第85期順位戦B級1組(主催:朝日新聞社・毎日新聞社)は、1回戦全6局中5局の一斉対局が東西の将棋会館で行われました。このうち関西将棋会館で行われた渡辺明九段―稲葉陽八段の一戦は101手で渡辺九段が勝利。快勝といえる内容で待望の復帰後初勝利を挙げ、A級昇級に向け好スタートを切りました。
ファン注目の開幕戦
5月末に行われた復帰戦では惜しくも敗れた渡辺九段、この日も椅子を使わない正座対局で、自身初となる新関西将棋会館での対局に臨みます。渡辺九段の先手番で始まった本局は両者の息が合って矢倉対雁木へと進展。雁木に組んだ後手の稲葉八段としては6筋に取った位が主張で、持久戦に持ち込めば先手の矢倉の進展性のなさをとがめることができます。
ジリジリとした間合いの計り合いが続きます。長い駒組みのすえ右玉に構えたのは力戦派の稲葉八段らしい組み替えでしたが、ここは渡辺九段の鋭い攻めが一枚上を行きました。4筋の歩を突っかけてから飛車先の歩交換に出たのがプロ好みの細かい利かしで、金銀が分裂した後手陣はまとめるのが大変と見ています。対照的に先手陣はコンパクトな堅陣が光ります。
大きな大きな第一歩
素直に応じてはジリ貧と見た稲葉八段は端攻めを起点に綾を求めますが、渡辺九段の指し手は最後まで正確でした。敵玉そば、香の利きに銀を打って角にヒモを付けたのが気づきづらい決め手で、筋悪ながら愚直に飛車を奪う筋を見せれば薄い後手玉はひとたまりもありません。結局この飛車を奪う筋が決め手となって形勢の針は一気に先手側に振れました。
終局時刻は21時31分、最後は自玉の受けなしを認めた稲葉八段が投了。形作りも許さない痛快な攻めで押し切った渡辺九段は復帰2戦目にして待望の初白星となりました。局後SNSを更新した渡辺九段は「1つ勝っただけですが、前に進めたのは良かったです」とファン・関係者への感謝の気持ちをつづり、これにファンも惜しみない声援を送りました。
水留啓(将棋情報局)
