マリオット・インターナショナルは7月7日、アジア太平洋地域(中国圏を除く)におけるZ世代のラグジュアリー・トラベルに関する志向を明らかにするレポート「Beyond the Gen Z Myth and the State of Luxury Travel in APEC」を発表した。調査は2026年4月24日~5月19日、オーストラリア、インド、インドネシア、日本、シンガポール、韓国、タイ、ベトナムの富裕層旅行者2,800名(うち18~29歳のZ世代1,200名を含む)を対象に行われた。
「フォロワー」としての参加から主体的な「クリエイター」へ
今のZ世代富裕層旅行者は、用意されたプランへ受動的に参加するのではなく、旅を主体的に作り上げていく「クリエイター」。半数以上が旅行費用を自己負担し、半数が旅行の計画から手配までを自ら行っている。旅行の同伴者としては「家族」(51%)が最も好まれる一方で、少人数グループでの旅行は前年に比べて17%増加しており、より親密で、旅行者同士が体験を共有できるスタイルへのシフトが伺える。
またすべての旅への高い期待感も存在する。旅行先を選ぶ際、87%が「異文化への没入や地域コミュニティとの交流」を重視し、さらに「食の発見」(86%)、「自然との触れ合い」(86%)、「ウェルネス」(85%)が決断を左右する重要な要素となる。
同時に、Z世代はシームレスで快適なラグジュアリー体験を求めている。時間のロスやコミュニケーション不足は彼らにとって大きな不満の要素であり、ストレスを感じさせない、スマートでシームレスなサービスへの需要が高まっている。また旅行を計画する際のテクノロジーの重要性も増しており、旅行者の23%がすでにAIツールを活用して情報収集や計画作りを行っている。
ラグジュアリー・トラベルに関するZ世代の4つの志向
本レポートでは、ラグジュアリーの定義が大きく異なるZ世代の4つのペルソナを特定している。
本物志向の「伝統愛好家」(34%)
このグループにとってのラグジュアリーは、「評判」、「サービス」、「職人技」といったホスピタリティの本質に根ざしている。象徴的なホテル、卓越したサービス、ロイヤルティプログラムによる優遇、高評価のダイニングエクスペリエンス、綿密に計画された旅程を好む。この分類の旅行者では、79%が常にラグジュアリーホテルを利用し、91%が宿泊先を選ぶ際に「ブランドの評判が予約に影響する」と回答。85%が会員特典やリワードにモチベーションを感じており、ロイヤルティが重要な要素となっている。また、66%が旅行の1〜2ヶ月前には予約を完了する計画的なグループであり、正確さや信頼性、質の高さを重んじる傾向がある。
心身を整える「ウェルネス投資家」(30%)
このグループにとって旅行は、将来の健康やウェルビーイングへの投資。心身の最適化とバランスを求め、ほぼ全員(97%)が滞在中にウェルネス施設を利用すると回答した。95%がホテル内のヘルスケア専門家へのアクセスを重視し、旅行先を選ぶ際には自然に近い環境であることも重要な要素としている。さらに半数以上(57%)がウェルネス・トリートメントへの出費を惜しまず、これは他の同年代旅行者の平均(20%)を大きく上回る。この結果は、ラグジュアリー・トラベルが予防医学や心身の回復などウェルビーイングに重点を置く方向へとシフトしていることを示している。
喧騒を離れる「静寂の探求者」(20%)
オンラインで常につながっている時代においてこのグループは、「常につながっていること」よりも「デジタルから離れること」を選ぶ。ラグジュアリーを、「デジタルから距離を置き、日常を離れて静寂を取り戻すこと」と再定義している。このグループの全回答者(100%)が旅行中にテクノロジーの利用を制限しており、他の同年代旅行者の63%を大きく上回った。また、85%が秘境や穴場を探し、90%がプライベート・ダイニングの体験を重視している。ブティックホテルや人里離れた隠れ家のような宿泊施設を好み、「目立つこと」ではなく「日常から離れる自由」に価値を見出している。
ルーツを辿る「文化の回帰者」(16%)
このグループにとってのラグジュアリー・トラベルは、自らのアイデンティティやルーツを辿り、大切な人とのつながりを深めるための体験。回答者の全員が家族旅行の計画で中心的な役割を担い、65%が旅行費用に関する決定権を持っている。また半数が「家族のルーツに関連する旅行先」を「非常に重要」と回答しており、他の同年代旅行者の33%を上回っている。さらに、88%が現地の文化を深く体験できる没入型の体験を求めている。彼らの旅の原動力は、SNS等での社会的評価ではなく、文化的な発見や個人的な成長、世代間の絆を深めることにある。
ラグジュアリー・トラベル市場の新たな潮流
本レポートは、Z世代にとどまらず、アジア太平洋地域全体におけるラグジュアリー・トラベルの新たな潮流も示している。プレミアムな旅行体験への意欲が高まる中、富裕層旅行者はより厳選した旅行スタイルへと移行しており、旅行回数を減らす一方で滞在期間を延ばす傾向にある。海外旅行の平均日数は7泊から9泊へと伸びることが予想され、旅行の価値基準が「頻度」から「体験の深さ」へと変化している。旅行者が時間と資金を1つの旅に集中させるにつれ、パーソナライゼーション、シームレスなサービス、心に残る体験への期待はかつてないほど高まっている。
ラグジュアリー・トラベルが新たな時代へ移る中、本レポートは、ラグジュアリーの価値が単一の理想によって定義される時代は終わり、多様な価値観の広がりによって定義されるようになりつつあるといった業界の根本的な変化を浮き彫りにした。旅における異文化への没入、ウェルビーイング、静けさの追求、アイデンティティの探求など、Z世代はラグジュアリーをより多面的で、目的意識に根ざしたものへと変容させている。
