第85期A級順位戦(主催:毎日新聞社・朝日新聞社)は2回戦がスタート。7月10日(金)には伊藤匠二冠―永瀬拓矢九段の一戦が東京・将棋会館で行われました。対局の結果、相掛かり持久戦のねじり合いから抜け出した永瀬九段が138手で勝利。終盤の競り合いを制して開幕2連勝としています。

1か月ぶりの対戦

ひと月前の対局(竜王戦1組決勝)では角換わり右玉で熱戦を繰り広げた両者。順位戦での初手合いとなったこの日は相掛かりへと舞台を移します。4筋の歩を突いて持久戦を目指したのが先手・伊藤二冠の趣向で盤上は早い段階から前例のない展開へ。対する後手の永瀬九段は積極的な角交換で局面を打開、玉頭への合わせの歩で中央の勢力奪回を目指します。

本格的な戦いが始まったのは夕食休憩後のこと。21時を過ぎたころ、伊藤二冠が先に分岐点を迎えます。3筋への桂頭攻めに手段を求めたのは自然な攻め方ですが、局後の検討ではより積極的な桂跳ねが優ったとの結論に。とはいえ形勢は互角で、実戦は手番を得た永瀬九段が歩の手筋を駆使して反撃開始。攻め合いの様相のまま双方一分将棋へと突入します。

二度目の分岐が勝敗分ける

どちらの玉にも王手がかかり始めて徐々にクライマックスへ。受けていてもキリがないと見た伊藤二冠は最後の攻めに乗り出しますが、ここでの二択が勝敗を分けました。角の王手(本譜)でも銀の王手でも永瀬玉に詰めろがかかるのは同じですが、後手に渡す駒の違いによってその後の王手ラッシュの厳しさに微妙な違いが出てくるのが終盤のトリックです。

伊藤二冠の攻めが一段落したところで永瀬九段が最後の反撃へ。駒台に乗った飛角角の3枚が即詰みに大いに力を発揮しました。終局時刻は0時39分、最後は伊藤二冠が自玉の詰みを認めて投了。一局を振り返ると伊藤二冠としては最後の指運に泣いた格好で、一方の永瀬九段も快勝に見える評価値推移とは裏腹に終始難解だったという感想を残しています。

勝った永瀬九段は2勝0敗、敗れた伊藤二冠は0勝2敗となっています。

水留啓(将棋情報局)

  • 両者の直接対決は本局が10局目で、この日の結果を受け永瀬九段の4勝6敗となっている(写真は第84期A級順位戦最終局のもの。撮影:日本将棋連盟)

    両者の直接対決は本局が10局目で、この日の結果を受け永瀬九段の4勝6敗となっている(写真は第84期A級順位戦最終局のもの。撮影:日本将棋連盟)