「猟師たちは、いつでも撃ちたいわけでなく、さまざまな葛藤を抱えながら猟銃に弾を込めている姿を見ました」――第35回FNSドキュメンタリー大賞ノミネート作品『命追う者たち~クマ撃ちの老猟師~』(福井テレビ制作)が、フジテレビで4日(26:30~ ※関東ローカル)に放送される。
クマ出没増加の裏で、猟師たちは何を思うのか
全国的にクマの出没が過去最多を記録し、人身被害も相次いでいる。福井県内でも昨年、クマが市街地に出没し、緊急銃猟が3回実施された。
里に出没したクマを猟友会が駆除する――日々のニュースで伝えられるのは、駆除された頭数や発砲数、けがの有無が中心だ。しかし、現場で銃を構える猟師たちの思いが語られることは少ない。
同作では、長らく山で命と向き合ってきた老猟師たちに密着。クマの出没増加を猟師たちはどう見ているのか。銃弾に込められた矛盾や葛藤、そして信念を追いながら、ニュース報道のあり方を見つめる。
発砲数だけでは計れない現場の緊迫感
福井県内でクマの出没が最も多い勝山市では昨年、市街地にクマが出没し、緊急銃猟が3回行われた。最初に実施されたのは、白昼のこども園。親子のクマ2頭が出没し、地元猟友会のメンバーが合計12発の弾を撃って駆除した。
その際、使用した弾数が多すぎるのではないかと、猟師を非難する声もあった。番組では、緊急銃猟で指揮をとった猟師・上弥吉さん(76)を訪ね、当時の状況を取材。単なる発砲数だけでは計れない、現場の緊迫感と強い覚悟に迫っていく。
一方、坂井市丸岡町竹田地区には、名人と呼ばれる猟師・竹内作左エ門さん(78)がいる。竹田地区では、地区を取り囲むように箱罠を設置しているが、エサとなる米ぬかを使うと、クマもやってくるという。本来、野生動物を近づけないための箱罠が、クマを引き寄せる要因になっているのではないか。竹内さんは、そんな葛藤を抱えながら作業を続けている。
半年間の密着でも、クマには遭遇せず
急増するクマの人身被害に対応するため、国は2年前、クマを保護の対象から管理へと方針転換し、捕獲強化に乗り出した。さらに昨年、緊急銃猟制度が整備され、猟友会の出動回数も増加。猟師の負担は増すばかりだ。
番組では、昨年11月から今年3月にかけての狩猟期間中、2人のベテラン猟師に同行し、猟の日常にカメラを向けた。しかし、半年間におよぶ取材の中で、猟師に同行して山に入っても、クマに遭遇することはなかった。
日々のニュースでは、駆除された頭数や発砲数、けがの程度が伝えられる。その一方で、猟師がどんな思いで駆除しているのかは、なかなか伝えられていない。番組は、猟師が弾に込める矛盾と秘められた覚悟を通して、命を追う人々の現実に迫る。
ディレクター「老猟師の背中に甘えてばかりはいられません」
福井テレビ報道部の山田千代ディレクターは「山歩きが趣味という理由で取材に抜てきされ、初冬から初夏にかけてクマ撃ちの猟師に密着することになりました」と振り返る。
しかし、実際に入った猟師の世界は、普段歩く登山道とは別世界だったという。「猟師が通るのは、藪や獣道で、人が通る道とは縁遠い道でした。しかも、どこに罠が仕込まれているかもわからない獣道。厳しい猟師の世界を肌で感じながらの取材となりました」と明かす。
11月から3月の狩猟期間に加え、春のクマ猟にも同行したが、半年間の取材でクマに出会うことはかなわなかった。それでも山田氏は、「猟師にとっては山の恵みとなるクマも、里に下りれば脅威となります」と語る。
そして、「里に出没したクマを当たり前のように猟友会の猟師が駆除しているように感じていましたが、猟師たちは、いつでも撃ちたいわけでなく、さまざまな葛藤を抱えながら猟銃に弾を込めている姿を見ました」とコメント。「猟友会に所属する猟師が減る中、私たちは老猟師の背中に甘えてばかりはいられません」と訴えている。


