)奥田英朗・幻冬舎/フジテレビ

    『ナオミとカナコ』(C)奥田英朗・幻冬舎/フジテレビ

ぶっ飛んだサブタイトルに驚き

奥田英朗の同名小説を実写ドラマ化した作品のためタイトルはそのままだが、各話のサブタイトルはぶっ飛んでいた。

第1話「いっそ二人で殺そうか、あんたの旦那…女達の完全犯罪が始動」
第2話「わたし、見つけたよ。あんたの旦那を殺しても捕まらない方法…」
第3話「これって運命だね…今動き出す完全犯罪」
第4話「私たち今日から親友で共犯者…」
第5話「夫殺したこと驚くほど後悔してない」
第6話「お義姉さん、何かに気づいてる」
第7話「どうして警察が…だまされた女」
第8話「私がバカだった…あなたとの共犯関係はもう終わりよ」
第9話「あなたが死ねば、都合がいいの」
最終話「後悔してない!!絶対逃げ切るよ」

第1話もいきなりシリアスなシーンからスタート。大学時代からの親友同士である小田直美(広末涼子)と服部加奈子(内田有紀)が「本当に後悔しない?」「これでいいの。これしかない」「これからも私たちは親友だよね」「……そして共犯者」という言葉を交わし、加奈子の夫・達郎(佐藤隆太)の首に縄をかけたシーンからはじまった。

しかし、当作は単に過激なドラマではなく、むしろフジ伝統のドラマ枠『木曜劇場』らしい人間心理を丁寧に描く作品だった。

なぜ加奈子は達郎のDVに悩まされながら離婚しなかったのか。なぜ直美は結婚せず独身を貫いているのか。なぜ直美は共犯者になることを承知で完全犯罪計画を提案したのか。なぜ加奈子はそれを拒否しながらもけっきょく受け入れて犯行に及んだのか。

それらを描いたことで、苦しめられ、追い詰められながらも、勇気を振り絞って立ち上がり、人生を取り戻そうとする2人の姿に、犯罪者でありながらも共感・応援の声があがっていた。

現在は「女性が男性を蹴落としてたくましく生きる」「妻が夫に復讐を遂げる」などの物語が多くを占めているが、当時はまだそうではなかった。女性視聴者が生きづらさを感じながらも、それをドラマで解消できる機会が少なかったことが、支持を集めた理由の1つだろう。

さらに、なぜ達郎の姉・陽子(吉田羊)は2人を疑い、真相解明に執念を燃やしたのか。なぜ中国人の女性社長・李朱美(高畑淳子)は直美と加奈子に協力したのか。これらの周辺人物も含め、犯罪の前と後の心理描写を丁寧に描いたことが「名作」と言われる理由となっていた。